子どもにスマホを持たせる「適切な年齢」を親が間違え続ける理由

「みんな持っているから」という判断の危うさ

「まだ早いかも」と思いながら、気づけば購入していた——子どものスマホデビューにはそういう経緯が多いものです。きっかけは「友だちが全員持ち始めたから」だったり、「中学に入るしそろそろかな」だったりします。明確な理由があるようで、よく考えると「周りに合わせた」だけのことも珍しくありません。

NTTドコモのモバイル社会研究所の調査(2025年3月)によると、日本の小中学生がスマホを持ち始める年齢の全国平均は10.3歳。2025年の別の調査では、回答者の56%が小学生のうちに持ち始めたと答えています。「小学生で持つのが主流」という時代ではあるものの、「みんなが持っている」と「うちの子に持たせていい」はまったく別の話です。子どもが「欲しい」と言う理由も、学年が上がるほど「友だちが持ち始めたから」が増えていきます。子どもの要求に押し切られる形で渡しているケースが多く、親が主体的に「今が適切だ」と判断できているケースは、思いのほか少ないのが実情といえます。

 

「使いすぎが心配」は正しい感覚だった

「持たせたら使いすぎそう」という不安は、脳科学の研究によってしっかり裏付けられています。東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授は、仙台市内の公立小中学校に通う7万人以上を対象に学力と生活習慣の関係を調べ、「スマホが原因で学力が下がった。これほどはっきりしたエビデンスはない」と明言しています。さらに約220人の子どもをMRIで3年間追跡したところ、スマホをほぼ毎日使う子どもは、認知機能に関わる大脳皮質と大脳白質の体積増加がほぼゼロだったことが判明しました。ネット利用が少ない子どもでは同じ期間に約50ccの増加があったのと比べると、差は明らかです。

「ちゃんと勉強もしているから大丈夫」という方にも気になるデータがあります。スマホを1日1時間以上使う子どもは、勉強時間が同じでも1時間未満の子どもより、国語・算数・理科・社会の4教科すべてで成績が低い傾向があるのです。スマホが「勉強の邪魔をする」だけでなく、脳の発達そのものを鈍らせている可能性が示されています。とりわけ9歳から18歳は、思考・判断・感情のコントロールを担う前頭前野が急速に育つ時期です。スマホを持たせる年齢は、この大切な発達期とちょうど重なっています。

 

「緊急連絡用」のはずが、1日5時間の娯楽端末に

子どもにスマホを持たせる理由として最も多いのは「緊急時の連絡」と「居場所の確認」で、小学校低学年の保護者ではこの2つが約半数を占めます。安全のことを思ってのことですから、その気持ちは当然です。ただ、「連絡さえできれば安心」という発想だけで渡してしまうと、その後の使われ方に対して後手に回ることになりがちです。

こども家庭庁の2024年度調査によると、10〜17歳の子どもの1日あたりの平均ネット利用時間は5時間2分で、10歳以上の小学生でも3時間44分に達しています。「緊急用」として渡したはずのスマホが、いつの間にか長時間の娯楽端末になっている家庭は少なくありません。さらに、フィルタリング機能を実際に使っている10〜17歳の保護者は45.8%にとどまり、半数以上が設定なしで渡している実態もあります。「ルールは決めてある」と思っていても、保護者はそう認識しているのに子どもは覚えていない——こうした認識のズレも広がっており、スマホの管理は「できているつもり」になりやすいものです。

 

「何歳から」より先に確認したい2つのこと

「うちは何歳から持たせれば正解か」という問いに、一律の答えはありません。子どもの成熟度も家庭の状況もそれぞれ違うからです。それよりも先に確認したいのが、「子ども自身の判断力」と「親自身の対応力」の2点です。個人情報の流出・見知らぬ人との接触・課金トラブルといったリスクを子どもが理解し、自分で判断できるかどうか。そして親自身が、子どもが使うSNSやアプリの危険を把握していて、何かあったときに具体的なアドバイスができる状態にあるかどうか。この2つが整っていない段階でスマホを渡すのは、乗り方を教えずに交通量の多い道へ自転車で送り出すようなものかもしれません。

スマホを持っている小中学生の96%が親子でルールを決めているというデータがあります。ルールをつくること自体はよいことですが、「決めた」と「守られている」の間には思った以上の距離があります。「何歳になったら渡す」ではなく、「どんな状態になったら渡す」という視点で考えてみると、子どもにとっての本当のタイミングが見えてくるでしょう。

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