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iDeCoの加入年齢はなぜ引き上げられた?長く働く時代に変わる老後のマネー戦略

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、長く「現役世代が老後のために積み立てる制度」として知られてきました。そのイメージを変えたのが、加入できる年齢の拡大です。2022年5月の制度改正では、会社員や公務員などの国民年金第2号被保険者が原則65歳未満まで加入できるようになり、それまでの原則60歳未満という区切りが見直されました。

2026年12月1日には、制度がもう一段変わります。一定の条件を満たす60歳以上70歳未満の人にも加入対象が広がり、掛金の上限も引き上げられます。背景にあるのは、制度を使いやすくするという理由だけではありません。60歳を過ぎても働くことが珍しくなくなり、老後のお金を準備する期間そのものが長くなっていることが関係しています。

 

60歳を過ぎても働く時代にiDeCoも変わった

かつては60歳で定年を迎え、その後は退職金と年金を中心に生活する人生設計が一般的でした。しかし、現在は再雇用や継続雇用を利用し、60代になっても仕事を続ける人が増えています。総務省の「労働力調査」によると、2025年の就業率は60~64歳で約75%、65~69歳でも約54%に達しています。60代前半では4人に3人ほどが働いている計算です。収入を得る期間が長くなれば、「老後資金を積み立てるのは60歳まで」という従来の仕組みとのずれも生まれます。

こうした変化のなか、2022年5月から会社員や公務員などの国民年金第2号被保険者は原則65歳未満までiDeCoに加入できるようになりました。2026年12月からは対象が一段と広がり、iDeCoの加入者や運用指図者だった人、企業年金から資産を移せる人などは、一定の条件を満たせば60歳以上70歳未満でも加入や掛金の継続が可能になります。ただし、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないことなどの条件があり、すべての人が70歳まで利用できるわけではありません。それでも、50代や60代から老後資金づくりを考える人にとって、選択肢が広がる改正といえます。

 

月2万3,000円から6万2,000円へ、掛金上限も拡大

2026年12月の改正では、加入できる年齢だけでなく、毎月積み立てられる金額も変わります。企業年金のない会社員の場合、現在のiDeCoの掛金上限は月額2万3,000円ですが、改正後は月額6万2,000円となります。年間では27万6,000円から74万4,000円となり、最大で46万8,000円増える計算です。企業年金がある会社員などは企業年金と合わせて月額6万2,000円の共通枠となるため、勤務先の制度によってiDeCoへ拠出できる金額は変わります。自営業者やフリーランスなどについても、iDeCoと国民年金基金などを合わせた上限が月額6万8,000円から7万5,000円へ引き上げられます。

iDeCoを考えるうえで見逃せないのが税金です。掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税と住民税を納めている人なら税負担を抑えられます。所得税率10%、住民税率10%として単純計算すると、年間24万円を拠出した場合の負担軽減額は概算で約4万8,000円、年間36万円なら約7万2,000円です。実際の金額は所得や各種控除などによって変わります。節税できるからと上限まで積み立てればよいとも限りません。60代になると住宅ローン、親の介護、自分の医療費などが重なる可能性もあるため、手元に残すお金とのバランスを考える必要があります。

 

50代から始めるならNISAとの使い分けも考えたい

「50代からiDeCoを始めても遅い」と感じる人もいるかもしれません。しかし、10年程度でも積み立てを続ければ、ある程度まとまった資金になります。55歳から毎月2万円を10年間積み立てると元本だけで240万円、月3万円なら360万円です。運用によって資産が増える可能性はありますが、投資信託などの商品では価格が下がることもあります。積立期間が長くなったからといって、無理にリスクを取る必要はありません。

老後資金を準備するなら、NISAとの違いも知っておきたいところです。NISAは投資から得た利益が非課税になり、必要になれば保有商品を売却して現金化できます。一方、iDeCoは掛金を所得から控除できるメリットがあるものの、原則として一定年齢まで自由に引き出せません。老後まで使わないと決められるお金はiDeCoへ、数年後に住宅費や生活費などで使う可能性があるお金は預貯金やNISAへ回すといった分け方もあります。どちらが優れているかではなく、お金を使う時期によって使い分けるほうが家計にはなじみやすいでしょう。

 

「60歳で資産形成は終了」という考え方が変わる

iDeCoの利用者は増えています。国民年金基金連合会が2026年10月1日に公表したデータによると、2026年8月時点の現存加入者数は約406.2万人、新規加入者は同月だけで約3.5万人でした。一方、厚生労働省が2026年4月に示した数字では、iDeCoの加入率は約5%、認知率は約60%です。制度の名前を知っていても、実際に利用している人はまだ限られています。途中で自由に引き出せないことや、仕組みが分かりにくいと感じる人がいることも背景にあると思われます。

2022年にはiDeCoに加入できる年齢が原則60歳未満から65歳未満へ広がり、2026年12月には一定の条件を満たす60歳以上70歳未満の人にも対象が拡大されます。この流れを見ると、「60歳になったら資産形成も終わり」という考え方は現実の働き方と合わなくなってきました。
ただ、加入できる期間が延びたからといって、掛金を増やすことだけが選択肢ではありません。公的年金の見込額、退職金、預貯金、NISAなどを一度並べ、老後まで使わなくても生活に困らない金額をiDeCoに回す。その視点を持つことで、制度改正を自分の老後資金について考え直すきっかけにできるのではないでしょうか。

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