サウナ後の肌つやはなぜ生まれる?血流と発汗から考える美容効果
サウナ後に肌がきれいに見えるのはなぜ?
サウナから出て鏡を見ると、頬がほんのり赤くなり、いつもより肌につやがあるように感じることがあります。「汗をたくさんかいたから肌が潤った」と思いたくなりますが、実際にはもう少し複雑です。サウナの高温環境に入ると、身体は上がった体温を逃がすために皮膚の血管を広げ、皮膚への血流を増やします。受動的に身体を温める研究では、強い熱負荷によって皮膚血流が安静時より4.5〜7L/分ほど増える場合があると報告されています。ただし、これは実験条件下で観察された最大規模の変化を含む数字で、通常のサウナ利用で誰もが同じ状態になるという意味ではありません。
皮膚へ流れる血液が増えれば、顔には赤みが生まれ、血色がよく見えます。そこに汗が重なると、肌表面に薄い水分の膜ができ、光を反射しやすくなります。つまり、サウナ直後に感じる「肌が明るい」「つやが出た」という変化は、短時間で肌質そのものが変わったというより、血流による色の変化と、汗による光沢が組み合わさった結果と考えられます。私たちは肌の状態を、色、明るさ、なめらかさ、光沢といった見た目から判断します。そのため、血色がよくなり表面に光沢が生まれるだけでも、「肌の調子がいい」と感じやすいのでしょう。
汗で濡れた肌と潤った肌は同じではない
サウナ美容で混同しやすいのが、「汗をかくこと」と「肌が潤うこと」です。汗をかいた直後は肌表面がしっとりするので、保湿されたように感じるでしょう。しかし、肌表面に水分が付着している状態と、角層が水分を抱えて乾燥から肌を守れる状態は別です。汗腺の働きに関する研究レビューでも、発汗が皮膚の水分保持にどの程度影響するのかについては、まだ研究が必要とされています。汗を大量に出せば出すほど保湿力が高まる、という単純な関係ではないといえます。
一方で、サウナそのものが肌に悪いと決めつける必要もありません。2008年に発表された研究では、定期的にサウナを利用する人について、皮膚表面のpHや角層の水分保持能力などに好ましい傾向が確認されました。研究者は、継続的なサウナ習慣が皮膚の生理機能に良い影響を与える可能性を示しています。ただし、限られた規模の研究であり、「サウナに通えば美肌になる」と断定できる結果ではありません。サウナ直後に見えるつやと、数週間、数カ月単位で変化する肌の健康状態は分けて考えたほうが自然でしょう。
「汗でデトックス」より血流を見る
サウナと美容を結びつける話では、「汗と一緒に老廃物を出せる」「毛穴からデトックスできる」といった表現も見かけます。しかし、肌つやの理由を考えるなら、汗の量そのものより、身体が熱に対応する仕組みに注目したほうが理解しやすくなります。身体は体温が上がると血管を広げ、皮膚への血流を増やし、汗の蒸発によって熱を逃がそうとします。つまり発汗は美容のために起きている現象ではなく、体温を一定に保つための反応です。サウナ研究をまとめた2018年のレビューでは40研究、計3,855人が検討されていますが、多くは40人未満の小規模研究で、健康効果についても研究の質や条件に差があることが指摘されています。
ここまで整理すると、サウナ後の肌つやを「肌が生まれ変わった証拠」と見るのは少し飛躍があります。熱で血流が増えると顔色が明るくなり、汗で表面が濡れると光を反射しやすくなる。その二つが同じタイミングで起きるため、鏡の中では肌が急に整ったように見えるのでしょう。反対に、サウナから出て体温が下がり、血流が普段の状態へ近づいて汗が乾けば、その見た目も変わっていくと考えられます。「きれいに見える」と「肌質が改善した」を切り分けるだけでも、サウナ美容への見方はかなり変わるのではないでしょうか。
美容を意識するならサウナ後の過ごし方まで
美容を意識してサウナを楽しむなら、汗をたくさん出すことを目標にするより、その後の肌を乱暴に扱わないほうが現実的でしょう。汗を流そうとして熱いシャワーを長時間浴びたり、洗顔料で何度も洗ったり、タオルで強くこすったりすれば、肌への刺激が増えてしまいます。汗をやさしく流したあとは水分を押さえるように拭き、普段使っている化粧水や乳液、クリームなどで肌を整える程度で十分でしょう。特に乾燥しやすい人は、サウナ直後のつやを「潤っている証拠」と思い込み、保湿を省略しないほうが安心です。
身体への水分補給も同じくらい意識したいところです。サウナでは体温調節のために発汗が続くため、長時間我慢すれば美容効果が高まるわけではありません。サウナ研究全体でも脱水は注意すべき点として挙げられており、無理な長時間利用より、自分の体調に合わせた入り方が求められます。 サウナ後のつややかな肌には、血流がつくる血色と、汗がつくる光沢という意外にシンプルな仕組みがあります。その一時的な変化を楽しみつつ、水分補給と肌の保湿まで丁寧に行う。汗の量を美肌の尺度にしないことが、サウナと美容を無理なく付き合わせていく方法といえそうです。
- カテゴリ
- 美容・ファッション
