9月に転職市場が動き出すのはなぜ?下半期を前に人材が動き出す理由

夏季休暇が終わるころ、転職サイトを眺めたり、求人情報を調べたりする人が増えてきます。企業の採用活動も動き始めるため、9月は「転職シーズン」と呼ばれることがあります。ただし、9月に入った途端、あらゆる業界で求人が一斉に増えるわけではありません。夏季休暇をきっかけに仕事や将来について考え直す人が増える一方、企業では下半期の人員体制を固める時期を迎えます。この二つが重なることで、秋の転職市場が動き始めます。

dodaの転職求人倍率を見ると、2023年9月は2.39倍、2024年9月は2.86倍、2025年9月は2.43倍でした。2025年9月は求人数が前月比1.9%増え、転職希望者数も1.4%増加しています。求人だけが増えているのではなく、仕事を探す人も同じ時期に動いている点が9月の特徴です。毎年似た流れが生まれる背景には、日本の企業や働く人が持つ年間スケジュールが深く関わっています。

 

夏休みが終わると転職を考える人が増える

忙しく働いていると、今の仕事が自分に合っているのか、これからどんな働き方をしたいのかを落ち着いて考える機会はなかなかありません。ところが、お盆休みや夏季休暇で数日間仕事から離れると、自分の状況を見直す余裕が生まれます。久しぶりに会った友人から仕事の話を聞いたり、帰省して家族と将来について話したりすることもあるでしょう。普段とは違う時間を過ごすなかで、給与や仕事内容、働き方への不満を改めて意識する人も少なくないと思われます。

実際、2025年9月のdodaでは転職希望者数が8月から1.4%増え、前年同月比では15.7%増加しました。ここには年末までのスケジュールも関係しています。9月に応募を始めれば、10月から11月に面接を進め、内定後に退職交渉を行い、年末や翌年1月を区切りに新しい会社へ移る流れを組みやすくなります。冬の賞与を受け取ってから退職したい人にも都合のよい時期です。夏季休暇に芽生えた「転職しようかな」という気持ちが、9月に具体的な行動へ変わりやすいのは、こうした事情があるからでしょう。

 

企業も下半期を前に採用計画を見直す

9月に動くのは転職希望者だけではありません。企業にとっても、人員計画を見直しやすい時期です。4月から翌年3月までを年度としている企業では、9月で上半期が終わります。春にスタートした組織を半年ほど動かしてみると、想定以上に忙しくなった部署や、人手が足りない部門も見えてきます。退職による欠員が発生しているケースもあるでしょう。下半期の事業を進めるため、「どこに何人必要なのか」が具体的になる時期でもあります。

2025年9月のdodaでは、12業種のうち11業種で求人数が前月を上回り、11職種のうち10職種でも増加しました。事務・アシスタントは前月比3.8%増、化学・食品系の専門職は3.3%増となっています。2026年に入ってからも企業の採用需要は高く、dodaの転職求人倍率は4月2.38倍、5月2.44倍、6月2.55倍、7月2.71倍と上昇しました。7月にはIT・通信エンジニアが11.26倍、機械・電気エンジニアが6.40倍となっており、人材を確保したい企業と転職希望者の人数に大きな差がある職種もあります。秋採用を考える企業にとって、9月は人材獲得競争が始まる時期でもあるといえます。

 

9月だから求人が一気に増えるわけではない

「それなら9月は転職の絶好機なのでは」と思うかもしれません。しかし、雇用市場全体を見ると少し違った姿も見えてきます。厚生労働省によると、2025年9月の有効求人倍率は1.20倍で前月と同じ水準でした。新規求人倍率は2.14倍で前月から0.01ポイント低下し、新規求人は前年同月比3.2%減っています。9月だからといって、日本中の求人が急増しているわけではありません。

民間の転職サービスとハローワークでは、扱う求人や利用する人が異なります。業界による差も小さくありません。2025年9月の新規求人を見ると、教育・学習支援業は前年同月比1.1%増えた一方、卸売・小売業は7.4%減、情報通信業は6.8%減でした。そのため「9月は求人が増える月」と単純に覚えるより、中途採用では夏の終わりから年末に向けて企業と転職希望者が動きやすくなる、と捉えたほうが実態に近いでしょう。求人件数だけを見るのではなく、自分が希望する業界や職種がどう動いているかまで確認したいところです。

 

9月は年末へ向けて転職市場が動き始める時期

9月の特徴は、その月だけを見るより、その後の動きを追うとはっきりします。dodaの転職求人倍率は2025年9月の2.43倍から、10月2.50倍、11月2.70倍、12月2.96倍へ上昇しました。2023年も9月2.39倍、10月2.42倍、11月2.76倍と上がっています。9月に始まった採用や転職活動が、秋から年末にかけて続いていく流れが見えてきます。

企業側では、上半期に分かった人員不足を埋めながら、下半期や翌年度に必要な人材を探し始めます。一方の転職希望者は、夏季休暇中に考えたキャリアを現実の選択肢として検討し、年末や翌年1月の入社を視野に動き始めます。両者の予定がちょうど重なりやすいのが9月です。「秋だから転職が増える」という単純な話ではなく、夏季休暇、企業の半期、冬の賞与、年末退職といった年間の節目が重なった結果と見るほうが分かりやすいでしょう。転職を考えている人にとっては、周囲が動き始めてから焦るより、いつ入社したいのかを決めて逆算することが、自分に合った求人と出会う近道になりそうです。

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ビジネス・キャリア

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