Z世代の半数超が商品選びにAI活用、若者の買い方に起きている変化

商品ページを見る前から「比較」が始まっている

欲しい商品があればGoogleで検索し、気になるものを見つけたら商品ページを開く。口コミやSNSの評判も確認しながら、最後に購入する商品を決める。これまで一般的だった買い物の流れに、生成AIが入り始めています。楽天グループが2026年9月に発表した調査では、若年層向けサービス「楽天学割」のユーザーのうち、商品やサービスの検討・購入時に生成AIを利用すると答えた割合は54.3%でした。内訳は「常に利用する」が3.6%、「頻繁に利用する」が13.2%、「時々利用する」が37.5%です。調査対象が楽天学割ユーザーであるため、この数字をZ世代全体へそのまま当てはめることはできませんが、若い消費者の買い物にAIが入り込んでいることを示す一つの材料にはなります。

注目したいのは、AIが使われるタイミングです。同調査では「比較検討する商品を絞るとき」が44.4%で最多となり、「欲しい商品やサービスを探すとき」の27.8%を上回りました。ここから見えてくるのは、AIに購入をすべて任せる姿ではなく、多すぎる候補を整理してもらう使い方です。「1万円以内で通勤に使いやすいイヤホン」「敏感肌向けで3,000円前後の化粧水」と入力すれば、条件に沿って情報を整理できます。企業からすると、消費者が自社サイトを訪れる前から商品比較が始まる可能性が出てきたともいえます。

 

なぜ若い世代はAIに商品選びを相談するのか

背景にあるのは、情報不足よりも「選択肢の多さ」でしょう。ECサイトには似た商品が大量に並び、SNSにはレビュー動画や広告、インフルエンサーの投稿、一般ユーザーの口コミが流れています。選択肢が増えたことで買い物は便利になりましたが、その分だけ「自分にはどれが合うのか」を判断する手間も増えました。デロイト トーマツの2025年度調査でも、15~29歳と定義したZ世代は他世代と比べてデジタルの浸透度が高く、商品購入時にはSNSや口コミなどオンライン上の他者評価を重視する傾向が示されています。衣料品やラグジュアリー商品では、店舗との併用を含め4割以上がECを利用していました。

生成AIは、この大量の情報を「自分の条件」に合わせて整理できる点に特徴があります。大広が全国5,025人を対象に実施した調査の追加分析では、20代のAI活用率は56.5%で、他世代平均39.0%の約1.45倍でした。AIが提案した候補を購入検討に入れた割合も20代では16.3%となり、他世代平均7.6%の約2.1倍です。大広が大学生19人に行った定性調査では、知識がなくても相談しやすい、人には話しにくい希望を伝えられるといった声も確認されています。AIの役割は情報を探すだけではなく、「自分に合う条件へ整理すること」に広がっていると考えられます。

 

AIが増えても検索やSNSはなくならない

ここで注意したいのは、「AIが検索を置き換える」と単純に捉えないことです。楽天グループの調査では、商品やサービスの検討・購入時に最も信頼する情報源として「検索エンジン」を挙げた人が42.1%で最多でした。AIで候補を整理したとしても、価格やスペック、販売条件が正しいかを検索し、メーカーやブランドの公式サイトで確認する行動は残ると思われます。AIの回答には誤りが含まれる可能性もあるため、購入金額が高い商品ほど事実確認の必要性は高くなるでしょう。

SNSにも別の役割があります。デロイト トーマツの調査では、Z世代の商品・サービス購入時の情報源としてSNSの存在感が高く、特に化粧品と旅行では情報収集源の最上位でした。SNSを見ている途中で知らなかった商品と出会い、その商品についてAIで調べ、検索や公式サイトで詳細を確かめるといった行動も考えられます。必ずこの順番で買い物が進むわけではありませんが、検索、SNS、AI、ECを行き来しながら判断する場面は増えていくのではないでしょうか。AIは既存の情報源を消す存在というより、商品を選ぶ途中に「整理・比較」という新しい工程を持ち込んだと見るほうが分かりやすいでしょう。

 

企業は「クリックされる前」の商品比較を意識する

企業側にも発想の転換が求められます。これまでは検索結果で上位に表示されることや、SNS広告から商品ページへ誘導することがマーケティングの大きな目的でした。しかし消費者が「予算2万円以内で初心者でも使いやすい商品を教えて」とAIに相談するようになれば、自社サイトへ来る前に候補から外れる可能性があります。そこで意味を持つのが、価格、サイズ、重量、素材、対象者、用途、保証、返品条件、他商品との違いといった具体的な情報です。「高品質」「使いやすい」といった抽象的な言葉だけでは、何が優れているのか比較しにくいでしょう。商品の特徴を数字や条件で説明し、FAQや使用方法まで整理しておくことが、人にもAIにも理解しやすい情報設計につながると考えられます。

AIとの接点は購入前だけではありません。大広の調査では、20代は他世代と比べて、購入後の使用方法や疑問、不具合への対処、活用方法などをAIへ相談する割合も高い結果となりました。購入後の「使用方法・疑問点」でAIを使う割合は7.4%で他世代の3.0%に対して約2.45倍、「活用法・追加オプション提案」は7.6%で他世代2.7%の約2.84倍です。商品ページ、FAQ、サポート情報は購入を促す材料であると同時に、買った後の体験を支える情報としても価値が高まるでしょう。

若年層マーケティングで起きている変化は、「Z世代がAIを使い始めた」という話だけではありません。消費者が商品ページを訪れる前から、AIを使って候補を整理できるようになったことに意味があります。検索順位やSNSでの話題性を高めるだけでなく、「自社商品は誰に向いていて、何が違い、どんな条件なら選ぶ価値があるのか」を分かりやすく示す。AIが買い物の相談相手になるほど、企業には派手な言葉よりも、比較に耐えられる具体的な情報が求められていくのではないでしょうか。

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