足利尊氏が坐禅したと伝わる「坐禅岩」があった!【福岡県宗像市】

ローカリティ!

意外な歴史上の人物が宗像(むなかた)に来ていました。歴史上の人物はどこか遠い存在だと思っていたのですが、ひとつの岩がその距離を一気に縮めてくれました。それが足利尊氏が坐禅したと伝わる大岩です。

足利尊氏といえば、室町幕府の初代将軍。その活躍の舞台は京都や鎌倉などを思い出しますが、なぜ九州に?という疑問が浮かびました。実際にその坐禅岩を前にして、かつての時間を想像してみました。

坐禅岩(ざぜんいわ)とは

宗像市山田にある「山田地蔵尊 増福院(やまだじぞうそん ぞうふくいん)」を訪れました。庫裡(くり)の裏手に回ると、人の気配はありません。

そこに、大きな岩が静かに横たわっていました。これが、室町幕府初代将軍・足利尊氏が坐禅したと伝わる「坐禅岩」です。

崖崩れを防ぐ砂防ダムが設置

岩の前は崖崩れを防ぐために整備されていますが、そのほかは自然のままに近い状態です。春のやわらかな光が木々の隙間から差し込み、風が吹くたびに葉が触れ合う音が聞こえてきます。何かを語りかけてくるようにも感じられました。

坐禅岩

白山城跡登山口駐車場に設置されている説明板によりますと、白山城(はくさんじょう)は鎌倉時代に宗像氏(むなかたし)の本城として築かれ、約380年にわたり地域の拠点だったといいます。

山頂付近には岩盤をくり抜いた「山ノ井」とよばれる井戸など、全国的にも珍しい遺構が残っています。つまりこの一帯は、単なる山中ではなく、地域史の重要な場所でもありました。目の前の岩は無言のままですが、確かにその時間の積み重ねを抱えて、何かを語りかけているように見えます。

駐車場にある説明板
足利尊氏と宗像大宮司の関係性

史料『宗像軍記』には、京都での戦いで新田義貞・楠木正成に敗れ九州へ落ち延びてきた足利尊氏を、宗像大宮司家(むなかただいぐうじけ)が白山城に迎え入れた経緯が記されています。宗像第宮司家は宗像大社の神職を代々務め、第80代の宗像氏貞(むなかたうじさだ)まで神を祀る家系です。

ここで興味深いのは、その決断の過程です。

宗像大宮司家は、単なる地方武士の頭領だけではなく、神官としての側面も持ちます。そのため、当主の宗像氏俊(むなかたうじとし)は尊氏を討ち取るのか受け入れるかどうかを兄弟家臣を呼び集めた会議で話し合い、さらに女禰宜を呼び神楽を舞わせて神託を仰いだ上で、最終的な判断を下したとされています。

武力だけでなく、神意をもって進路を決める。この二重の意思決定は、独特ではありますが、当時の宗像においてはそれが現実だったのでしょう。

結果として宗像氏は尊氏を支援し、彼は九州で勢力を立て直します。その後の多々良浜の戦いに勝利し、最終的に室町幕府を開きました。つまり、この地での決断が、日本の政権の行方にも影響した可能性があるということです。

福岡市東区にある多々良浜古戦場の碑

もしかしたら、歴史の転換点を見ているのかもしれない。そう考えると、この静かな場所が持つ意味が一気に重くなりました。

坐禅岩の上で何を思ったか

歴史を調べていて、当時のことに思いをめぐらせてみました。

足利尊氏がその時にどう思ったか、史料などにははっきりと残っていません。これといった正解はないのですが、その時のことを考えられるのは、歴史を学んで知る上で楽しいことです。

周囲には人の声はなく、風と木々の音、そして鳥の鳴き声だけが聞こえます。耳を澄ませていると、ただの自然音ではなく、何かを語りかけてくれるような気持ちにもなりました。

京都の戰で敗れ、追われる立場となった尊氏は、ここで何を考えていたのでしょう。率いてきた家臣もわずか2、300人に過ぎず、もしかしたらここで打ち取られてしまう、といった不安や焦りは確実にあったはずです。しかし同時に、次の一手を見据える冷静さも必要だったのではないでしょうか。

この場所の静けさは、何かを忘れさせるのではなく、逆に自分の内側と向き合わせる力を持っているように感じました。だからこそ、尊氏のここで坐禅をするという行為は、単なる休息ではなく、決断のために、これからどう挽回していくのか、策を巡らせるために必要な時間だったのかもしれません。

もちろん、これは私の想像に過ぎません。ですが、実際にその場に身を置き考えることで、歴史の出来事が単なる知識ではなく、実感を伴ったものに変わりました。

また、以前取材した八女市の記事では、足利尊氏(北朝)と対立をしていた後醍醐天皇(南朝)の足跡もあります。九州内も北朝か南朝につくのか大いに揺れていました。
記事:
https://thelocality.net/gojyoukemihatamatsuri/

歴史を調べるには、いろんな視点を持ち合わせることも大事だと感じました。

※写真は全て筆者撮影

情報

足利尊氏坐禅岩
曹洞宗 妙見山 増福院内 
〒811−3411 福岡県宗像市山田700
TEL:0940−33−8287

情報提供元:ローカリティ!

久田一彰
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カテゴリ
[地域情報] 旅行・レジャー

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