「本当にやりたいこと」に向き合い、古着輸入業から新規就農へ。古着×農業の新企画も検討中【茨城県笠間市】

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茨城県笠間市で有機農業を始めた中村悠太(なかむら ゆうた)さん。なんと前職は古着の輸入業者で、海外に出張して古着の買い付けをしていたという経歴の持ち主。就職前にワーキングホリデーで滞在したカナダでの生活、古着の仕入れで訪れた北米での暮らしぶりを見て「自分が本当にやりたいこと」に向き合うようになりました。その後感染症の流行によって起きた社会の急変が自分の背中を押すことに。昨年「Mountain Rhythm Farm」という農場を設立した経緯、今後やりたいことなどについてお話をうかがいました。

自分が本当にやりたいこと、偽りのない心は「ものづくり」へと導く

2024年11月、茨城県笠間市で「Mountain Rhythm Farm」という農場を立ち上げ、専業で有機農業を始めた中村悠太さん。現在50種類以上の野菜を育て、市内直売所で販売を行っている方です。

農場を設立するため、農業研修を始めたのは2023年。その前は、なんと古着の輸入卸売会社に勤務していました。

元々アメカジ(アメリカンカジュアル)のファッションやヒップホップの音楽など、アメリカの文化に憧れがあった中村さん。大学を卒業した後、ワーキングホリデーでカナダに滞在していたときに、古着の輸入業で日本人が働いていることを知ります。

帰国後は日本の古着輸入卸売会社に就職。その会社でヒッピーカルチャーが好きな先輩と出会うことになりますが、その後その先輩が独立するときに「一緒に働かないか」と声がかかりました。

先輩が創業した会社でも同様の職務を継続。仕事は順調で、仕事のスキルも年々身につけていくことができました。

しかしながら、北米に住む人々の暮らしぶりに長く触れていく中で、中村さんの視点も少しずつ変わっていきます。

大自然に囲まれた生活、そして各地で毎週行われる朝市では、その時期に採れる新鮮な野菜や果物が並び、それを楽しみに買いに来る地元の人たちの豊かな表情。そんな生活を見て感じるものがあったといいます。

中村さん:仕事を続けていく中で、北米の人々の暮らしぶりにも影響を受けたのだと思いますが、「自分が本当にやりたいこと」は何なのか、そこに向き合うようになっていきました。その当時行っていた「物を仕入れて販売をする」という仕事よりも、自ら何かを作る「ものづくり」に関わりたい、だんだんそう思うようになっていったのです。そしてその中でも、これまでやってきた古着という「リサイクル」につながるビジネスのような、循環型社会、環境に配慮した仕事に従事したい、そう考えるようになりました。

その答えの一つは「農業」。その思いは徐々に広がっていきました。

感染症流行で起きたビジネス環境の急変により、背中を押されることに

その後人生における転機がやってきます。感染症の世界的な流行。当時ちょうど北米に出張中で古着の買い付けを行っているところでしたが、感染症の影響で帰国が出来なくなることに。会社からは「事態が落ち着くまでそのまま北米に留まり仕事を続けてほしい」と依頼されました。

世の中の状況は、行動の自由がかなり制限される事態へと急激に変化。その動向については不安が残るままでした。

その一方で、ビジネスの方はなんと登り調子の大繁盛。古着の販売店などが直接海外に買い付けにいくことを止めたため、古着の輸入卸売業者に注文が殺到。

その結果、仕事はものすごく忙しくなり、売り物を確保するのがたいへんな状態に。しかも感染症の影響でさまざまな規制が増え、一日に何百キロも車で駆けずり回るような忙しさでした。

信頼する先輩と一緒に働いていた古着の卸売業も、上記のように状況が一変し、改めて自分のやりたいことを問い直すことに。

最終的に出した結論は、帰国して「農業」を始めること。お世話になった先輩にも相談し、よく理解をしてもらいました。

帰国後農業研修を終え、「Mountain Rhythm Farm」開設へ

農場の名前の由来となったのは、古着の仕入れをしている中でとくに心に残ったVintageのブランドネーム「Mountain Rhythm」。1970年代のムートンジャケットといえばこのブランドと言われるほど有名なブランドです。1955年に始まったベトナム戦争に反対したヒッピーが立ち上げたこのブランドには、自然回帰への志向、世の中の常識には疑問を持ち、自分で考え、自分で行動し、自分で答えを見つける。そんなメッセージが込められていました。

▲「Mountain Rhythm」のムートンジャケット(中村さん提供画像)

そして農業研修で農作業をしているときには、ミミズやバッタ、ハチやアリなど、豊かな自然の中には人間よりも多くの生物がいることを実感。人間中心の時間軸ではなく「Mountain Rhythm(山の時間軸)にもっと敬意を払うべき」という思いから、農場名を「Mountain Rhythm Farm」とすることに決めました。

▲農場からの景色(手前に見えるのは地元固有種の大豆)

中村さん:振り返ってみると、自分が学生の時に東日本大震災が起き、自分も茨城県で被災したのですが、そのときの「大人たち」の対応がとても納得できるものには見えませんでした。

津波によって原発の事故が起こり、その被害で退去せざるを得なくなった方がたくさん出てしまったわけですが、考えてみれば、そのような可能性がゼロではない政策を進めてきた議員たちは、多くの国民が選んだ人たちです。そのことには誰も触れようとはしない。そんな大人たちの態度にある種の不信感を抱くようになったのだと思います。

その後社会人になり、お世話になった先輩の影響もあって知ることになったヒッピーの文化、自然との調和を重視し、物質主義や既存の社会制度に異議を唱えるその考え方に少なからず魅力を感じたのは、自分の学生時代のそんな経験があったからなのかもしれません。

▲レタスの苗を植える作業
自分の経験を生かし「古着×農業」の新企画を検討中。夢は広がる

中村さん:今後については、まず農場経営を軌道に乗せたいと思っています。まだ経験が浅く失敗したことも多かったので、それらの反省を踏まえ今後はもっと計画性を持ってやりたいことを進めていきたいと思っています。販売は現在、市内の直売所で行っていますが、今後は野菜の「セット販売」も行う予定です。ECなど販売網の構築をどのように進めていくか、現在検討をしているところです。

また、その先には自分のこれまでの経験を生かして「古着×農業」の新企画を検討中です。普段の生活をもっと楽しいものにしていきたい、そんな思いで新たな取り組みが出来ればと思っています。もし実現したら皆さんぜひ参加してください。よろしくお願いします。

▲農場からの景色
情報

Mountain Rhythm Farm
Instagram:
@mountainrhythm.farm
(野菜販売についての問い合わせはInstagramのDMでも対応中。お気軽にご相談ください)
住所:茨城県笠間市加賀田758-1

愛智なおゆき
ローカリティ!は、地元に住む人々が、自分が大好きな地元の人やモノや出来事を、自分で世界に発信し、
その魅力を共に愛する仲間を募れる住民参加型・双方向の新しいニュースメディアを目指しています。
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[地域情報] 旅行・レジャー

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