ニュース離れではなかった?ポッドキャストから見える情報収集スタイルの変化

ニュース離れではなく「接し方」が変わり始めた

新聞を広げる人が減り、テレビのニュース番組を毎日決まった時間に見る人も少なくなっています。だからといって、人々が社会の出来事に興味を失ったとは限りません。変わっているのは、ニュースに触れる方法です。スマートフォンにはSNSや動画、メッセージ、仕事の通知が次々に届き、ニュースのためだけに30分を確保することが難しくなりました。Reuters Instituteの「Digital News Report 2026」でも、ニュースを取り巻く環境はテレビや新聞、ニュースサイト中心から、SNSや動画などのプラットフォームへ大きく動いていることが示されています。世界では週にニュースクリエイターから情報を得る人も27%に達しました。情報を届ける主役がメディア企業だけではなくなっているといえるでしょう。

そこで存在感を増しているのがポッドキャストです。日本では2025年12月に実施されたオトナルと朝日新聞社の共同調査で、月1回以上ポッドキャストを利用する人が18.2%となり、2020年の14.2%から4ポイント上昇しました。15~19歳では40.5%、20代では28.8%に達しており、若い年代ほど利用率が高くなっています。ただし、ポッドキャスト全体の利用者とニュースポッドキャストの利用者は分けて考えなければなりません。Reuters Instituteの2025年調査では、ニュースポッドキャストを週1回以上聴く人は米国で15%だった一方、日本では3%でした。日本では音声を聴く習慣は広がっていても、ニュースを聴く文化はまだ発展途上にあると考えられます。

 

「ながら聴き」だけではない音声ニュースの強み

ポッドキャストが広がる理由として「ながら聴き」がよく挙げられます。実際、2025年の国内調査ではポッドキャスト利用者の80.8%が何かをしながら聴いていました。移動中や家事中、散歩をしている時間なら、画面を見なくても情報を受け取れます。ニュースを見る時間を新しくつくるのではなく、すでにある生活時間へ情報収集を組み込める点は大きな特徴でしょう。一方、これだけなら従来のラジオにも当てはまります。ニュースポッドキャストの価値を理解するには、「何かをしながら聴ける」という便利さの先まで見る必要があります。

速報を知るだけなら、ニュースアプリやSNSのほうが速いでしょう。ポッドキャストが力を発揮するのは、「何が起きたか」より「なぜ起きたか」を知りたい場面です。記者が取材の背景を説明したり、専門家が経済や政治の仕組みを会話形式で整理したりすれば、文章では長くなりやすい内容も耳から理解できます。ニュースポッドキャストはニュースの主な入口というより、他のメディアを補う存在でもあります。Reuters Instituteによると、複数国でポッドキャストをニュースの主要な情報源とする人は2%未満ですが、情報への関心が高い利用者が補完的に使っています。速報を奪うのではなく、ニュースを深く理解する時間をつくるところに強みがあると思われます。

 

音声と動画の境界が薄れている

もう一つ見逃せないのが、ポッドキャストが「耳だけで聴くもの」ではなくなっていることです。出演者が話している様子を撮影し、音声版をSpotifyなどで配信しながら、映像版をYouTubeへ公開する形式が広がっています。日本の2025年調査でも、ポッドキャスト利用者の30.7%にビデオポッドキャストの視聴経験があり、よく利用するサービスではYouTubeが首位となりました。若い人にとっては、「これはポッドキャスト」「これは動画」と厳密に区別するより、見たいときは動画、移動中は音声という使い分けのほうが自然なのかもしれません。

海外でも同じ動きがあります。Reuters Instituteが紹介した2026年のEdison Researchの調査では、米国の12歳以上で週にポッドキャストを利用する人のうち、音声と動画の両方で楽しむ人が26%に達し、音声だけの13%を上回りました。動画が音声を奪うというより、ポッドキャストへの入口を増やしていると見るほうが実態に近いでしょう。長い本編の一部をYouTube ShortsやSNSの短尺動画で知り、興味を持った人が20分、30分の本編へ移る流れもつくれます。ニュースメディアにとっては、一つの取材を記事、音声、動画へ展開できるため、異なる生活時間を持つ人へ同じニュースを届けやすくなるといえます。

 

メディア名より「誰が語るか」が問われる時代へ

ポッドキャストがニュースにもたらす変化は、配信形式だけではありません。新聞では「どの新聞の記事か」、テレビでは「どの局の番組か」が信用を判断する材料になってきました。しかしポッドキャストでは、同じ記者や専門家の声を毎週聴くことになります。話し方や知識、考え方まで伝わりやすいため、「この番組だから」だけでなく「この人の説明だから聴きたい」という関係が生まれます。2026年のDigital News Reportで、世界の27%がニュースクリエイターから週に情報を得ているという数字も、組織だけではなく個人がニュースの入口になっている状況を映しているでしょう。

ただし、この親しさには弱点もあります。声を繰り返し聴けば、その人を身近に感じやすくなりますが、親しみやすさと情報の正確さは同じではありません。好きな話し手の意見を事実と同じように受け取ってしまう危険もあります。メディア企業には、取材や事実確認という従来の強みを生かしながら、記者や専門家の個性を前に出す工夫が求められるでしょう。ポッドキャストニュース拡大の本質は、ラジオのようなサービスが増えることではありません。ニュースを「決まった媒体で受け取る」習慣から、自分の生活時間や信頼できる語り手に合わせて選ぶ習慣へ変わりつつあることにあります。音声、動画、記事を行き来しながら信頼を築けるメディアが、これから支持を伸ばしていくのではないでしょうか。

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