働く女性に多い“隠れ貧血”、そのサインと食事改善法
仕事に家庭、時には自分の趣味や勉強と、多忙な毎日を送る働く女性たち。誰かのために動きながら、自分の体調は後回しにしていませんか?「最近なんとなく疲れやすい」「肌の調子が悪い」「朝がつらい」――そんな小さな不調を、年齢やストレスのせいだと済ませてしまうこともあるでしょう。
しかし、そのような不調の裏に潜んでいるかもしれないのが、「隠れ貧血」です。血液検査では正常とされることが多く、医師も見逃しがち。にもかかわらず、心身にさまざまな悪影響をもたらすため、注意が必要な状態です。特に30代から40代の女性に多くみられ、放置することで生活の質にも大きく影響します。
見た目にはわからない「隠れ貧血」とは?
「隠れ貧血」とは、医学的には「鉄欠乏性貧血予備軍」とも呼ばれ、血液中のヘモグロビン値は正常であっても、体内の鉄の貯蔵量が著しく減っている状態を指します。この鉄の貯蔵量は「フェリチン」という数値で表され、通常の健康診断では測定されないことも多いため、見過ごされやすいのが特徴です。
とくに女性の場合、毎月の月経によって鉄分を失うだけでなく、妊娠や出産、授乳といったライフステージによって鉄の需要が高まるタイミングが多く存在します。ダイエットによる栄養制限や偏った食生活も鉄不足を助長します。30〜40代の働く女性は、責任ある仕事と家庭の両立によるストレスで体調の変化に鈍感になりがちであり、「なんとなく調子が悪い」状態が慢性化してしまうケースも少なくありません。
さらに、40代後半以降の女性が迎える更年期では、ホルモンバランスの変化に伴う不調と鉄不足による症状が重なることもあります。そのため、隠れ貧血に気づかずに更年期障害と誤解してしまうこともあり、より一層の注意が必要です。
見逃されがちなサインに要注意
隠れ貧血の厄介な点は、その症状が非常に曖昧で、「なんとなく調子が悪い」という程度に感じられることです。そのため多くの方が「加齢かな」「最近忙しいから仕方ない」と思い込み、医療機関の受診にも至らないまま日常を過ごしてしまいます。しかし、次のような変化に気づいたときは、体が鉄不足を訴えている可能性があります。
たとえば、日中に強い眠気を感じたり、睡眠をとっても疲れが抜けなかったりする場合。集中力の低下や、理由のないイライラ、気分の落ち込みといった精神的な不調が目立つようになることもあります。これらは、脳内で感情や思考に関わる神経伝達物質の生成に必要な鉄が足りていないことが原因とされています。
また、髪が細くなった、抜け毛が増えた、肌が乾燥してくすんで見える、爪が割れやすくなった、反り返ってきた――といった見た目の変化にも注意が必要です。これらは血液の酸素運搬力が下がっているサインであり、鉄不足の影響が表面に出てきている証拠でもあります。
一見すると他の原因でも起こりうる症状のため判断が難しいのですが、こうした不調が複数当てはまるようであれば、内科や婦人科での受診をおすすめします。通常の貧血検査(ヘモグロビン値)だけでなく、「フェリチン」の測定を依頼すれば、体内の鉄の貯蔵量を確認できます。
食事から整える、隠れ貧血のセルフケア
隠れ貧血の改善において、最も基本となるのは日々の食事です。鉄分は「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」に分けられますが、吸収率が高いのはヘム鉄です。動物性食品に多く含まれるこの鉄分は、体内に効率的に取り込まれるため、積極的に摂ることが勧められています。
たとえば鶏や豚のレバー、牛の赤身肉、マグロやカツオ、あさりやしじみといった食材が有効です。毎日の献立にこれらを少しずつ取り入れるだけでも、体内の鉄の蓄えを回復させる助けになります。一方、植物性食品に含まれる非ヘム鉄(ひじき、ほうれん草、小松菜、大豆製品など)もバランスよく摂ることが大切です。これらは単独では吸収されにくいのですが、ビタミンCやたんぱく質と組み合わせることで吸収率が高まります。
また、食後すぐにコーヒーや緑茶を飲むと、これらに含まれるタンニンが鉄の吸収を妨げるため、30分ほど時間を空けるとよいでしょう。さらに、鉄の吸収に関わる栄養素としてはビタミンB12や葉酸も重要ですので、これらを含む食品(卵、納豆、緑黄色野菜など)も取り入れるとより効果的です。
自分の体調を「後回し」にしないために
隠れ貧血は、忙しい日々を送る女性たちにとって気づきにくい落とし穴です。しかし、ちょっとした不調に目を向け、食生活を見直すことで改善が期待できるものでもあります。症状を放置しておくと、気力や集中力の低下、仕事のパフォーマンスの悪化、そして心身のバランスの崩れへとつながる可能性もあるため、早めの対処が何よりも大切です。
医療機関での相談も大きな一歩です。婦人科では月経や更年期に関する不調を総合的に見てもらえるほか、内科では食事や栄養指導も含めたアプローチが可能です。検査結果に不安がなくても、フェリチンや鉄の数値を確認することで、新たな気づきが得られるかもしれません。「仕事が忙しいから」「疲れていて当然」ではなく、「今、少しだけ自分の体と向き合ってみよう」と思うことが、健康への第一歩です。
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