転職すべき?それとも休むべき?「働くのが嫌」の原因を正しく見極める

「仕事が嫌だ」と感じるとき、その感情にはじつは二種類あります。一つは「今の職場や仕事内容が嫌い」という気持ち。もう一つは「そもそも働くこと自体がしんどい」という気持ちです。パッと見は似ているようで、この二つはまったく別物です。
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によると、転職後1年以内に「前と同じような不満を感じている」と答えた人は転職者全体の約30%にのぼります。つまり転職した人のおよそ3人に1人が、職場を変えても気持ちが変わらなかったということです。これは能力や運の問題ではなく、「何が嫌なのか」を取り違えたまま動いてしまったことが原因である場合がほとんどでしょう。環境を変えれば解決すると思っていたのに、気づけば同じ気持ちを抱えている。そういう経験をした方も、少なくないはずです。
なぜ人はこの二つを混同してしまうのか
しんどくなったとき、人は原因を言葉にする前に感情が先に爆発します。「もう無理」「辞めたい」という気持ちが先走ってしまい、冷静に「何が嫌なのか」を整理する余裕がなくなります。そこに拍車をかけるのが、人間の脳が持つある性質です。不快の原因を「目に見える直近の何か」に押しつけようとする働きで、本当の不満が「誰かの指示に従い続けることへの疲弊」という抽象的なものであっても、「あの上司さえいなければ」「この会社さえ変われば」と、具体的なものに原因を貼り付けてしまいます。
さらにやっかいなのは、「働くのが嫌い」と自覚することへの心理的な抵抗感です。日本では「働きたくない」という気持ちを認めることが、怠け者の証明のように感じられる空気があります。だから多くの人は「今の仕事が合わないだけ」と自分に言い聞かせて、もっと根っこにある問いを避けてしまいます。この自己欺瞞が、自分の状態を正確に把握することを妨げます。
自分の本音を確かめる問いかけ
曖昧な自問は曖昧な答えしか返してくれません。少し意地悪なくらいの問いを、自分に向けてみてください。
まず試してほしいのが「宝くじで3億円当たっても、何か仕事に近い活動を続けたいと思うか」という問いです。「何もしたくない」と即答するなら、働くこと自体への疲弊か、燃え尽き状態にある可能性があります。「好きなことならやりたい」と思えるなら、仕事の内容や環境との相性が問題の中心でしょう。転職や職種の変更が、有効な手立てになりえます。
転職経験のある方であれば、過去の職場を思い返してみることも助けになります。どこへ行っても同じ「気力のなさ」を感じてきたなら、原因は環境ではなく自分の内側にある可能性が高いでしょう。一方で「前の職場の最初の1年は楽しかった」という記憶があるなら、今の職場や状況との相性問題です。
もう一つ、今の仕事への不満を具体的な言葉にできるかどうかも、大きなヒントになります。「残業が多い」「評価が不透明」「やりたい業務をやらせてもらえない」など、言葉が出てくるほど、それは今の環境への不満です。逆に「なんとなく全部嫌」としか言えないとしたら、感情が飽和しているか、もっと根本的なところに問題がある可能性が高いでしょう。
診断の結果によって、取る行動はまったく変わる
「今の仕事が嫌い」とわかった場合、まず不満を紙に書き出して「自分で変えられるもの」と「どう頑張っても変えられないもの」に分けてみてください。変えられるものが半分以上あるなら、転職の前に上司への相談や異動希望を試みる価値があります。変えられないものばかりなら、転職の準備を始めるタイミングです。この仕分けを飛ばすと、次の職場に同じ不満を持ち込む可能性が高くなります。
「働くこと自体がしんどい」とわかった場合は、まず身体や心の状態を確かめることが先決です。意欲の低下が2週間以上続くようであれば、日本うつ病学会のガイドラインでも専門家への相談を推奨しています。体や心に問題がないと確かめられてから、次に考えるべきは「自分でコントロールできる働き方をしたことがあるか」という点です。副業やフリーランスの仕事を小さく試してみることで、「今の働き方の構造が嫌なのか」「働くこと自体が嫌なのか」を、大きなリスクを取らずに確かめることができます。
どちらの場合も、疲れ切っているときにこの問いと向き合うのは得策ではありません。極限まで消耗しているとき、人はどんな問いに対しても「全部嫌」と答えてしまいます。まず十分に眠って休んでから、改めて自分の気持ちと向き合ってみてください。自分の感情を正確に読み取ることが、どんなキャリア相談よりも先に来る、最初の一歩になるはずです。
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