日本の外食チェーン海外進出加速、成功の条件とは何か
国内だけでは伸びにくい外食産業、海外が次の成長市場に
日本の外食チェーンが海外展開を強めています。背景には、日本食人気だけでなく、国内市場で成長を続ける難しさがあります。人口減少が続くなか、食材費や人件費、光熱費も上昇しており、新しい店舗を増やせばそのまま利益が伸びるとは限りません。国内で培ってきたブランド、調達網、調理技術、店舗運営の仕組みを海外でも活用し、新たな市場を開拓する動きは、今後も広がっていくと考えられます。ゼンショーホールディングスでは、2025年3月期の新規出店880店のうち782店が海外でした。こうした数字を見ると、大手外食企業にとって海外は補助的な市場ではなく、成長を支える存在になりつつあるといえます。
海外には日本食を受け入れる土台もあります。農林水産省によると、海外の日本食レストランは2013年の約5万5,000店から2023年には約18万7,000店まで増加しました。2025年は約18万1,000店と2年前から約6,000店減りましたが、それでも2013年の3倍を超える規模です。地域別ではアジアが約11万2,400店と減少する一方、中南米は約1万5,300店、中東は約1,600店となり、いずれも2023年から約2割増えました。世界全体が同じペースで伸びているわけではなく、成熟が進む地域と、新たに需要が広がる地域が分かれ始めていると思われます。
日本食が人気でも、店が儲かるとは限らない
海外進出で最初に見極めたいのは、「日本食が売れる国か」だけではなく、「1店舗で利益が残る国か」という点です。海外で話題になり、行列ができても、家賃や人件費、物流費が高ければ経営は安定しません。日本産食材を多く使えば品質を揃えやすい一方、輸送費や為替の影響を受けやすくなります。現地調達を増やせば原価を下げられる可能性がありますが、味や品質を一定に保つための仕入れ基準が必要です。客単価、原価、人件費、家賃を組み合わせ、その市場で無理なく利益を残せる価格をつくれるかどうかが、海外進出の成否を分けると考えられます。
そのうえで求められるのが、日本らしさと現地化のバランスです。国が変われば、好まれる味付けや料理の量、注文方法、食事の時間帯まで変わります。宗教によって使えない食材があったり、複数人で料理をシェアする習慣があったりする地域もあります。一方ですべてを現地に合わせてしまえば、日本の外食チェーンを選ぶ理由が弱くなる可能性があります。看板商品の特徴や品質、清潔感といったブランドの軸は残しながら、価格や量、メニュー構成を現地の暮らしに合わせる。この線引きができるかどうかも、成功のポイントになるのではないでしょうか。
利益が出る店舗を何度も再現できるか
1店舗目が成功しても、それだけで海外事業が軌道に乗ったとは言い切れません。外食チェーンの強みは、利益を出せる店舗を同じ品質で何店舗も展開できる点にあります。日本人料理人や本社スタッフが常に店舗にいなければ品質を維持できない状態では、10店、100店と増やすほど人材不足や管理コストが重くなります。調理工程、接客、清掃、発注、教育までを標準化し、現地スタッフを中心に運営できる体制を整える必要があります。海外進出では料理そのものよりも、店舗を安定して回せる仕組みの方が成長を左右するといえるでしょう。
実際、ゼンショーグループは2025年3月末時点で世界1万5,419店舗を展開し、「すき家」だけでも海外8つの国・地域に652店舗を持っています。同社は食材の調達から製造、物流、店舗販売までを一貫して管理する仕組みをグローバル展開の基盤としています。すかいらーくグループも2026年6月末時点で台湾92店、マレーシア27店、米国2店の計121店を展開しており、2025年6月末の106店から増加しました。店舗を増やせる企業には、現地で売れる商品だけでなく、それを安定して提供できる運営基盤があると考えられます。
海外で成功するポイントは売る・残す・増やす
日本の外食チェーンが海外で成功する流れは、現地で支持される商品をつくり、その売上から十分な利益を残し、同じ店舗を何度も再現できる状態へ持っていくことです。市場選びも、この流れから逆算した方がよいでしょう。日本食店が多い国なら需要を見込みやすい一方で、競争も激しくなります。日本食がまだ少ない地域では先行者になれる可能性がありますが、認知を広げるための費用がかかる場合もあります。人口や所得だけを見るのではなく、「誰が、何を、いくらで、どれくらいの頻度で食べるのか」まで想定できれば、出店後のズレを減らせると考えられます。
海外進出の成功は、店舗数の多さだけでは判断できません。話題の店を1店舗つくることと、利益を確保しながら50店、100店へ広げることでは、求められる力が大きく変わります。日本の外食企業が持つ強みは、寿司やラーメン、牛丼といった料理そのものだけではなく、一定の品質を効率よく提供できるチェーン経営の仕組みにあります。その強みを残しながら、現地の価格、食文化、人材、物流に合わせて組み替えられる企業ほど、海外市場で長く成長できると思われます。売れる店をつくり、利益を残し、それを再現できる形にする。この流れを一つの経営モデルとして設計できるかどうかが、日本の外食チェーンが世界で定着するための条件になるのではないでしょうか。
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