東海道唯一の海路「七里の渡し」。広重が描いた面影を今も残す、熱田神宮そばの歴史散歩【愛知県名古屋市】

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名古屋市熱田区の熱田神宮の近くの堀川沿いに、「宮の渡し公園」という公園があります。ここはかつて東海道随一の宿場町「宮宿(熱田宿)」と、現在の桑名市「桑名宿」を結ぶ東海道唯一の海路「七里の渡し」の船着場があった場所です。浮世絵で繰り返し描かれた「熱田湊(みなと)」の面影を残す、とても気持ちのいい場所でした。

「七里の渡し」とは?
歌川広重が描いた「七里の渡し」(東海道五十三次「隷書東海道」宮)

「東海道五十三次」は、江戸時代に整備された五街道の一つの東海道(江戸の日本橋から京都の三条大橋まで)にある53の宿場を指します。中でも41番目の「宮宿」は東海道では最大の宿場で、1843(天保14)年には本陣2軒に脇本陣1軒、旅籠屋は250軒弱が軒を連ね、人口は1万人以上にものぼっていたそうです。

宮宿は浮世絵の東海道五十三次シリーズの一つとして盛んに描かれ、葛飾北斎や歌川広重などによる作品が多数残されています。

宮宿は熱田神宮の門前町でもあり、港町という顔も持ち、大変繁栄していました。人々が集まり伊勢湾に面した交通の要所でもある熱田には、室町時代にはすでに市場があったとされ、活発な経済活動の場でもありました。

この付近には西と東の「浜御殿(街道を往来する大名をもてなす施設)」があり、名古屋城本丸に匹敵するほどの壮麗なものだったそうです(現存せず)。

ここのすぐ近くにある堀川沿いの大瀬子公園付近には、かつて魚市場がありました(「熱田魚問屋モニュメント」というものがあることを取材後に知りました)。江戸時代になると尾張藩では、この付近の魚問屋でしか魚の供給を認めず、熱田の魚市場は非常に発展していきました。戦後、ここから少し北の日比野に市中央卸売市場が完成するまでの約400年間、大瀬子公園付近は活気に満ちた市場だったそうです。

七里の渡しは宮宿と桑名宿を結ぶ東海道唯一の海路で、その距離が七里(27.5km)であったことから、そう名付けられたそうです。この海上ルートは、東海道の宿駅制度が設けられる以前、すでに鎌倉・室町時代から利用されており、古くから東西を結ぶ重要な交通インフラでした。

七里の渡しは天候の悪化による海難事故がしばしば発生する、東海道の難所の一つでした。悪天候のために渡航困難な場合、また船旅を好まない人、船旅に弱い人たちのために、脇街道としての佐屋街道を通る陸路ルートが用意されていました。こちらは女性や子どもが多く通ったため「姫街道」とも呼ばれました。

しかし陸路は一日かかる遠回りであったので、4時間から6時間で着く海路が重宝されました。現在の伊勢湾岸自動車道は、江戸時代の七里の渡しに近いルートを通過しているそうです。

江戸時代初期までは、この辺りは海岸線でした。その後徐々に干拓され、新田開発が進んでいきました。明治時代になるとこの付近は埋め立てられ、南に名古屋港が作られました。現在は名古屋城を海と結ぶ運河である堀川とつながっています。

この写真の奥の方が名古屋港です。東海道新幹線の線路も通っています。ちょっと分かりにくいのですが、ちょうど新幹線が写っていました。

ここは堀川と新堀川が合流する地点で、私は新堀川沿いを自転車に乗って宮の渡し公園まで行きました。

宮の渡し公園

かつて七里の渡しの船着場があった付近は、現在は「宮の渡し公園」として整備されています。

1955(昭和30)年に復元された常夜灯

常夜灯や鐘楼(しょうろう)が復元され、水辺の風景を眺めながら歴史を感じられる場所となっています。

時の鐘・鐘楼

鐘楼は戦災で焼失しましたが、1983(昭和58)年に復元されました。夜間はライトアップされるそうです。

ここが船着場跡です。かつてここから多くの人が舟に乗って行ったのですね。現在は海ではありませんが、この先に名古屋港があるので海の空気が感じられます。水辺の開放感のある空間はとてもリラックスできますよ。

松尾芭蕉もここから舟に乗ったそうです。

シーボルトもここに来たそうです。

桟橋もありますが、普段は入ることはできません。貸切クルーズの乗船場となっています。広々とした空間が広がっていて、とても絵になる風景です。

鳥がたくさんいたのでバードウォッチングにも良さそうです。

この辺には今も船がたくさん停泊しています。

旧旅籠屋も残っています!
旧旅籠屋 伊勢久

宮の渡し公園の向かいには、かつての旅籠屋が残っていました。残念ながら営業時間外でしたが、現在この建物は「喫茶 宮町」というとても素敵なカフェになっています。この辺は住宅街であまり飲食店は多くないので、宮の渡し公園に行った時の休憩にぴったりです。

旧熱田荘

もう一軒旅籠屋が残っていました。こちらは現在高齢者福祉施設として使われています。旧伊勢久とともに、市の有形文化財に指定されています。残っているのは2軒だけでしたが、最盛期はこのような旅籠屋が250軒近くあったのかと思うと、当時のにぎわいの音が聞こえてくるようです。

おすすめ散策コース

宮の渡し公園は、熱田神宮に参拝した際に足を伸ばすのがおすすめです。

熱田神宮

1900年の歴史を誇る熱田神宮は、「熱田さん」の名で古くから崇敬を集める名社です。三種の神器のひとつ・草薙神剣を神体とする天照大神を祀っていることから、パワースポットとしても人気を集めています。名古屋観光では外せないスポットです。

熱田神宮は広大なのでここだけで帰ってしまう方も多いのですが、ぜひ宮の渡し公園にも寄って行ってください。東海道の「熱田さん参り」気分が盛り上がります。熱田神宮の南門からは徒歩10分ほどです。この途中にひつまぶしで有名な「あつた蓬莱軒」もあります。ありとあらゆる紙を揃えた専門店「紙の温度」もおすすめです。

現在の七里の渡し跡周辺はとても静かで、海を感じることができるとても素敵な場所なのですが、かつての宿場町のにぎわいはありません。風景は最高ですし、大観光スポットの熱田神宮の門前町として復活できそうなポテンシャルは十分あるのに、ちょっともったいないと思います。

しかし地元の「熱田湊まちづくり協議会」がこのエリアの整備構想を発表しているので、これが実現されれば熱田神宮とリンクした魅力的な観光スポットになりそうです。期待したいです。

情報

【宮の渡し公園】

住所:愛知県名古屋市熱田区内田町

アクセス:地下鉄名城線「熱田神宮伝馬町」駅下車。徒歩8分

電話番号:052-881-7017

公衆トイレ・駐車場あり

情報提供元:ローカリティ!

うえだ あさこ
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カテゴリ
[地域情報] 旅行・レジャー

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