迷ったら2択にするべき?選択肢の数だけでは決まらない理由とは

選択肢を減らすと、なぜ決めやすく感じるのか

「転職するか、今の会社に残るか」「買うか、買わないか」「挑戦するか、やめておくか」。迷いが長く続くと、人は複雑な問題を2択に置き換えたくなります。選択肢が少なければ比較する情報も減り、頭の中が整理されたように感じられるからでしょう。心理学では、選択肢が増えるほど反応に時間がかかりやすくなる傾向が知られています。ヒック・ハイマンの法則も、その関係を説明する考え方のひとつです。候補をある程度まで絞ることは、日常的な判断を速める方法として役立つと考えられます。

ただし、「2択にすれば迷いがなくなる」とまでは言い切れません。人が決められない理由は、候補が多いことだけでなく、自分が何を優先したいのか分かっていない場合にもあります。昼食を麺類かご飯ものかで決める程度なら、2択にする効果は大きいでしょう。ところが転職や住まい、結婚、お金の使い方など、複数の条件が絡む問題では事情が変わります。選択肢だけを減らしても、「どちらが自分に合うのか」を判断する基準が曖昧なら、2つになった後も迷いは残るでしょう。

 

選択肢が多いことより、判断基準がないことが迷いを生む

選択肢の多さが意思決定に影響する例として知られているのが、心理学者シーナ・アイエンガー氏らによるジャムの研究です。高級スーパーで24種類と6種類のジャムを提示したところ、24種類の売り場には多くの人が立ち寄った一方、購入した割合は6種類の条件のほうが高くなりました。品ぞろえが豊富であるほど興味を引きやすい反面、最終的にひとつを選ぶ段階では負担になる場合があるといえます。ただし、その後の研究を見ると、選択肢が多ければ必ず決められなくなるという単純な関係ではありません。

2015年に発表された選択過多に関するメタ分析では、99の観察結果、計7,202人分のデータが検討され、選択肢の複雑さや決定そのものの難しさ、本人の好みがどれほど明確かといった条件が影響するとされました。つまり、「10択だから迷う」「2択なら決められる」と数字だけで判断することは難しいでしょう。転職先が10社あっても、「年収」「勤務時間」「勤務地」「仕事内容」といった条件がはっきりしていれば、候補は自然に絞り込めます。反対にA社とB社だけになっても、何を優先したいのか決まっていなければ比較は終わりません。迷いを生み出しているものは、選択肢の数よりも、自分の中に判断の物差しがないことではないでしょうか。

 

2択思考の本当の罠は「別の道」を見えなくすること

2択思考には、複雑な問題を分かりやすく整理できる利点があります。とはいえ、あらゆる問題を「AかBか」に置き換えてしまうと、本来存在していた別の選択肢まで見えにくくなります。「会社を辞めるか、このまま我慢するか」と考え始めれば、部署を変えてもらう、働く時間を調整する、いったん休む、転職活動だけ始めるといった方法は意識から外れがちです。選択肢を減らせば判断そのものは単純になりますが、同時に考える範囲まで狭めてしまう可能性があるといえます。

そこには、「早く決めて迷っている状態から抜け出したい」という気持ちも関係していると思われます。どちらかを選べば問題が終わるように感じますが、答えが出ない原因が問いそのものにあれば、2つの候補を何度比較しても納得にはつながりにくいでしょう。「辞めるか残るか」ではなく、「今の働き方の何を変えたいのか」と考え直せば、部署異動や勤務時間の変更など、それまで見えていなかった選択肢が浮かぶこともあります。決断できないときほど、「本当にこの2つから選ぶ問題なのか」と問い直してみることで、別の道を見つけやすくなるのではないでしょうか。

 

決断を早めたいなら、選択肢より先に基準を決める

迷いを減らしたいときは、最初から2択にするより、いったん候補を広げてから、自分の条件に合わせて整理するほうが現実的です。旅行先なら「予算5万円以内」「移動は3時間まで」「温泉に入りたい」といった条件を決めれば、10カ所あった候補も自然に数カ所まで減っていきます。転職なら「収入」「働く時間」「仕事内容」「将来性」のうち、自分が何を譲れないのかを考えることで比較しやすくなるでしょう。この段階を踏んだ結果として2択になるのであれば、それは可能性を無理に削った2択とは意味が違います。

決断するときに考えたいのは、「何を得たいか」だけではありません。「何なら諦められるか」「何だけは避けたいか」まで言葉にすると、自分の基準がはっきりしてきます。すべての条件を満たす選択肢を探し続ければ、候補がいくつあっても決められないでしょう。反対に、譲れる条件と譲れない条件が分かれば、選択肢が多くても整理しやすくなります。2択思考そのものが悪いわけではなく、早い段階で可能性を2つに閉じ込めることに注意が必要です。候補を広げ、自分の基準を決め、その基準で候補を減らしていく。この順番なら、決断の速さと納得感の両方を得やすくなると考えられます。

カテゴリ
人間関係・人生相談

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