世界で勝てる「強くて善い日本企業」へ。データとAIを武器に挑むブレインパッド【東京都港区】

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2004年に創業し、データ分析を起点に企業の事業変革を支援してきた株式会社ブレインパッド。データ活用のパイオニアとしての地位を築き、現在、企業のデータ分析だけでなくAIアルゴリズムの開発やAIアプリケーションの導入、データ活用を根付かせる組織づくりまで事業領域を広げています。

代表取締役社長 CEOを務める関口朋宏(せきぐち・ともひろ)さんの根底にあるのは、「日本を強くしたい」という思いです。コンサルタントとして日本企業の経営課題に向き合うなか、海外の成功事例を日本企業に導入するだけでは、世界のトップにはなれないという違和感を抱き、自ら日本企業の中に入り、事業をつくる側へ転じます。

データとAIを手段として、日本企業が自ら考え、世界で戦える力をどう取り戻すのか。関口さんは、その問いに向き合い続けています。 

「日本企業を強くしたい」原点は幼少期の海外経験

ブレインパッドは2004年、データが企業経営に大きな価値をもたらすと見据えて創業しました。企業がもつ販売データや顧客情報、センサー、位置情報、画像、音声などのデータを分析し、事業やサービスの改善につなげることを強みとしてきました。

現在は、データ分析に加えて、AIアルゴリズムの開発やAIアプリケーションの導入、データを活用できる人材の育成、企業自身がデータを使いこなすための内製化支援まで手掛けています。単にデータを分析したり、AIのシステムを導入したりするのではなく、データを起点に企業の意思決定や事業そのものを変えていくことが、同社の事業の核です。

「僕らがこだわっているのは、データを使って何かを『良くする』 ことです。データを分析すること自体が目的ではなくて、分析したものを使って、お客さまの事業やサービスを良くしていく。そこまでやって初めて、僕らがやっていることに意味があると思っています」

関口さんが、こうした事業を通して実現したいことの根底には、「日本企業を強くしたい」という思いがあります。

その原点は幼少期にあります。父親の仕事の関係で約3年間マレーシアに暮らし、現地で日本企業が高く評価されている姿を目にしました。

「子どもながらに、日本企業ってすごいなと思っていました。すごくリスペクトされていたし、誇らしかったんですよね」

海外から日本を見ることで芽生えたその思いは、やがて関口さん自身の仕事の選び方にもつながっていきました。

「日本企業を強くしたい」真似だけではなれないゴールドメダリストへ

前職ではコンサルタントとして約16年間、日本企業の経営課題に向き合っていました。日本企業を強くしたいという思いをもちながら仕事を続ける一方で、次第に海外企業の成功事例を日本企業へ導入するという支援のあり方に違和感を覚えるようになります。

海外企業の成功事例を日本企業に持ち込み、同じ方法を取り入れてもらう。グローバルなコンサルティング会社では一般的な方法の一つです。

「でも、日本企業の事例が一個もないんですよ。それが自分の中では嫌だったんです」

関口さんは、その状態をオリンピックに例えます。

「それをやって日本企業が良くなったとしても、シルバーコレクターやブロンズコレクターにはなれても、ゴールドメダリストにはなれない。ゴールドメダリストは、自分たちで考えて、たくさん失敗して、産みの苦しみを経験して、そこに至っている。誰かの真似をしているだけでは、たどり着けないと思ったんです」

外から正解を教えるのではなく、自分自身が日本企業の中に入り、失敗しながら事業をつくる側に回らなければならない。

そんなときに出合ったのがブレインパッドでした。創業者の高橋隆史さんと初めて話した際には、「このままの日本ではまずい」という話で約2時間盛り上がったといいます。

データやAIという技術だけではなく、「日本を良くしたい」という会社の根底にある思いに共感し、2017年に入社しました。

当時、社員は約180人、売上高は約30数億円でした。関口さんは早期に100億円規模へ成長させることを目指し、大企業との資本業務提携やジョイントベンチャーなど、それまで取り組んでいなかった手法にも挑戦しました。2023年には創業者から経営を引き継ぎ、現在は代表取締役社長 CEOとして経営を担っています。

データで正解を知り、あえて「ずらす」

関口さんが考えるデータ活用の特徴は、正解を導き出すことだけにとどまりません。生成AIの登場によって、今では誰もが短時間で「80点くらいの答え」にたどり着けるようになりました。だからこそ重要なのは、その答えを知ったうえで、どこを変えるかだといいます。

「企業って競争という側面が大きい。生き残っていくためには、人と違うことをやるか、人より早くやるかしかない。自分たちが向き合っている問いに対する、『一番正しくて、つまらない答え』が分かっていることが大事なんです」

データによって最も合理的な答えを知る。そのうえで、あえてそこから「ずらす」。

「正解が分かっていれば、そこからずらして違う価値を出したり、新しい果実を得たりする可能性が出てくる。この『ずらす』ことが、実は企業戦略であり、企業経営だと思っています」

反対に、正解を知らなければ、自分たちの判断がどれだけ常識から離れているのかも分かりません。データがあれば、「ここはあえて外す」「ここは正解通りにいく」という判断ができます。

関口さんは「データ活用が進むと、リスクを取れるようになる」と話します。成長するためには、どこかでリスクを取らなければなりません。データは失敗を避けるためだけではなく、企業が自信をもって挑戦するための材料でもあるのです。

「誰もやらないなら僕らがやる」強くて善い会社へ

関口さんが経営において大切にしているのが、「強くて善い会社」をつくることです。この考えの根底には、創業者から受け継いだベンチャースピリットがあります。

「スタートアップって、小さい会社とか若い会社とかではなくて、世の中を変えるために必要な存在だと思っています」

自分たちなりに「こんな未来がいい」と描き、その未来を実現するために、まだ誰もやっていないことへ挑戦すること。

「誰もやらないなら僕らがやる。それはすごく大事なマインドセットだと思っています」

そのあり方を表した言葉が「強くて善い」。

「強い会社というのは、ちゃんと稼げる会社だと思っています。企業である以上、経済を回す役割がある。だから、儲(もう)からなきゃダメなんです」

一方の「善い」は、世の中のためになることです。良いことだけをして競争に負けてしまっては続きません。しかし、稼げても社会にとって価値のない会社にはなりたくない。強さと善さを両立することを目指しています。

その考えが表れているのが、顧客企業の「内製化」支援です。

企業自身がデータを使えるようになれば、外部の専門家への依頼が減り、ブレインパッドの仕事が少なくなる可能性もあります。周囲からも、「お客さまが強くなったら、ブレインパッドの仕事がなくなるのではないか」と心配されたといいます。

それでも関口さんは、顧客企業自身が強くなるほうを選びました。

顧客が自分たちでデータを使えるようになり、そのうえで新しい課題が生まれたとき、再びブレインパッドが必要とされればいい。自社の仕事を囲い込むのではなく、顧客そのものを強くする。それも「強くて善い会社」の姿です。

IT企業を飛び出し、日本の産業そのものを強くする

関口さんが目指しているのは、IT企業という枠を超えることです。

「IT業界を飛び出したい」

これまでIT企業は、顧客から依頼を受け、サービスやシステムを提供して対価を得てきました。しかし、この方法だけでは、地方や中小企業に同じ価値を届けることは難しいと関口さんは考えています。

「日本全体で考えたら、地方の会社や中小企業を放っておいてGDPは上がらない。だったら、『支援するのでお金をください』じゃないビジネスモデルを考えたほうがいい」

その一つが企業への資本参加です。外部から支援するのではなく、ブレインパッド自身が企業の中に入り、データやAIを使って事業価値を高める。

「もしかしたらスーパーマーケットを運営しているかもしれないし、ホテルかもしれない。農業をやっているかもしれない。何だか分からないですよね」

その挑戦を加速させるため、ブレインパッドは富士通グループへの参画も決断しました。世界のAI開発は巨額の投資を背景に急速に進んでおり、自社だけでは置いていかれるリスクがあると判断したためです。

関口さんは富士通との関係を、「大きなロケットの上に乗っかって、ドンと飛ぶ」と表現します。

「データサイエンスもAIも、究極は手段であり、道具だと思っています」

守るべきなのはIT企業という形ではなく、日本企業を強くするという目的です。そのために、ブレインパッド自身も形を変えながら挑戦を続けています。

ブレインパッドは創業から21期連続増収を続けています。関口さんは、創業時に「データ」という領域に賭けた先見性が大きかったと捉えています。データ活用が広がり、AIが急速に進化する現在は、次の未来を再び見極める局面に入っています。

関口さんが率いるブレインパッドは、データとAIを手段として、次の「勝ち方」そのものを探しています。

もっとも印象に残った言葉

「それをやって日本企業が良くなったとしても、シルバーコレクターやブロンズコレクターにはなれても、ゴールドメダリストにはなれない。ゴールドメダリストは、自分たちで考えて、たくさん失敗して、産みの苦しみを経験して、そこに至っている。誰かの真似をしているだけでは、たどり着けないと思ったんです」

聞き手:丸山夏名美 書き手:田口有香

写真はすべて執筆者が撮影

企業情報

会社名:株式会社ブレインパッド

取材対象者:代表取締役社長 CEO 関口 朋宏さん

設立年月:2004年3月

企業理念:データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる

事業内容:データ活用を通じて企業の経営改善を支援するプロフェッショナルサービス、プロダクトサービス

所在地: 東京都港区六本木三丁目1番1号 六本木ティーキューブ

URL:
https://www.brainpad.co.jp/

情報提供元:ローカリティ!

田口有香
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