盆踊りが55年ぶりに復活、商店主らが輪の中心に。新旧が交わるレトロ商店街の夏祭り【愛知県名古屋市】
2026年8月4、5日の2日間、名古屋市北区の柳原通商店街で夏祭りが開催され、55年ぶりに盆踊りが復活した。柳原通商店街は、日本で2番目に古い商店街ともいわれる。この夏祭りで見えたのは、長年受け継がれてきた地域の営みに新たな景色が重なる姿だった。
夕暮れ、いつもの通りが祭りの場に
訪れたのは祭り2日目の午後5時半過ぎ。南北およそ600メートルの商店街は歩行者天国となり、両側には数多くの屋台が並ぶ。
冷凍フルーツ缶、冷やしきゅうり、わたあめ、サメ釣り、かき氷。夏祭りらしい定番の屋台と、今どきの出店が混ざり合い、通りを歩くだけでも楽しい。まだ空には明るさが残る時間帯だったが、すでに家族連れや学生、友人同士のグループが行き交い、店先には笑い声が広がっていた。
午後6時になると、北側の特設ステージでは地元プロバスケチームの公式チアリーダーたちのパフォーマンスが始まった。立ち止まって見ていると、隣に来た高齢の女性がぼそっとつぶやいた。
「だいぶ人が増えてきたわ。新しいことやっとるもんで」
1人でいた私に話しかけたのか、独り言なのかは分からなかったが、そのまま聞き流すのも悪い気がして、「このあたりにお住まいなんですか」と尋ねてみた。
「すぐそこよ」。女性は商店街へ目を向けた。今年は商店街の5カ所で音楽ライブや大道芸などが行われ、ところどころで人だかりができていた。
人の流れの、その先に
日が落ちるにつれ、人の数はさらに増えていく。歩行者天国だからこそ立てる、車道の真ん中。そこから南へ視線を向けると、一直線の道路の先に中部電力 MIRAI TOWER(ミライタワー)が見える。
普段は車が行き交う生活道路なので、ゆっくり立ち止まって景色を見ることはできない。しかし祭りの日だけは違う。人の流れの向こうにタワーが立ち、両脇には商店街の灯りが続く。歩いていると、自然と知った顔に出会う。
「あ、久しぶり」。そんな短い会話が何度も交わされていた。
55年ぶりに帰ってきた盆踊り
今年の夏祭りで最も印象的だったのは、55年ぶりに復活した盆踊りだ。
最盛期には120軒以上が軒を連ね、にぎわいを見せていた柳原通商店街。しかし、地下鉄の開通による人の流れの変化や商店主の高齢化など、時代とともにさまざまな課題を抱えるようになった。
関係者によると商店街の中では、15年ほど前から「盆踊りを復活させたい」という声が何度か上がっていたという。しかし、人手不足などもあり、なかなか実現には至らなかった。
それがなぜ、今だったのか。
近年は、レトロな商店街の雰囲気にひかれて新たに店を構える人が現れ、外部との連携も活発になっている。2025(令和7)年には近くに愛知国際アリーナ(IGアリーナ)も開業した。
「いろいろなタイミングがそろい、必然的に開催の流れが整ったのだと思います」
商店街の関係者は、今回の復活についてそう振り返る。そして目指したのは、かつての盆踊りをそのまま再現することではなかった。
「新しき思いもあり、古き思いもある」
午後8時を過ぎるころ、櫓(やぐら)の上に、浴衣姿の踊り手や普段着の商店街店主たちが立った。
最初に流れてきたのは、今回新たに制作されたオリジナル曲「柳原音頭」だ。作詞・作曲は柳原通商店街に縁のあるミュージシャンが手がけた。親しみやすいメロディと、地元民なら思わず情景を思い浮かべる、ローカル色の濃い歌詞が特徴だ。振り付けを担当したのは、商店街でダンススタジオを営む店主。
「地域のみなさんが覚えやすく、なじみやすいよう、『ダンス×盆踊り』をテーマにHIPHOPの要素を取り入れた」のだという。昔ながらの盆踊りの動きに、現代的な要素が重なる。
柳原音頭に続いて流れるのは「名古屋ばやし」や「河内おとこ節」「APT.」「ジャンボリミッキー」「スターマイン」「ダンシング・ヒーロー」などバラエティ豊かなラインアップ。盆踊りの定番曲やヒット曲に合わせて、大人も子どもも同じ動きを楽しむうちに、会場には一体感が生まれていった。
最初は輪の外から眺めていた人も、少しずつ輪の中へ入っていく。
「新しき思いもあり、古き思いもある」
商店街の関係者がそう表現する今回の夏祭り。55年ぶりに戻ってきた盆踊りは、昔の祭りを懐かしむだけのものではない。古くからこの街にあるものと、新しく加わった人や文化が、一つの輪の中で交わっている。
また来年も、この通りで
祭りの終盤になっても、人波はなかなか途切れない。
「だいぶ人が増えてきたわ。新しいことやっとるもんで」
夕暮れどきに出会った女性の言葉を思い出した。
長い歴史をもつ柳原通商店街。時代とともに街の姿は変わってきたが、この夏、55年ぶりに盆踊りが帰ってきた。昔からこの街を知る人も、新しくこの街に関わる人も、子どもも大人も、ともに祭りを楽しんでいた。その光景は、昔に戻るのではなく、これまで受け継がれてきたものの上に、新しい景色が生まれているように見えた。
祭りが終われば、通りはまた日常に戻る。それでも、この夜ここにできた輪は、きっと街の中に残っていく。
また来年も、この通りで。
※写真は筆者が2026年8月5日に撮影したものです。(過去の盆踊りの画像は、柳原通商店街振興組合よりご提供いただきました。)
情報
柳原通商店街夏祭り
日時:2026年8月4日・5日
会場:名古屋市北区柳原
毎年8月上旬に開催されている。
柳原通商店街振興組合インスタグラム:
https://www.instagram.com/yanagihara101/
情報提供元:ローカリティ!
その魅力を共に愛する仲間を募れる住民参加型・双方向の新しいニュースメディアを目指しています。
- カテゴリ
- [地域情報] 旅行・レジャー