ポイント還元競争のその先へ、消費者が電子マネーや決済サービスに求めるもの
キャッシュレスが当たり前になり、ポイントの見方も変わった
コンビニやスーパーでスマートフォンをかざしたり、QRコードを見せたりして支払う光景は、今では珍しくありません。経済産業省によると、2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%、決済額は162.7兆円まで拡大しました。内訳を見ると、クレジットカードが134.6兆円で82.7%を占め、コード決済は16.6兆円で10.2%、電子マネーは6.0兆円で3.7%となっています。現金を使わない支払いが特別なものではなくなり、日々の買い物に自然に組み込まれるようになったといえます。
キャッシュレスの普及とともに存在感を高めてきたのが、支払いに応じて付与されるポイントです。野村総合研究所が全国1万人を対象に2025年12月に実施した調査では、9割以上がキャッシュレス決済を利用し、そのうち約7割がポイントやマイルを積極的に利用していました。ポイントそのものへの関心が薄れているわけではありません。ただ、以前のように「ポイントが付くから使う」という選び方から、「普段の支払いで自然に貯まるなら使いたい」という感覚へ少しずつ変わっていると考えられます。
得するための作業が増え、ポイントが負担になる
ポイント還元疲れという言葉からは、ポイントを集めること自体に飽きたような印象を受けるかもしれません。しかし、実際には少し違います。MMD研究所が18~69歳の男女2万5,000人を対象に2025年12月に行った調査では、ポイント経済圏を意識している人は61.9%でした。経済圏を意識している人の96.9%が共通ポイントを活用しており、意識していない人でも65.2%が利用しています。ポイントは今も生活の中に根付いており、利用そのものが大きく後退しているとは言いにくいでしょう。
疲れが生まれる背景には、少しでも多く得するための手間が増えていることがあります。キャンペーンへの事前エントリー、対象店舗、最低購入金額、有効期限、曜日限定の特典など、確認しなければならない条件は少なくありません。複数の電子マネーやQRコード決済を使っていれば、「今日はどれで払えば得なのか」と考える場面も増えていきます。数十円、数百円の差を得るためにアプリを開き、条件を比べる時間まで含めると、お得さより面倒さが勝つ場合もあるでしょう。消費者が避け始めているのはポイントそのものではなく、ポイントを最大限得るために発生する作業だと思われます。
なぜポイントサービスは複雑になっていったのか
企業がポイント制度を充実させる背景には、自社のサービスを繰り返し使ってもらいたいという狙いがあります。ポイントは単なる値引きではなく、利用者との接点を増やし、継続利用につなげる役割を持っています。クレジットカード、電子マネー、銀行、通信、ECなどを同じグループで利用すれば還元率が上がる仕組みも、その代表例といえるでしょう。MMD研究所の調査では、最も意識されているポイント経済圏は楽天経済圏で42.9%、PayPay経済圏が17.8%、ドコモ経済圏が16.4%と続きました。楽天経済圏では、現在利用しているサービス数の中央値が5個となっています。
企業にとって、複数のサービスを利用してもらえれば利用頻度が増え、長期的な売上にもつながりやすくなります。そのため、「このサービスも使えば還元率アップ」「この支払い方法ならボーナス」といった仕組みが増えてきました。一方で、企業が利用者との接点を増やすほど、消費者側では管理するサービスや条件も増えていきます。企業は自社の経済圏に利用者を集めたい一方、消費者はなるべく考えずに支払いを済ませたい。この方向のずれが広がったことで、ポイント還元疲れが表面に出やすくなったと考えられます。
最大還元より「いつもの支払い」が選ばれる時代へ
こうした変化を踏まえると、これから選ばれやすいのは、単純に還元率が高いサービスとは限りません。MMD研究所の2025年12月調査では、ポイント経済圏の総合満足度はPayPay経済圏が82.8%で最も高い結果となりました。PayPay経済圏ではQRコード決済、イオン経済圏では電子マネーなど、日常的な買い物で使う決済手段が経済圏への入り口になっています。特別な操作をしなくても、普段通りに支払うだけでポイントが貯まる仕組みは、利用者にとって続けやすいといえます。
期間限定で10%や20%を還元するキャンペーンには、新しい決済サービスを試してもらう効果が期待されます。ただ、その後も使い続けてもらえるかどうかは別の話でしょう。使える店舗が多い、決済が速い、履歴が確認しやすい、貯めたポイントをそのまま支払いに使えるといった便利さの積み重ねが、長期的な利用につながると見込まれます。消費者が求めるものは、「頑張れば最大限得できる仕組み」から、「あまり考えなくても自然に得できる仕組み」へ移っているのではないでしょうか。ポイント還元疲れは、お得への関心が薄れた現象ではなく、お得を得るために使う時間や手間まで含めて判断する消費者が増えた結果と捉えられます。
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