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「危ないからやめよう」でいいのか?とある遊び場が残したもの【埼玉県朝霞市】

ローカリティ!

「泥団子を作って投げたよ。ひとみさんに泥を投げるのが楽しかった!」

小学校低学年とおぼしき男の子たちが、躊躇(ちゅうちょ)なく言ってのける。目は、らんらんと輝いていた。

大人の”ひとみさん”は、「楽しかったね~!」と子どもたちの輪の中で笑っている。

「掘った穴に水を入れて、泥のお風呂みたいにするんです。首元まで浸かっちゃって」

今日もお子さんを連れて来たというお母さんが話してくれた。

「喧嘩(けんか)もたくさんしますよ。手が出ちゃうこともあるんですけど、ここに来てるお母さんたち、わりと『大丈夫だよ』って感じなんで」

子ども同士のやりとりも、泥だらけの遊びも、時にぶつかる関係も、そのまま受け止められていく。

この場の空気は、どこから生まれているのか。

NPO法人あさかプレーパーク代表・野上眞由美(のがみまゆみ)さんと事務局の立園紀子(たてぞののりこ)さんに話を聞いた。

野上眞由美さん 筆者撮影
立園紀子さん 筆者撮影
外遊びが減る時代に あさかプレーパークの会が残そうとしたもの

野上:「今から20〜30年くらい前なんですけど、世間の意識が防犯に向きだして。刃物を使って遊ぶのは危ないとか。焼き芋を焼くこととか、火を使うのを教えてくれていた先生が、火を使用するのは危険だからやめようとか、そういう空気になっていったんです」

そして、ブランコやジャングルジムといった遊具も、危ないとされれば少しずつ姿を消していったという。

野上:「なんか変わっていくなぁと。全部無くしていけばいいのかって、そういう話ではないと思うんです」

世間の意識が変化していく中で、野上さんは世田谷にあるプレーパークを知る。

自身の子どもが幼稚園児の頃、一緒に何度か足を運ぶようになった。足を運んだ先には、手作りの小屋や秘密基地のような建物が並んでいる。

子どもたちが廃材を使って、思い思いに色々なものを作っている場所だった。刃物や火、危ないとされる遊びもそのまま残っている。

野上:「木に登ったりとか、すっごい高いところから飛び降りたりとか、『自分を試す』こともしている子どもたちをいっぱい見かけたんですよ。あ、いいなと思って。とりあえずそういう場を、朝霞に作ってみようかなって思ったんです」

子どもの幼稚園の同じ思いを共有する仲間、市内の児童館ボランティアで知り合った東洋大学の学生に声をかけながら、少しずつ世田谷のプレーパークのように、朝霞でのプレーパークを形作っていった。

そして今、事務局としてあさかプレーパークの会を支える立園さんは、現在の子どもたちを取り巻く環境について、こう話す。

立園:「今は、周りからプレゼンしてもらうような遊びが多いじゃないですか。”これをやると楽しいよ” “次はこうしてみよう”って」

スマホゲームのように、次に何をすればいいのかが、あらかじめ決められている遊びは少なくない。

立園:「子どもたちは、こうやったらどうかと伝えてあげると、すごく楽しんで動くんだけれど、ある意味おせっかいな気がするんです。

自分で遊びを考えて遊べなくなっている子どもたちが多いし、遊びだけではなくて何かを決めるときにも、自分で決断がなかなかできない子どもが増えていることを感じているんです」

立園さんの話を受けて、野上さんもこんな場面を挙げる。

野上:「本来は子どもたちは高いところに登って、飛び降りるのも自由だし、自分がそこに登って怖いなと思ったら、それを自分で自制して止めるのも自由。だけど、大人たちが(そこに口を出して)、自分の子は元気があるし飛び降りることも平気だから、降りておいでって言っちゃうんですよ」

まだ気持ちの整理ができていないまま飛び降り、怪我をしてしまうこともある。

自分で行動して、自分に返ってきて、経験値ができる。野上さんはその『おいしい部分』が今の子どもたちから奪われていると感じていた。

だから、このような場所を作ろうとした。
しかし、その時周囲の理解があったわけではなかった。 

試行錯誤と折衝を経て続いてきた あさかプレーパークの会の歩み

野上:「最初は市役所にも、”なぜ必要なんですか”について、何度も話しに行きました。1年に3日とか5日だけの開催なんだけど、何度も説明しに行って」

野上さんは震災の話もしたという。

野上:「ここで震災が起きたらどうするのって。電気も使えない、水も止まる。ライフラインが無くなったよ。そういう時に、みんなどうしてるの?

子どもたちがプレーパークで、煙の恐怖とか、水の怖さとかを知っていくことで、危ないことを回避できる部分もあるんじゃないかって、そういう話もしてました」

それでも行政との話し合いでは、まずはダメですよという前提があったという。

野上:「だから、ゲリラ的にやったときもありましたよ。やっちゃえーって」

当時は、子どもを狙った事件が報じられることも増えていた頃だった。

夕焼けチャイムが鳴ったら帰る。鬱蒼(うっそう)とした森の中で遊ぶことに、不安の声が向けられることもあったという。

野上:「なんか変な人たちが集まっているからといって、警察を呼ばれたりしたこともあったかな。よく分からないものに関しては、みんな怖いのかな」

立園:「今、小さい子がちょっと外で遊んでて怖いんだけど、と言われて。本当に危ないことは別ですよね。 外部の警察や行政を通さずにまず直接話してもらえたらいいんですけどね」

そして、こんな言葉も聞けた。

立園:「“なんであそこだけ許されてるの?”っていう感覚で通報されることもあったと思うんです」

野上:「通報してくる人たちも、たぶん子どもの頃は焼き芋したり、火を使って遊んだりしてたと思うんですよね。でも今は、“禁止されてるのに、なんでやってるんだ”ってなる」

それでも、子どもたちは泥だらけになりながら遊び続けていた。

野上:「こんな風に子どもたちが遊んでいて、楽しそうだったんだよねと報告をしているうちに、当時関わっていた人の中から、陰ながら応援していますって言ってくれた人がいて。市役所の課長さんとか。陰じゃダメなのよって言ったんです。陰じゃダメ、前出てきて欲しいのよって」

活動を続けるうちに、少しずつ風向きも変わっていった。

野上:「やっと、私たち市役所の人間が見てるので、目の前でやってくださいと言われて変わっていって。そして今は委託という形で契約ができるようになったんですね。そして、毎月プレーパークを開催できるようになりました。続けていけば、まあ夢は叶(かな)うかな」

“やってみたい”を繰り返す子どもたち

立園:「火ばさみを使ってお兄ちゃんが、木を挟(はさ)んで火へくべる。お兄ちゃんの真似をしたいけどまだ火には行かない。でも、何かを挟めることは知って、バケツに石が入っているのを、こう何回も繰り返して挟んで取ろうとするんです。 挟むってことも分かっていない状態でですね」

夢中になって20回も30回も繰り返すとのこと。

立園:「何かのはずみで挟めるとこう、輝かしい顔で、ニコニコ笑って自慢気に見せてくれるんですね」

立園さんは他にも見ているという場面を挙げてくれた。

立園:「小学生なんかがマッチ棒を横に何本もずらーっと並べて。何をしているのかなと思って聞くと、端のマッチ棒から火をつけていくと。端から端のマッチ棒まで全て連続で燃やそうって言うんです。でもこうやって1本燃えると、そこでもう消えちゃうの。でも、それをずっとやっていて、そのうちに燃えるものを間に置いたりして、そこでやっとたどり着いた!みたいな。半日かかって火が全部についたよ!って言うんです。周りにすごいと認めてもらいたいっていう、子どもたちの欲求はすごいなぁって」

最初は親のそばで離れなかった子が、いつの間にか輪の中に混じっていることもあるという。

「だんだん私の近くから離れて行って。今では、初対面の子たちの中に混じって遊んでいます」

名前を呼んでもらえる場所

「子どもの名前じゃなくて、自分の名前を聞いてもらえたんですよね」

引っ越してきたばかりで、知り合いもいなかったという母親が話す。最初はお母さんたちの輪に入れず、遠くから様子を見ていた。

「でも、プレーリーダー(ひとみ)さんが、“先月も来てくれたよね”って声をかけてくれて。覚えてくれていたのが、すごく嬉しかったんです」

親にとっても居場所になっていた。

「ここに来れば、大人としゃべれるって思って来てます」

別の母親も話す。

「来る前は、結構うつうつしてた時もありました。子育てに悩んだりもして。でも、ここに来れば相談できるし、子どもたちも楽しそうで。“来てよかったな”って思えるんです」

プレーパークで変わったのは、子どもだけではない。

「前は喧嘩すると、すぐ“ごめんなさい”って言ってたんです。でも、ここでは“なんでそうなったのかな”って、子ども同士でやり取りするのを見守ることを教えてもらった気がします」

自由になって遊ぶ子どもたちを見ながら、親たちも、“ちゃんとしなきゃ”から離れていく。

プレーリーダーである大人の“ひとみさん”は 「楽しかったね〜!」 と子どもたちと一緒に笑っている。

※写真はすべて2026年4月7日筆者撮影

情報提供元:ローカリティ!

足立尚典
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