終末医療を考える:延命措置の希望をどう伝える?
1. 終末医療とは?
終末医療とは、病気や加齢により回復が見込めない患者に対して行われる医療のことを指します。具体的には、患者が最期の時間をできるだけ穏やかに過ごせるよう支援する医療が中心となります。そのため、症状の緩和や生活の質を重視し、患者や家族の希望に寄り添った治療が提供されます。終末医療を選択する際には、延命措置を施すかどうかが大きな課題となります。
2. 延命措置とは?
延命措置とは、生命を維持するために施される医療行為のことを指します。具体的には、呼吸や循環機能が低下した場合に人工的な方法で補助を行う治療が含まれます。例えば、自発的な呼吸が困難になった際には人工呼吸器を装着することで酸素を供給します。また、心停止や呼吸停止時には、心肺蘇生(CPR)を施し、胸部圧迫や電気ショックを行うことで蘇生を試みます。さらに、食事を摂ることが困難になった場合には、胃ろうや点滴を通じて栄養を補給し、腎機能が著しく低下した際には透析治療を行うことで老廃物を除去します。
これらの措置は、生命を延ばす効果がありますが、必ずしも患者の苦痛を軽減するとは限りません。そのため、どの程度の治療を望むのかを本人が明確にし、あらかじめ希望を伝えておくことが大切です。
3. 延命措置の希望を伝える方法
3-1. 事前指示書(リビングウィル)を作成する
事前指示書(リビングウィル)は、本人が意思決定できるうちに、自身の延命措置に関する希望を文書として残すものです。これを作成することで、家族や医療関係者が迷うことなく適切な対応を取ることができます。具体的には、希望しない延命措置を明記したり、最期の時間をどのように過ごしたいのかを記載したりすることができます。また、医療代理人を指定することで、本人の意思を代弁してもらうことも可能です。
3-2. 家族と話し合う
事前指示書を作成しても、その内容を家族が知らなければ実現されない可能性があります。そのため、普段から家族と終末医療について話し合い、本人の希望を共有しておくことが重要です。話し合いの際には、急に深刻な話を持ち出すのではなく、少しずつ話題にすることが効果的です。また、分かりやすい言葉を使いながら、宗教的な価値観や人生観も尊重しつつ、意思を伝えていくことが大切です。加えて、医師などの専門家の意見を参考にすることで、より適切な判断ができるようになります。
3-3. 医師や看護師と相談する
終末医療に関する知識が不十分な場合には、医師や看護師と相談することが有効です。特に、病院ではアドバンス・ケア・プランニング(ACP)という、患者の価値観や希望を考慮した医療計画を策定する取り組みが進められています。医師と話す際には、病気の進行状況や予測される経過を確認し、延命措置を行うことで期待される結果やリスクを十分に理解することが重要です。また、緩和ケアなどの代替案についても検討することで、より納得のいく選択が可能になります。
4. 延命措置をめぐる法的手続き
日本では、延命措置に関する法的な枠組みが明確ではありませんが、本人の意思を尊重するためにいくつかの方法があります。例えば、成年後見制度を利用すれば、判断能力が低下した場合でも、後見人が医療の決定を行うことができます。また、医療代理人(ヘルスケアプロキシ)を指定しておけば、特定の家族や信頼できる人物が意思決定を代行することができます。さらに、公正証書を作成し、公証役場でリビングウィルを正式な文書として残すことで、法的な効力を強めることができます。これらの手続きを適切に行うことで、本人の希望が確実に反映される可能性が高まります。
5. 終末医療の選択がもたらす心の負担
延命措置を希望するかどうかは、患者本人だけでなく、家族にとっても大きな影響を与えます。多くの家族は、延命措置を行うかどうかの判断に迷い、「本当にこれが最善の選択だったのか」と自問自答することもあります。そのため、終末医療に関する正しい知識を持ち、早い段階で準備を進めておくことが大切です。
また、家族が精神的な負担を軽減するためには、グリーフケア(悲しみを癒すためのケア)を活用することも重要です。医療機関や自治体が提供するカウンセリングや支援サービスを利用することで、家族の心のケアも行うことができます。
6. まとめ
終末医療における延命措置の選択は、人生の最終段階において非常に重要な決断です。リビングウィルを作成したり、家族と話し合ったり、医療関係者と相談したりすることで、本人の希望を明確にし、それを実現するための準備を進めていくことが望ましいでしょう。
事前にしっかりと準備をしておくことで、患者自身が納得できる形で最期を迎えることができるだけでなく、家族も後悔なく見送ることができるようになります。
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