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氷河期世代とZ世代、同じ「不安」でも違う処方箋とは

同じ「将来が不安」でも、その中身は同じではない

「このまま今の仕事を続けていて大丈夫だろうか」「将来の生活は成り立つのだろうか」。こうした不安は年齢を問わず広がっています。なかでも対照的なのが、現在40代から50代を中心とする就職氷河期世代と、10代後半から20代を中心とするZ世代です。どちらも仕事や収入の先行きを心配していますが、不安が生まれる理由まで同じではありません。氷河期世代は社会に出る入口で厳しい雇用環境に直面し、Z世代は働き方の選択肢が増える一方、変化の速い時代にキャリアを決めなければならない状況に置かれています。

世代だけで人を分けると、「氷河期世代は苦労している」「Z世代はすぐ仕事を辞める」といった単純な話になりがちです。当然ながら、同じ世代でも収入、学歴、家庭環境、住む地域によって状況は異なります。それでも世代を比較する意味があるのは、社会に出た時期の景気や雇用制度が、その後の働き方に少なからず影響するからでしょう。両者の違いを見る際には、性格や価値観ではなく、「どの時代に社会人生活を始めたか」「現在どれだけやり直す時間が残されているか」という視点が欠かせないと考えられます。

 

氷河期世代ではキャリアの問題が生活全体に広がりやすい

就職氷河期世代は、バブル崩壊後に企業の新卒採用が大きく絞られた時期に社会へ出ました。正社員になれず、契約社員やアルバイトなどから仕事を始めた人も少なくありません。問題は、最初の就職だけにとどまらない点です。20代で十分な研修や実務経験を積めなければ、30代で昇進や転職の選択肢が狭まり、その差が40代以降の収入や貯蓄にもつながる可能性があります。政府が2019年から就職氷河期世代への集中支援を始め、2025年以降も就労、処遇改善、社会参加、高齢期を見据えた支援を続けていることからも、短期間では解消しにくい問題だといえます。

40代後半から50代になると、キャリアの問題は老後の生活ともつながってきます。転職によって一時的に収入が下がれば、住宅費や教育費、親の介護、老後資金への影響も避けにくくなります。20代なら数年かけて別の仕事に挑戦する選択も取りやすい一方、中高年になるほど失敗した後に取り戻せる時間は短くなります。そのため氷河期世代への処方箋は、「新しいスキルを学べばよい」という話だけでは十分ではありません。現在の収入を守りながら学び直せる制度や、経験を評価して待遇につなげる仕組み、資産形成や社会保障まで含めた支援が必要になると思われます。

 

Z世代の不安はSNSやAIだけでは説明できない

一方、Z世代が社会に出る環境は氷河期世代とはかなり異なります。少子化や人手不足を背景に若い人材を求める企業は多く、転職や副業、フリーランスなど働き方も広がっています。一見すると恵まれた環境ですが、選択肢が多ければ迷いがなくなるわけではありません。SNSでは同年代の起業家、高収入の会社員、海外で働く人などが日常的に目に入り、自分の現在地と比較しやすくなりました。「もっと自分に合う仕事があるのではないか」「今の会社に残っていてよいのか」と考え続けることが、不安につながるケースもあるでしょう。

そこに生成AIの普及が重なりました。これまで人が担当してきた文章作成、資料作成、翻訳、プログラミングなどの一部をAIが担えるようになり、若い世代ほど「今から覚える仕事が将来も必要なのか」という疑問を持ちやすくなっています。Z世代に必要なのは、20代のうちに一生続ける仕事を決めることではないでしょう。短期間のプロジェクトや副業、社内異動などを通じて小さく試し、自分に合う方向へ修正していく方が現実的です。AIを避けるのではなく、AIを使いながら考える力、伝える力、判断する力を伸ばしていくことも、将来の選択肢を広げる方法と考えられます。

 

世代よりも「失敗を吸収できる余力」が分かれ目になる

氷河期世代とZ世代の違いを考えるとき、注目したいのは年齢だけではありません。収入や貯蓄、雇用形態、家族の負担、頼れる人の有無などによって、仕事を変えたときのリスクは大きく変わります。50代でも十分な貯蓄や専門性があれば、新しい仕事へ移る余地はあるでしょう。反対に20代でも、奨学金や生活費の負担が大きく、家族から支援を受けられなければ、一度の離職が家計を直撃する可能性があります。若いから何度でもやり直せるとは限らないといえます。

必要な処方箋も、世代名だけで決めるべきではないでしょう。氷河期世代には収入を守りながら経験を生かせる転職や学び直し、老後まで見据えた生活設計が役立つと考えられます。Z世代には、仕事を小さく試しながら自分の適性を確かめ、環境が変わっても持ち運べる能力を育てる仕組みが向いています。同時に企業側には年齢だけで判断しない採用や評価、社会には失敗しても生活が崩れにくい支援が求められるでしょう。「どの世代が大変か」を比べるより、誰がどれだけ再挑戦できる余力を持っているかを見る。その視点が、世代を超えて働く不安を考える入口になるのではないでしょうか。

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