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ESGだけでは語れない「水投資」、社会インフラ更新に生まれる巨大な需要

水は、私たちの暮らしに欠かせない社会インフラです。蛇口をひねれば水が出る日本では意識する機会が少ないものの、世界に目を向けると事情は大きく異なります。しかも、水の問題は単なる「水不足」ではありません。水道管の老朽化、浄水設備の整備、排水処理、漏水対策、水の再利用など、生活や産業を支える仕組みそのものに多額の投資が求められています。

こうした状況を背景に、投資の世界でも「水」がひとつのテーマとして扱われてきました。ただし、水不足が深刻になれば、そのまま水関連企業が成長するわけではありません。水問題への対策として政府や自治体、企業が設備投資を行い、それが水関連企業の受注や売上につながって初めてビジネスになります。水投資を見る際には、このお金の流れを理解しておく必要があるでしょう。

 

世界の水問題は「社会インフラ不足」の問題でもある

WHOとユニセフの共同モニタリングによると、安全に管理された飲料水を利用できる世界人口の割合は、2015年の68%から2024年には74%まで上昇しました。それでも約21億人、世界のおよそ4人に1人が安全に管理された飲料水を利用できていません。そのうち約1億600万人は、川や湖などの地表水を直接利用しています。衛生設備についても、2024年時点で約34億人が安全に管理されたサービスを利用できていない状況です。

ここで見えてくるのは、水そのものが地球からなくなるという単純な問題ではありません。必要な場所へ安全な水を届け、使った水を処理し、再び環境へ戻す社会インフラが十分ではないという問題です。世界銀行は、SDGsが掲げる安全な水と衛生環境に関する目標を達成するため、年間約1,140億ドルの資本投資が必要になると試算しています。これは水道や衛生設備を中心とした推計であり、水資源管理に必要なすべての費用を含む数字ではありません。水問題の解決には長期にわたる設備投資が必要であり、そこに水関連ビジネスが生まれる余地があると考えられます。

 

水不足が企業の売上に変わるまでには段階がある

水関連投資を理解するとき、「世界で水不足が進んでいるから関連企業が成長する」と考えるだけでは不十分でしょう。水道管が古くなれば交換工事が必要になり、漏水が多ければ検知システムや新しい配管が求められます。工場で使用する水を減らすなら、ろ過装置や排水再利用設備への投資が発生します。こうした課題に対して政府や自治体、企業が予算を付けることで発注が生まれ、その資金が設備メーカーや水処理会社などの売上へつながります。

投資対象も水道会社だけではありません。水を運ぶポンプや配管を製造する企業、浄水・排水処理設備を提供する企業、水質を測定する機器メーカー、漏水を検知するセンサーやスマートメーターを開発する企業など、関連する業種は幅広く存在します。水を新しく確保するだけでなく、「すでにある水を無駄なく使う」技術にも需要があります。人口増加や都市化だけではなく、設備の老朽化や気候変動への対応が続けば、水インフラを効率化する技術への投資も長期的に続く可能性があるといえます。

 

ESGマネーが水に注目してきた理由

水が投資テーマとして扱われる背景には、ESGとの相性の良さもあります。水質改善や水資源の有効利用は「E=環境」と関係し、安全な飲料水や衛生環境の整備は「S=社会」に直結します。企業や自治体が水資源をどのように管理し、リスクを開示するかという点では「G=ガバナンス」とも無関係ではありません。国連のSDGsでも目標6として「安全な水とトイレを世界中に」が掲げられており、水関連事業は環境と社会インフラの両面から説明しやすい分野です。

実際、モーニングスターが2025年2月時点で確認した米国・欧州の水関連投資信託とETFは73本あり、運用資産は合計約410億ドルに達していました。商品数は5年間で約70%増えています。一方、運用資産は2021年に約500億ドルでピークを付け、その後は資金流出や運用成績の影響で減少しました。米国の水関連ファンドでは過去3年間で合計8億2,000万ドルの純流出、欧州でも過去2年間で合計56億ドルの純流出が記録されています。つまり「水が社会的に必要だからESGマネーが増え続ける」と考えるのは早計でしょう。水という投資テーマが定着していることと、投資資金が常に流入することは分けて考える必要があります。

 

「水が必要」と「投資で利益が出る」は別の話

水への投資という言葉から、水そのものを買って値上がりを待つ姿を想像するかもしれません。しかし、一般的な水関連ファンドは、水道事業会社、水処理設備、ポンプ、配管、計測機器、水質管理などを手掛ける企業へ投資しています。モーニングスターは水関連ファンドの主な投資先を、水道事業、水関連機械、水処理などの技術、節水効率に優れた企業といったカテゴリーに整理しています。投資対象は「水」ではなく、水を届け、処理し、効率よく利用するための事業と捉えたほうが分かりやすいでしょう。

注意したいのは、同じ「水関連」と呼ばれるファンドでも中身にかなり差があることです。2025年のモーニングスターの調査では、米国の水関連ファンドについて、投資先企業の売上高のうちSDGs目標6に関連する割合は平均38%でしたが、ファンド別では7%から65%まで開きがありました。水問題が深刻になることと、水関連企業の利益や株価が上がることも同じではありません。公共事業であれば自治体の財政や料金規制、企業向け設備なら景気や設備投資計画の影響を受ける可能性があります。

水投資の面白さは、「水不足」という言葉だけでは見えてきません。水道管を更新する、排水を再利用する、漏水を減らす、水質を管理する。そのために誰がお金を出し、どの企業が仕事を受注するのかまで追うと、水という社会インフラと投資の関係が見えやすくなります。世界で水問題への対応が続くなか、社会課題を企業の売上へ変えられる技術やサービスを持っているかどうかが、水関連企業を見るひとつの手掛かりになるのではないでしょうか。

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