耳の定期ケアを怠ると何が起きる?放置が招く健康リスクの実

耳は、私たちの日常生活を支える大切な器官でありながら、体の中でも特にケアが後回しになりやすい部分だといわれています。健康意識が高まる時代であっても、耳の状態を定期的にチェックしている人は多くありません。日本耳鼻咽喉科学会の調査によれば、年に1回以上の耳の検査を受けている人は全体の2割未満で、視力検査や歯科検診と比べても圧倒的に低い割合にとどまっている状況が見えてきます。
生活スタイルの変化に目を向けると、オンライン会議や動画視聴、移動中の音楽再生など、日常の多くの場面でイヤホンを使う時間が増え、耳への負担は以前より大きくなっています。それにもかかわらず、耳の違和感や聞こえにくさに気づいた時点では、すでにトラブルが進んでいたという例も多く、必要なケアと実際の行動の間に大きな隔たりがあると考えられます。
耳を健康に保つためには、私たち自身が“見えないリスク”を理解し、早めに向き合う意識を持つことが欠かせないでしょう。
耳を放置することで起きる見えないリスク
耳のトラブルは、痛みや腫れのように目で見て判断できるものばかりではありません。たとえば、強く自覚しないまま進行する疾患として加齢性難聴が挙げられます。日本補聴器工業会の統計では、65歳以上の約3人に1人が難聴の兆候を持つとされ、早期発見とケアが生活の質を維持する鍵になると考えられています。
さらに、イヤホンの普及による騒音性難聴も問題となっています。WHO(世界保健機関)は、若年層の約10億人が過度な音量の音楽や環境騒音により「聴力への潜在的リスクにさらされている」と指摘しています。特にカナル型イヤホンは密閉性が高く、80デシベルを超える音量を長時間浴びると耳の細胞が傷つきやすいと報告されています。自覚症状がないまま進むケースが多いため、放置してしまうことで後から大きな問題に発展しやすい点が懸念されています。
耳垢の蓄積も原因のひとつです。乾燥したタイプなら自然に排出されやすい一方、湿性耳垢の人では奥にたまりやすく、聞こえの悪さや耳の閉塞感につながる可能性があります。特に綿棒で奥へ押し込んでしまう習慣はトラブルの一因になりやすいとされ、専門家によるケアが望ましい場面もあるでしょう。
イヤホン時代に増える負担と、耳に起こりやすいトラブル
働き方の変化に伴い、1日のなかでイヤホンを装着している時間が以前より長くなっている傾向が見られます。自宅でのオンライン会議や外出先での音声コンテンツ視聴が増え、1日3時間以上イヤホンを使う人は全体の約4割にのぼるという調査もあります。便利なノイズキャンセリング機能は周囲の雑音を抑え集中しやすい一方で、音量を大きくしなくても聞き取りやすくなるため、自分がどの程度の音を耳に入れているのか判断しにくい点が課題として挙げられています。
また、外耳道は湿度がこもりやすく、長時間密閉された状態が続くと細菌が繁殖しやすくなり、外耳道炎の原因になることがあります。特に汗をかきやすい季節や運動時には、蒸れによるかゆみや軽い炎症が起きやすく、若い世代を中心に相談が増えていると報告されています。イヤホンの共有も衛生面でリスクがあり、耳の状態に不安がある場合には避けた方が安心です。
年齢による変化にも注意が必要です。年齢を重ねると皮膚のバリア機能が低下し、小さな刺激で痛みを感じやすくなることがあります。耳の乾燥や軽い炎症でも日常生活に不快感を覚えやすくなるため、違和感を覚えた時点で早めに専門医へ相談することで、トラブルを大きくしないための対策につながるでしょう。
今日から取り入れたい耳の定期ケアと医療チェック
耳の状態を整えるためには、日々の習慣を見直すことが重要だとされています。イヤホンを使う際は、音量を最大の60%以下に抑え、1時間ごとに休憩を挟むことがひとつの基準として推奨されています。長時間の作業ではヘッドホンに切り替えて装着の負担を減らすなど、状況に応じた工夫も役立つでしょう。
耳掃除に関しては、医療機関が「頻度は高くなくてよい」と発信しており、自宅で行う場合は1〜2か月に1度を目安にすると安心です。耳垢が溜まりやすい体質や、耳のつまりを感じる人は、耳鼻咽喉科でのクリーニングを利用することで、耳の中を安全に整えやすくなると考えられます。
定期的な聴力チェックを取り入れることも有効です。簡単な機器を用いた検査では、自分では気づきにくい高音域の変化を確認できます。特に40代以降は聴力の変化が始まる時期とされているため、年に1回の検査を取り入れることで、早い段階での対処がしやすくなるでしょう。
まとめ
耳は生活のあらゆる場面で使われているにもかかわらず、ケアが後回しになりやすい部分です。イヤホンを長時間使う生活が一般化し、年齢による変化も出てくるなかで、知らずに負担が蓄積してしまう可能性があります。聞こえの変化は生活の質に直結するため、日々の習慣を見直しながら、小さな違和感の段階で動けるよう意識しておくことが大切といえるでしょう。
専門医による診察や簡単な検査を取り入れて、将来の健康を守るきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
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