住み替えるか住み続けるか、ライフステージで変わる住まいの選び方
住み替えるか住み続けるか、暮らしが変われば家の選び方も変わる
長年暮らしてきた家でも、ある日ふと「この先もずっと住み続けられるだろうか」と感じることがあります。子どもが独立して使わない部屋が増えたり、以前は気にならなかった階段の上り下りが負担になったり。仕事を退職すれば、通勤に便利だった立地よりも、買い物や病院への通いやすさを優先したくなるかもしれません。住まいに求める条件は、家族構成や年齢、働き方によって少しずつ変わっていきます。家を購入した当時は理想的だった環境が、10年後、20年後も暮らしやすいとは限りません。
総務省の「2023年住宅・土地統計調査」によると、全国の住宅総数は約6,504万戸、空き家は約900万戸で、空き家率は13.8%と過去最高になりました。空き家が増える背景には、人口減少や住宅の相続、地域による住宅需要の違いなどが関係しています。ただ、住宅が余っているからといって、希望する地域で手頃な物件が見つかるとは限りません。
住み替えを考えるなら、現在の家の価値と転居先の住宅事情を調べる必要があります。一方、住み慣れた地域を離れず、家を改修しながら暮らす方法も選択肢の一つ。どちらが得かという比較だけでなく、今の家で何に困っているのかを整理することが、住まいを見直すきっかけになります。
子育て期と老後では、住まいに求める条件が違う
子育て中は、学校や保育園への距離、部屋数、収納の多さなどが住まい選びの中心になりがちです。共働き世帯なら、通勤時間を短くできるかどうかも毎日の生活に直結します。ところが、子どもが成長して家を離れると、広い家を持て余すことも。夫婦二人の生活には部屋が多すぎたり、庭の手入れや掃除に時間がかかったりする場合があります。空いた部屋を趣味や仕事に活用できれば、そのまま暮らす楽しみも増えるでしょう。反対に、住宅の維持管理が負担になっているなら、コンパクトな住まいへの転居を考える時期かもしれません。
老後の住まいでは、広さよりも移動のしやすさが気になってきます。内閣府の「令和8年版高齢社会白書」によると、2025年10月1日時点の65歳以上人口は3,622万人で、総人口の29.4%を占めています。高齢化が進むなか、階段や段差の少ない住宅、徒歩圏内に生活施設がそろう地域への関心は高まると考えられます。特に注意したいのが、車を運転できなくなった後の暮らしです。郊外の一戸建ては駐車場や庭が広く快適でも、免許を返納すると買い物や通院が難しくなることがあります。今は元気だから問題ないと判断せず、公共交通機関や徒歩で生活できるかを確かめておくと、将来の負担を減らしやすくなります。
住み替えと住み続ける費用、10年単位で比べてみる
住み替えを考え始めると、新しい家の価格や家賃に目が向きます。しかし、実際には引っ越し代や仲介手数料、家具の買い替えなど、細かな出費も重なります。持ち家を売却する場合は、住宅ローンの残債や売却にかかる費用も確認が必要です。仮に現在の住居費が月12万円で、転居後に10万円になれば、年間24万円、10年間で240万円の差が生まれます。ただし、引っ越しに100万円かかれば、その費用を回収するまでに約4年2か月かかる計算です。実際には家賃の更新や修繕費、税金なども関係するため、毎月の支払いだけで得か損かを判断するのは難しいところです。
今の家に住み続ける場合も、将来の支出を見積もっておきたいものです。一戸建てなら屋根や外壁、水回りの修繕、マンションなら管理費や修繕積立金の負担が続きます。築年数が古い住宅では、断熱性能を高めたり、浴室や廊下の段差を解消したりする改修が必要になることも。国土交通省の「令和5年住生活総合調査」では、住宅や居住環境に対する満足度などを調べており、住まいの評価には建物の状態だけでなく周辺環境も関わっています。
費用を比べる際には、住宅の維持管理費と転居費用を同じ期間で計算し、退職後の収入でも無理なく支払えるかを確かめたいところです。家を小さくすれば必ず節約になるわけではなく、住み替え先の立地や住宅価格によって結果は変わります。
住み替える前に考えたい、これからの暮らしと地域とのつながり
住まいを変えるかどうかは、お金だけで決められる問題ではありません。長く暮らした街には、通い慣れた病院や行きつけの店、気軽に話せる近所の人がいるかもしれません。新しい家が便利で快適でも、こうした関係を一から築くことに負担を感じる場合があります。特に高齢期は、生活圏が変わることで外出の機会が減る可能性にも目を向けたいところです。
一方、坂道の多い地域や公共交通機関が少ない場所では、住み慣れていることが必ずしも暮らしやすさにつながりません。現在の便利さだけでなく、車を使わずに買い物や通院ができるか、困ったときに頼れる人が近くにいるかといった条件も判断材料になります。
住み替えを迷っているなら、まずは今の家で感じている不便を具体的に整理してみるとよいでしょう。部屋が余っているだけなら使い方を変える方法もありますし、階段や浴室が使いにくいならリフォームで改善できる場合もあります。反対に、交通の便が悪く、日常生活そのものに負担を感じているなら、住み替えによって暮らしが楽になる可能性は高まります。家を売却する前に不動産会社へ査定を依頼し、希望する地域の家賃や住宅価格を調べておけば、費用面でも比較しやすくなるはずです。
長く住んだ家には思い出が詰まっていますが、住み続けることだけが正解ではありません。これからの10年をどんな場所で、どのように過ごしたいか。家族の変化や自分の体力、家計の状況を踏まえながら、今の暮らしに合った住まいを選んでいきたいものです。
- カテゴリ
- 生活・暮らし
