副業を始めても仕事のパフォーマンスが落ちない人の共通点とは
副業解禁時代に「本業で結果を出し続ける人」が持つ条件
副業OKの会社がずいぶん増えました。厚生労働省の調査によれば、2022年時点で副業・兼業を認める企業の割合は約53%。2018年に政府がガイドラインを整備してから、その流れは止まる気配がありません。給料がなかなか上がらない時代に収入源を増やしたい、スキルを試したい——そう考えて副業を始める人が増えるのは自然なことです。
ただ、始めてみたはいいものの、半年もしないうちに「なんか本業がおろそかになってきた」と感じたり、上司や同僚との関係がぎこちなくなってしまう人も少なくありません。エン・ジャパンの2023年調査では、副業経験者の約38%が「本業に悪影響があった」と答えています。3人に1人以上が何らかのつまずきを経験している計算です。
では、副業をしながらも本業でしっかり結果を出し続けている人は、何が違うのでしょうか。
副業を「本業のとなり」に置いている
両立できている人をよく見ると、副業の内容を本業から遠く離れた場所に置いていないことが多いです。マーケティングの仕事をしている人がライティングやSNS運用を副業にする、エンジニアが技術的なコンサルや勉強会の講師を引き受けるといった具合です。なぜこれが有効かというと、副業で得た気づきや経験が本業に自然と流れ込んでくるからです。副業で実際にクライアントと向き合った経験が、本業での提案資料の質を上げる。副業で新しいツールを試したことで、社内業務の改善アイデアが浮かぶ。こういった循環が起きると、副業に使った時間が本業から「引いた時間」ではなく、本業にも「足した時間」に変わっていきます。
ランサーズが2023年に発表したフリーランス実態調査では、本業と関連性の高い副業をしている人の約79%が「本業評価が上がった、または変わらない」と回答しています。一方、関連性の低い副業をしている人では同じ回答が約61%にとどまっています。この18ポイントの差は、時間の使い方というよりも、知識やモチベーションがどの方向に流れているかの違いから生まれているといえるでしょう。
副業と本業をまったく別物にすることが悪いわけではありませんが、副業を選ぶ段階で「本業との接点はあるか」をひとつの判断軸にしておくと、両立の難易度はぐっと下がります。
「時間の量」より「体と頭のコンディション」を守っている
副業を始めた人が失敗しやすいポイントとして、時間管理ばかりを意識して、自分の体や頭のコンディション管理を後回しにしてしまうことがあります。1日24時間は誰でも同じですが、万全の状態で取り組んだ2時間と、ヘトヘトな状態でこなした2時間では、仕事の質がまったく違います。
うまくいっている副業者の多くは、「週に何時間副業をするか」よりも「どの状態のときに何をやるか」を先に決めています。本業が忙しい時期は副業の受注を意識的に絞り、余裕のある時期にまとめて動く。アイデアや文章など頭を使う作業は午前中にまわし、メールの返信や経費処理などのルーティンは夜にこなす。こういったコンディションベースの設計が、疲弊せずに長続きさせるコツです。
また、米国睡眠医学会の研究では、6時間以下の睡眠が2週間続くと認知パフォーマンスが最大40%低下することが示されています。副業のために睡眠時間を削り続けると、本業での判断力や発想力が確実に落ちていきます。体が資本という言葉は副業においても変わらず、パフォーマンスを発揮できる状態を守ることが、本業・副業どちらにとっても土台になります。
「黙ってやる」より「ちゃんと伝える」ほうがうまくいく
副業が認められている会社でも、申請や報告のプロセスをきちんと踏まずにグレーなまま続けている人は意外と多いです。パーソル総合研究所の2022年調査では、副業経験者の約34%が職場に申告していないと答えており、そのうち約55%が「後ろめたさを感じている」と回答しています。この「後ろめたさ」、実は仕事のパフォーマンスに影響します。心理学では「認知的不協和」と呼ばれる状態で、自分の行動と気持ちの間にズレがあると、集中力が散漫になったり、本業での自己評価が下がったりすることがわかっています。「バレないようにしよう」という意識が頭の片隅に居座っているだけで、本業への集中が削られていくわけです。
逆に、堂々と副業を開示してポジティブな反応をもらった人は、本業へのやる気が上がるケースが多く報告されています。実利的なメリットもあって、副業の内容を上司に話したことで「そのスキル、社内のプロジェクトでも使えない?」と声がかかることもあります。会社の文化や就業規則によって開示の範囲は異なりますが、最低限の手続きを誠実に踏んでおくことが、長く副業を続けるための信頼の土台になるでしょう。
「やめどき」を先に決めておく
副業をうまく続けている人がひそかにやっていることのひとつに、縮小・停止する基準をあらかじめ自分で決めておく、というものがあります。副業を始めるとき、多くの人は「どこまで広げるか」は考えます。でも「どうなったらペースを落とすか」まで考えている人は少ないのです。具体的には「本業の評価が2ヶ月連続で下がったら副業の稼働を半分にする」「週の睡眠時間が平均6時間を下回ったら新しい仕事は受けない」といったルールをあらかじめ決めておく方法です。感情や惰性で動くのではなく、自分で決めた基準に従って動けるようにしておくわけです。
ビジネス心理学では「if-thenプランニング」と呼ばれるこのアプローチについて、ニューヨーク大学のゴルヴィッツァー教授が研究しており、このやり方を使った人は目標達成率が平均2〜3倍高まることが示されています。「もうしんどいな」と感じてから考えるのではなく、元気なうちに決めておくのがポイントです。
撤退ラインを持っておくことは、諦めの早さではありません。本業をプロとして守り続けるための、前向きな自己管理です。副業はあくまで手段であって、本業のパフォーマンスを犠牲にしてまで続けるものではない——この軸をぶらさないでいられる人が、結果として副業でも長く稼ぎ続けられているように思います。
副業解禁の流れは今後も続くでしょう。制度が整うほど問われるのは「副業をするかどうか」ではなく「どう副業するか」という質の話になっていきます。本業を守りながら副業でも稼ぐ条件は、特別な才能でも一部の人だけのものでもなく、設計・コンディション管理・開示・撤退基準という4つの意識を持てるかどうかにかかっているといえるでしょう。
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