ふるさと納税のその先へ、注目される「ふるさと住民登録制度」とは
ふるさと納税で生まれた接点を、その先へ
ふるさと納税は、地方と都市部を結ぶ仕組みとして定着しました。2024年度の寄付受入額は約1兆2,728億円、受入件数は約5,879万件に達しています。返礼品をきっかけに、それまで知らなかった町の名前を覚えたり、旅行先として興味を持ったりした人もいるでしょう。自治体にとっても全国の人に地域を知ってもらえる機会になっています。ただ、寄付が増えることと、地域に継続して関わる人が増えることは同じではありません。返礼品が届けば、それで関係が終わってしまうケースもあります。
この「寄付した後」をつなごうとしているのが、国が検討を進める「ふるさと住民登録制度」です。名前からは住民票に近い制度を想像しますが、実際には住所を移す仕組みではありません。現在住んでいる場所とは別に、応援したい地域や継続して関わりたい地域を登録できるようにし、自治体との接点を持ちやすくする構想です。スマートフォンのアプリなどから登録し、地域の情報やサービスを受け取れる仕組みが検討されています。これまでなら「観光客」「住民」のどちらにも当てはまりにくかった人を、地域とつながる存在として捉え直そうとしているわけです。
登録しただけでは「移住」にはならない
政府は2034年度までに、特定の地域と継続的に関わる「関係人口」を実人数1,000万人、延べ人数1億人にする目標を掲げています。関係人口には、毎年同じ地域を旅行する人だけでなく、地域のイベントに参加する人、地元企業の仕事を副業で手伝う人、都市部と地方を行き来する人なども含まれます。住民票の数字だけでは見えてこなかった地域とのつながりを把握できれば、人口が減っている自治体にとって新しい人材との接点をつくりやすくなるでしょう。
一方で、登録者が増えれば、そのまま移住者が増えるとは限りません。スマートフォンから地域を登録することと、仕事を変え、家を探し、生活拠点を移すことでは負担がまるで違います。100万人が登録しても、その多くが情報を受け取るだけなら、地域で活動する人はほとんど増えないかもしれません。登録者数の大きさだけを成果としてしまうと、制度の本当の効果が見えにくくなります。何人登録したかだけではなく、そのうち何人が現地を訪れ、地域の仕事や活動に参加し、その関係を続けたのか。ここまで追って初めて、地方創生への効果が見えてくると考えられます。
寄付から移住までには、いくつもの段階がある
ふるさと納税との組み合わせを考える場合も、寄付者をすぐに移住へ誘導するのは現実的ではありません。むしろ、寄付を入口にして少しずつ地域との接点を増やしていく方が自然です。返礼品で特産品を知り、旅行で現地を訪れ、地域のイベントに参加する。そこから農作業や祭りの手伝い、副業、地域プロジェクトへの参加へ進む人もいるかもしれません。政府が示している制度イメージでも、特産品購入やふるさと納税を入口として、ボランティア、副業、地域活動、二地域居住などへ関係を深めていく流れが描かれています。
自治体に問われるのは、登録者を集めた後に何を用意できるかでしょう。「登録ありがとうございます」というメールと観光情報だけでは、地域との距離はなかなか縮まりません。地元企業で短期間働ける仕組みや、地域住民と交流できるイベント、数週間から数カ月暮らせる滞在拠点などがあれば、現地で過ごす理由が生まれます。都市部で働きながら地域企業の仕事を副業で担当する方法もあるでしょう。寄付、登録、訪問、地域活動、二地域居住、移住。その間にある段差を小さくできる自治体ほど、制度を実際の人の動きにつなげやすいと思われます。
移住者だけを追わない地方政策へ
人口減少に悩む自治体では、これまで移住者を何人増やしたかが分かりやすい成果として扱われてきました。しかし、すべての人に生活拠点を移してもらうのは簡単ではありません。東京で会社員として働きながら月に一度地方を訪れる人もいれば、遠隔で地元企業の仕事を手伝う人もいます。農繁期だけ地域に滞在する人や、毎年祭りの運営に参加する人もいるでしょう。住民票はなくても、地域を支える力になる人はいます。人口そのものを増やす政策と並行して、こうした人との関係を長く保つ政策が求められていくといえます。
ふるさと住民登録制度は2026年時点で制度設計が進められている段階であり、本当に移住促進につながるかはまだ判断できません。今後注目したいのは、華やかな登録者数よりも「登録した後」です。何人が現地を訪れたのか。何人が翌年も地域と関わったのか。仕事や地域活動に参加した人はどれくらいいたのか。二地域居住や移住まで進んだ人はいたのか。こうした数字が積み上がれば、制度の実力も見えてきます。ふるさと納税で地域を知り、ふるさと住民登録で関係を続け、気に入れば何度も足を運ぶ。その先で「ここで暮らしてみたい」と思う人が出てくる。移住を最初からゴールとして迫るより、地域との付き合いを長くすることが、結果として地方へ人を呼び込む道になるのではないでしょうか。
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