紅茶専門店はなぜ増えている?コーヒー一強だったカフェ市場に起きた変化

コーヒーが定番の日本でティー専門店が広がっている

カフェで飲むものと聞かれて、真っ先にコーヒーを思い浮かべる人は今も多いでしょう。全日本コーヒー協会が2026年8月に更新した統計によると、2025年の国内コーヒー消費量は397,272トン。前年から0.7%減ったものの、依然として約40万トンという大きな規模を保っています。つまり、紅茶が注目されているからといって、日本人が急にコーヒーを飲まなくなったわけではありません。
変わり始めているのは、カフェでコーヒー以外を選べる場面が増えていることではないでしょうか。

その動きを分かりやすく表しているのが「スターバックス ティー & カフェ」です。2020年に始まったティーに特化した業態は、2026年9月時点で全国30店舗まで広がりました。9月には岡山県と滋賀県にも初出店し、展開地域は着実に広がっています。コーヒーで圧倒的な知名度を持つブランドが、ティーだけで一つの店舗業態を成立させている点は興味深いところです。
紅茶専門店の広がりは、コーヒー人気の低下というより、飲料の選択肢そのものが増えている流れとして見るほうが自然でしょう。

 

紅茶は「詳しくないと選べない飲み物」ではなくなった

以前の紅茶専門店には、ダージリンやアッサム、ウバなど茶葉の名前が並び、少し敷居が高い印象もありました。紅茶好きには楽しいものの、知識がない人には「どれを選べばいいのだろう」と迷うこともあったでしょう。現在はフルーツ、ミルク、炭酸、アイスクリームなどを組み合わせた商品が増えています。
2026年9月にスターバックス ティー & カフェで登場した商品にも、アッサムを使ったティーラテだけでなく、グレープフルーツを合わせたティースパークリングや、アイスクリームを組み合わせたミルクティーがあります。

価格にも専門店らしい幅が出ており、2026年9月発売の商品では、ストレートの「アッサム クラシック」が店内550円、ティーラテが690円、アイスクリームを合わせた商品は930円です。紅茶を単に喉を潤すための飲料として売るのではなく、素材や組み合わせまで含めた一杯として提供していることが分かります。「茶葉の種類は分からないけれど、グレープフルーツなら飲んでみたい」といった選び方ができれば、従来の紅茶ファン以外にも入口を広げられると考えられます。

 

専門店では一杯の紅茶から来店する理由を作りやすい

紅茶には、同じ茶葉でも組み合わせによって印象を大きく変えられる面白さがあります。ストレートで香りを楽しむだけでなく、ミルクを合わせればティーラテになり、果物や炭酸を使えば爽やかなドリンクにもなります。季節に合わせて春はイチゴ、夏は桃や柑橘、秋冬はミルクやスパイスと展開することもできます。一度店を訪れた人にも、「次は違うものを飲んでみたい」と思ってもらいやすい商品構成です。

専門店側から見ると、この変化の付けやすさは大きな強みになりそうです。定番商品だけで一年間営業するより、季節限定の商品があれば来店する理由を何度も作れます。紅茶は茶葉を軸にしながら、果物やミルクなどを使って価格帯を広げることも可能です。実際にティー専門業態で500円台のストレートティーから900円を超える商品まで成立していることを考えると、紅茶は「安いか高いか」だけで比較される飲料ではなくなりつつあります。何を組み合わせ、どんな時間を楽しんでもらうかまで含めて商品を作れることが、専門店との相性の良さにつながっていると思われます。

 

紅茶ブームの正体は「今日は何を飲む?」という変化

紅茶専門店が注目されているからといって、コーヒーの時代が終わるわけではありません。国内では7割を超える人がコーヒーを習慣的に飲んでおり、朝の目覚めや仕事中の休憩、食後など、長年にわたって定着した飲用場面があります。紅茶がコーヒーの座をそのまま奪うというより、これまでコーヒーだけだった場面の一部に、紅茶やフルーツティーといった別の選択肢が加わっていると見るほうが自然でしょう。
カフェ市場の転換とは、売上の主役が一気に入れ替わることではなく、消費者の選び方が変わることだといえます。

朝はコーヒーを飲み、昼食には無糖紅茶、午後にはフルーツティー、夜にはカフェインを控えた飲み物を選ぶといった使い分けもできます。飲料を選ぶ基準も、苦いか甘いかだけではなく、香り、見た目、季節感、限定感、気分に合うかどうかまで広がりました。こうした市場では、味の組み合わせを変えやすく、季節ごとの新商品も作りやすい紅茶が存在感を高めやすいと考えられます。紅茶専門店ブームの再燃は、単なる昔の流行の繰り返しではありません。
コーヒー一辺倒だったカフェ文化から、その日の気分に合わせて一杯を選ぶ文化へと変わり始めたことを映す現象ではないでしょうか。

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生活・暮らし

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