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海外移住したら国民年金はどうなる?手続きと支払いのポイント

夢に見た海外での新生活。語学習得、キャリアアップ、家族との移住——それぞれの想いを胸に、新しい一歩を踏み出す準備をしている方も多いのではないでしょうか。しかしその裏で、つい見落としがちなのが「日本に残していく制度」との関係、とりわけ国民年金の取り扱いです。住民票を抜いた瞬間から、あなたは年金の“義務”から解放されますが、それは同時に、将来受け取れるはずの年金額を減らす選択肢にもなり得るということをご存じでしょうか?

 

国民年金は「日本国内に住所がある人」に加入義務がある制度

国民年金は、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人すべてに加入義務がある制度です。つまり、日本から海外に移住して住民票を国外に移した場合は、原則として国民年金の強制加入の対象外となります。たとえば、ワーキングホリデーや留学、海外赴任などで長期滞在する際に住民票を抜いた場合、その時点で加入義務はなくなります。
しかし、加入義務がなくなるからといって、年金制度から完全に離脱するわけではありません。海外移住後も「任意加入」という制度を利用することで、継続的に国民年金に加入し、将来の年金受給額を維持することが可能です。

 
任意加入制度で「継続して加入」することが可能

国民年金は、たとえ海外に住んでいても、「任意加入制度」を利用すれば継続して加入することができます。この制度の対象となるのは、60歳未満の日本国籍を持つ人で、海外に住所を移している場合でも適用されます。
たとえば、現在58歳で海外在住の方が、老齢基礎年金の受給資格期間である10年にあと2年足りない場合、任意加入によって不足分を補い、将来的に年金を受け取ることができるようになります。

手続きは、日本国内にある最後の住所地の市区町村役場で行い、同時に「国内に住む代理人」を立てる必要があります。代理人は、主に納付や通知の受け取りを代行する役割を果たします。

 
支払い方法は?クレジットカードや口座振替にも対応

任意加入後の保険料の支払い方法としては、日本国内の銀行口座からの口座振替、現金納付、そして一部自治体ではクレジットカード払いにも対応しています。たとえば2025年度の国民年金保険料は、月額16,980円(通常納付)です。2年前納(前納割引制度)を利用すれば、最大で15,000円程度の割引を受けられる場合もあります。
このように支払方法の選択肢は幅広く、事前に自身の生活スタイルに合った方法を準備しておくことで、海外からでも無理なく納付を継続することができます。

 
加入年数10年以上で受給資格が得られる

国民年金の受給資格を得るには、最低10年間の加入実績が必要です。これは、2017年に制度が改正されるまでは25年だった基準が緩和された結果です。

たとえば、大学卒業後に数年間会社員として厚生年金に加入し、その後フリーランスとして国民年金を支払い、30代で海外移住したというケースでは、合算して10年に満たないこともあります。
そのような場合に、任意加入を活用して年数を積み上げれば、将来的に満額の約78万円(2024年度・老齢基礎年金の満額)に近づけることも可能です。未納期間を放置してしまうと、受給資格自体を失うリスクがあるため、移住前に加入年数を確認することが大切です。

 
海外移住中も付加保険料の納付が可能

任意加入中でも、「付加保険料」を併せて納付することができます。これは月額400円を追加で支払うことで、年金受給時に年間で「200円 × 付加納付月数」の金額が上乗せされる制度です。たとえば2年間(24ヶ月)付加保険料を納付すれば、年額4,800円が年金に上乗せされます。長期的に見れば高い利回りであり、任意加入中でもぜひ検討したい制度のひとつです。

 
帰国後は再度強制加入に戻る

海外での生活を終え、日本に帰国して住民票を戻した場合には、自動的に国民年金の「第1号被保険者」として強制加入の対象になります。任意加入をしていた場合は、そのまま継続扱いにはならないため、市区町村役場であらためて加入の手続きを行う必要があります。また、年金保険料の納付を一時的に止めていた場合でも、帰国時点から保険料の支払い義務が復活しますので、速やかに対応することが重要です。

 
まとめ:渡航前の準備が老後の安心につながる

海外移住を機に国民年金の加入をストップしてしまうと、将来の年金受給資格や受給額に大きな影響が出るおそれがあります。日本の年金制度は、最低10年の加入で年金受給資格が得られる仕組みになっているため、その条件を満たすためにも、任意加入を含めた継続的な対応が求められます。
渡航前に住民票の移動、年金事務所での相談、代理人の登録、支払い方法の設定などをしっかり準備しておけば、海外でも安心して年金制度を活用することが可能です。ライフプランを立てる上でも、早めの行動と情報収集をおすすめします。

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