なぜ自動車ディーラーは減っている?販売店再編の裏側にある企業戦略

新車販売が戻ってもディーラーは減っている

街道沿いにショールームを構え、新車を並べて来店客を待つ。長く続いてきた自動車販売店の姿が変わり始めています。2025年の国内新車販売台数は456万5,777台で、前年比3.3%増と2年ぶりに前年を上回りました。ただし、増加の一因には前年の認証不正問題による出荷停止からの反動があり、市場が本格的な拡大局面に入ったと見るのは早そうです。実際、国内新車市場は6年連続で500万台を下回っています。

一方、販売店は減少が続いています。日本ソフト販売の店舗データでは、2026年4月時点でトヨタは4,714店、日産は2,306店、ホンダは2,297店。2021年と比べると、日産は154店、マツダは120店、ホンダは78店減りました。2025年4月からの1年間だけでも、主要15チェーンのうち10チェーンで店舗数が減少しています。
ただし、すべてのメーカーが同じ事情で店を減らしているわけではありません。販売不振への対応、店舗の統合、地域ごとの需要変化などが重なった結果です。「クルマが売れなくなったから店を閉じている」と捉えるだけでは、現在の再編を十分に説明できません。

 

「多くの店で売る」ことが強みとは限らなくなった

これまでの自動車販売では、地域に店舗を置き、営業担当者が顧客を抱える仕組みが大きな力を持っていました。しかし、商品情報や価格、口コミをインターネットで確認してから販売店を訪れることが当たり前になり、店舗だけが情報提供の入口ではなくなっています。メーカー側から見れば、商圏が重なる店舗をすべて維持するより、拠点を集約して設備や人材を厚くしたほうが効率を高めやすい地域もあります。ここで起きているのは、単純な「店舗削減」というより、販売機能をどこに置くかという見直しと考えたほうが実態に近いでしょう。

トヨタの販売改革は、その変化を知る手がかりになります。同社は従来、トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店などで扱う車種を分けていましたが、2020年5月から全販売店で全車種を扱える体制へ移行しました。
トヨタは改革を発表した段階で、国内約6,000店舗を活用しながら、全国一律ではなく地域ごとに最適なネットワークを構築する方針を示しています。これは「店舗数を増やせば販売機会も増える」という発想から、地域需要に合わせて販売網の役割を組み替える発想への転換ともいえます。現在の4,714店という店舗データと単純比較はできないものの、販売網の考え方そのものが変わってきたことは確かです。

 

整備士不足で「店はあるが人がいない」問題も

販売店の再編を後押ししているのは、新車販売だけではありません。購入後の点検や車検、修理を担う整備部門の人材不足も大きな課題です。国土交通省の資料では、自動車整備士の有資格者は約61万人いる一方、実際に整備士として働いている人は約28万人にとどまるとされています。
過去の調査でも自動車整備要員は約40万人で推移し、平均年齢は2003年度の39.7歳から2020年度には45.7歳まで上昇しました。資格者が存在していても、現場で働く人材を十分に確保できなければ、各店舗に整備機能を置き続けることは難しくなります。

しかも、整備に必要な技術は以前より高度になっています。衝突被害軽減ブレーキの新車搭載率は国土交通省資料で95.8%まで上昇しており、電動車や先進運転支援システムへの対応も欠かせません。従来の機械整備だけではなく、センサーや電子制御、診断機器を扱える人材と設備への投資が必要になります。
限られた整備士と高額な設備を小規模店へ分散させるより、一定規模の拠点に集める判断が出やすくなると考えられます。販売店の再編は家賃や人件費を削るためだけではなく、「限られた人材と設備をどこに配置するか」という問題でもあるわけです。

 

店を減らす戦略から「顧客との関係を残す戦略」へ

とはいえ、店舗を減らせば収益性が自動的に高まるわけではありません。自動車は購入して終わる商品ではなく、車検、点検、修理、タイヤ交換、保険、ローン、買い替え、下取りなど、その後も長く取引が続きます。2025年には新車販売の回復に伴って中古車の流通も増え、主要オートオークション4事業者の出品台数は前年比8.8%増の628万4,174台となりました。新車だけを見るのではなく、下取りされた車を中古車として販売し、その後の整備や次の買い替えにつなげるところまで含めて顧客との関係を考える必要があります。

この視点に立つと、ディーラー再編の評価軸も変わります。店舗数を何店減らしたかではなく、販売、整備、中古車、金融・保険といった機能をどの拠点へ配置し、顧客との接点を維持できるかが問われます。都市部なら商圏が重なる店舗を統合して大型拠点へ集約し、オンラインで商談の一部を補う方法が取りやすいでしょう。一方、地方では店舗を減らしすぎれば、点検や修理のために顧客が長距離を移動することになり、ブランド離れを招く可能性があります。全国一律に店舗を削るのではなく、地域によって販売と整備の配置を変える必要があるといえます。

自動車販売店の減少を「国内市場が縮んだから」の一言で片付けると、業界で起きている変化の半分しか見えません。市場の成熟に加え、整備士不足、車両技術の高度化、デジタル化、店舗設備への投資負担が重なり、従来型の販売網を維持する合理性が薄れている地域があります。その一方で、自動車は購入後のサービスが長く続くため、リアルな拠点をなくせばよいわけでもありません。
これからの企業戦略を読み解く際は、ディーラーが「何店舗あるか」だけでなく、「販売後も顧客とつながる機能をどこに残しているか」に目を向けると、自動車メーカー各社の違いがより見えやすくなるのではないでしょうか。

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