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株価下落局面こそ好機?生前贈与で考えたい資産承継のタイミング

株価が下がると生前贈与の評価額も変わる

株式市場が大きく下落すると、資産が減ったことばかりに目が向きがちです。しかし、保有している株を将来、子や孫へ引き継ぐ予定があるなら、別の見方もできます。生前贈与とは、生きている間に現金や株式、不動産などの財産を家族へ渡す方法です。相続とは違って贈与する時期を自分で選べるため、価格が日々変わる株式では、株価が低い時期に贈与することで評価額を抑えられる可能性があります。ただし、株価が下落しただけで贈与すれば有利になるわけではありません。市場全体の調整なのか、企業そのものの価値が落ちているのかを見分ける必要があります。

上場株式の贈与では、原則として贈与日の最終価格を使います。ただし、その価格が「贈与した月」「前月」「前々月」の各月の終値平均のうち最も低い価格を上回っている場合は、その低い価格で評価できます。 仮に1株1万円だった株を1,000株持っていれば1,000万円ですが、株価が30%下落して評価額が1株7,000円になれば700万円です。同じ1,000株でも評価額には300万円の差が生まれます。将来も保有したい株が市場全体の下落につられて安くなっている場面であれば、生前贈与を検討するタイミングになり得ると考えられます。

 

「30%下落」の中身を見なければ判断を誤る

ここで気をつけたいのが、株価下落にはさまざまな理由があることです。景気への不安や金融市場の混乱によって、多くの企業が一斉に売られている場合と、その会社の業績悪化や競争力低下によって株価が下がっている場合では意味が違います。前者なら市場環境が落ち着いた後に株価が回復する可能性もありますが、後者では下落が続くこともあるでしょう。500万円で評価された株を贈与しても、その後300万円まで値下がりすれば、低い評価額で資産を移したメリットは薄くなります。税金だけを見て決めるのではなく、「この株を10年後も持っていたいか」という視点が欠かせないといえます。

反対に、500万円で贈与した株が将来1,000万円まで上昇した場合、500万円分の値上がりを受贈者側で持つことになります。こうした点から、株価下落局面を狙う生前贈与は、底値を当てる投資とは少し性格が違います。家族で長く持つ予定の資産を、比較的評価額が低い時期に次世代へ移す考え方に近いでしょう。市場全体が20%、30%と大きく調整したからといって、自動的に「贈与のチャンス」と判断するのではなく、下落理由と企業の将来性をセットで確認することで、判断の精度は高まると思われます。

 

年110万円だけでは見えない生前贈与の選択肢

生前贈与でよく知られているのが、暦年課税の基礎控除110万円です。1年間に贈与された財産の合計額から110万円を差し引き、残った金額をもとに贈与税を計算します。この110万円は贈与する人ごとではなく、財産を受け取る人ごとに設定されています。 少額ずつ長期間にわたって資産を移す方法には向いていますが、数千万円規模の株式を持っている場合、110万円だけで承継しようとすると長い時間が必要です。そのため、年齢や保有資産額、家族構成まで含めて方法を考える必要があるでしょう。

相続時精算課税にも2024年から年間110万円の基礎控除が設けられています。基礎控除後の贈与額については累計2,500万円まで特別控除があり、それを超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。 一方で、この制度を選んだ贈与者については、その後も相続時精算課税が続くため、目先の税額だけで選ぶのは避けたいところです。株価が大きく下がったから制度を使うのではなく、今後どのくらいの財産を、何年かけて、誰へ渡すのかまで整理して判断するほうが現実的ではないでしょうか。

 

下落相場は「贈与する日」ではなく「考え始める日」

生前贈与では時間も大きな意味を持ちます。2024年1月以降の暦年課税による贈与については、相続財産へ加算する対象期間が段階的に延長されています。2026年12月31日までに相続が始まった場合は相続開始前3年間ですが、2031年1月1日以降に相続が発生した場合は原則7年間が対象になります。 そのため、「高齢になってからまとめて贈与を始めればよい」という方法では、期待した効果を得にくいケースもあると考えられます。

一方で、税負担を減らすために財産を渡しすぎるのも問題です。老後には医療費や介護費、住居費などが必要になる可能性があり、自分の生活資金まで贈与してしまえば本末転倒でしょう。生前贈与を考えやすいのは、生活資金とは別に余裕資産があり、家族が将来も保有したい株を持ち、相続まで一定の時間を確保できる場合です。株価下落は「今すぐ株を贈与する合図」ではありません。保有株がなぜ下がったのか、老後資金はいくら必要なのか、相続税まで含めてどの方法が合うのかを見直す機会として使う。それが、下落局面を生前贈与に生かす現実的なタイミング戦略といえるのではないでしょうか。

※本記事は一般的な税制度の解説を目的としたもので、個別の税務・投資判断を推奨するものではありません。実際の贈与では資産額や家族構成などによって扱いが変わるため、税理士などの専門家への確認が適切です。

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