「学資保険」って必要?子供の将来に向けた資産形成
子どもが小学生に進学すると、教育にかかるお金への不安や関心が一気に高まります。学用品や塾、習い事など、思っていた以上に出費がかさみ、「この先、高校や大学の費用も含めて、どう備えればよいのか」と悩むご家庭も少なくありません。そのような中で注目されるのが「学資保険」という選択肢です。
しかし、「学資保険って本当に必要?」「普通の貯金とどう違うの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
教育費の実態:子ども1人にかかる費用はどれくらい?
文部科学省の「令和元年度子供の学習費調査」によると、子ども1人を小学校から大学まで育てるためにかかる教育費は、すべて公立に通った場合でも合計で約740万円にのぼります。
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小学校(公立)6年間:約193万円
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中学校(公立)3年間:約143万円
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高校(公立)3年間:約137万円
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大学(国公立、自宅通学)4年間:約250万円
これが私立校になると、費用はさらに増加します。たとえば、私立中高一貫校に進学し、私立大学(文系)に進学した場合には、トータルで1,200万円を超えるケースも珍しくありません。進路によっては1,500万円近くになることもあり、兄弟がいれば負担は倍になります。
こうした現実をふまえると、「早いうちから教育費を備える」という意識が極めて重要であることがわかります。
学資保険の基本:安心感と計画性を両立させる仕組み
学資保険は、子どもが大学などへ進学するタイミングでまとまったお金を受け取ることを目的とした保険商品です。毎月一定額の保険料を払い続けることで、満期時に約200万円〜300万円の学資金を受け取る契約が一般的です。
たとえば、以下のような契約内容が典型的です。
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子ども0歳時に契約
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月々の保険料:12,000円
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払込期間:15年間
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総払込額:約216万円
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満期時の受取額:約240万円(返戻率約111%)
学資保険の大きな特徴は、契約者である親が万が一の事態(死亡・高度障害など)になった場合、それ以降の保険料の支払いが免除され、満期時には約束通りの学資金が受け取れる「保障機能」がある点です。この「親に何かあったときも子どもの教育費を確保できる」という安心感は、多くの家庭に支持されています。
注意点:元本割れや柔軟性の低さも理解を
ただし、学資保険には注意すべき点もあります。最大のデメリットは、途中解約時の元本割れリスクです。契約から数年以内に解約すると、払込済みの金額より少ない解約返戻金しか戻ってこない場合が多く、家計が急変したときには流動性の低さが問題になります。
また、返戻率が高いといっても、年利換算にすると0.4〜0.6%程度とされ、近年のインフレや物価上昇を考慮すると、実質的な利回りはさらに低くなる可能性があります。加えて、満期金の受け取りは通常「高校卒業時」や「大学入学時」など時期が限定されているため、小中学校の習い事費用や塾代など、早期に必要となる出費には対応しづらいという点もあります。
資産形成の代替手段:新NISAをどう活用するか
2024年から始まった新しいNISA制度は、教育費の準備にも活用できる資産形成手段の一つです。年間最大360万円(つみたて枠120万円+成長投資枠240万円)までの投資が非課税となり、長期運用に向いている制度です。
たとえば、月1万円を年利4%で18年間積み立てた場合、元本216万円に対し最終的な運用結果は約348万円になります(複利運用を前提)。もちろん、株式や投資信託の価格変動によって元本割れの可能性もあるため、リスクを理解した上で計画的に運用する必要があります。
投資に慣れていない場合には、低リスクのバランス型投信や国債ファンドなどを組み入れ、家計の状況やリスク許容度に合わせて選ぶことが大切です。
兄弟がいる場合の資金設計:一律ではなく分散が鍵
兄弟がいる家庭では、教育費が一時期に集中する「ダブル進学」のタイミングに注意が必要です。たとえば、上の子が大学1年、下の子が高校3年となった場合、1年間で最大で200万円〜300万円程度の教育費がかかることもあります。
そのため、1人目には学資保険、2人目には新NISA、3人目には定期預金といったように、異なる金融商品を使って資金準備を分散させることで、柔軟な対応がしやすくなります。また、児童手当(月額10,000〜15,000円)を毎月そのまま積み立てれば、15年間で約180万円の資金を確保することも可能です。
家庭の方針と家計に合った方法を選ぶことが最も重要
学資保険は、「確実に、計画的に、保障付きで教育資金を準備したい」と考える家庭にとって、心強い選択肢の一つです。しかし一方で、柔軟性や高い利回りを求める場合には、新NISAなどの投資型の資産形成がより適しているケースもあります。
大切なのは、「どの手段が良いか」ではなく、「わが家にはどの方法が合っているか」を見極めることです。収入、支出、将来のライフプラン、兄弟の人数、リスク許容度などを整理しながら、無理のない範囲で計画的に準備を進めていくことが、子どもたちの夢を安心して支える第一歩となります。
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