経験だけでは補えないマネジメント技術の本質とは何か

評価される基準がそもそもずれている

営業成績が良かった人がそのままチームリーダーになる、開発力の高いエンジニアがそのままプロジェクトマネージャーになる。こうした昇進はどこの会社でも見かける光景だと思われます。ここには「マネジメントは現場に出れば自然に身につく」という前提が隠れていますが、実際に部下を持って初めて壁にぶつかる管理職は少なくありません。
個人として成果を出す力と、チームを動かして成果を出す力はまったく別の技術です。前者は自分の判断を速く正確に下すことが評価されますが、後者は相手の理解度や気持ちを読み取りながら伝え方や任せ方を調整する力が問われます。

では昇進の基準をどう変えればよいのかというと、成果だけでなく「他人に仕事を任せて成果を出せているか」「部下からの相談件数や相談内容の質」といった、対人での動き方を見る指標を組み合わせることが現実的な一歩になるでしょう。数字だけで判断できる基準に、もう一段別の軸を足すことが求められています。

 

プレイヤー経験は敵でも味方でもある

だからといって研修を導入すれば全て解決するかというと、それほど単純でもありません。優れたプレイヤーだった経験そのものは決して悪者ではなく、数字で結果を出してきた実績があるからこそ部下から信頼を得られる場面も多くあります。プレイヤー経験はマネジメントの妨げになると同時に、土台にもなり得るという二面性を持っています。

この二つを分ける境目は、自分のやり方を「唯一の正解」として押しつけているか、それとも「ひとつの選択肢」として提示し部下自身に選ばせているかという姿勢の違いにあります。指示が細かすぎれば部下は考える前に答えを求めるようになり、逆に曖昧すぎれば何を優先すべきか判断できず動きが止まってしまいます。
研修で知識を入れるだけでなく、自分の成功体験を一度手放して部下に合わせて調整する練習を積むところまでセットにしないと、研修は現場で活きてこないと思われます。

 

失敗が見えるまでに時間がかかりすぎる

こうした問題がなぜここまで長く放置されてきたのかを考えると、失敗が見えるまでの時間差が大きく関係していると思われます。営業成績なら翌月の数字を見ればすぐに結果がわかりますが、マネジメント不全による部下の離職や士気の低下は、数か月から数年かけてゆっくりと表面化するものです。

離職理由の上位に「直属の上司との関係」が挙げられる調査は珍しくなく、退職理由の中でも大きな割合を占めるという声も多く聞かれます。経営層がこの管理職はうまく機能していないと気づいた時には、すでに何人もの部下が離れた後になっていることも珍しくありません。

数字ですぐに失敗が見える仕事なら誰も経験則だけには頼らないはずですが、見えにくいからこそ経験と勘という曖昧な物差しに頼り続けてしまいます。

 

責任の所在が曖昧だからこそ後回しにされる

さらに根っこを掘ると、この時間差が放置される理由には、失敗の責任がひとりの管理職に帰属しにくいという事情もあります。営業成績の未達なら本人の責任だと判断しやすいのですが、部下の離職や士気低下は、本人の管理能力だけでなく、部署の忙しさや会社全体の方針、他のメンバーとの相性など複数の要因が絡み合って起きるものです。

原因をひとつに特定しにくいからこそ、経営層も人事も「この管理職が悪い」と断定しづらく、結果として改善への着手がどうしても先送りにされがちです。ここまでを踏まえると、必要なのは研修そのものよりも、目標設定やフィードバックの伝え方といった基本を学んだうえで、実際の部下対応を上司や人事がその都度振り返り、修正していく仕組みだと考えられます。

経験は大切な材料のひとつですが、それだけに任せて放置するのではなく、学びの機会と振り返りの仕組みを継続的に用意することこそが、これからの管理職育成に欠かせない視点ではないでしょうか。

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ビジネス・キャリア

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