副業は能力よりも生活の余裕?始める人と始めない人の分かれ目
副業を始める人と始めない人、その差は能力だけでは決まらない
「収入をもう少し増やしたい」「将来のために何か始めたい」。そんな思いから副業に興味を持ちながら、なかなか行動に移せない人は少なくありません。SNSでは会社員が副業で月5万円、10万円を稼ぐ体験談が紹介される一方、自分には特別なスキルも時間もないと諦めてしまう人もいます。しかし、副業を始める人が必ずしも仕事に余裕があり、高い能力を持っているわけではありません。同じように忙しく働いていても、週末に小さな仕事を始める人もいれば、興味を持ったまま数年が過ぎる人もいます。この違いは、単なる行動力や積極性だけでは説明できないでしょう。
総務省の2022年「就業構造基本調査」によると、非農林業従事者のうち副業がある人は約305万人で、2017年の約231万人から約74万人増加しました。副業への関心が広がる背景には、物価上昇による家計の負担や、ひとつの会社の収入だけに頼ることへの不安もあると考えられます。ただし、副業を始めるには、本業以外に働く時間を確保し、自分にできる仕事を探し、収入が得られるまでの不確実さを受け入れる必要があります。副業をする人としない人の分かれ目を探るには、時間やスキルの有無だけでなく、挑戦に伴う負担をどこまで引き受けられるかという生活の事情にも目を向ける必要があります。
同じ週5時間でも、副業に使える時間の価値は違う
副業を始められない理由として、最も身近なのが時間の問題です。平日は仕事で帰宅が遅くなり、休日は家事や育児、疲労回復に時間を使う。そんな生活の中で、新しい仕事を増やすのは簡単ではありません。総務省の2021年「社会生活基本調査」では、仕事をした人の平日の平均仕事時間は7時間49分でした。通勤や家事、睡眠などを考えると、自由に使える時間は決して多くないでしょう。ただし、仮に週5時間を副業に充てられるとしても、その5時間をどう使えるかは人によって異なります。平日の夜に1時間ずつ作業できる人と、休日にまとめて時間を確保する人では、引き受けられる仕事も変わってきます。
副業を続けやすいかどうかは、時間の長さ以上に、生活との組み合わせが影響します。毎日決まった時間に働くアルバイトは収入を計算しやすい反面、急な残業や家庭の予定に対応しにくい場合があります。一方、ライティングや資料作成などの在宅業務は、自分で作業時間を調整しやすいものの、案件探しや修正対応まで含めると想定以上に時間がかかることも珍しくありません。週5時間働いて月2万円を得たとしても、準備や連絡に別途5時間かかっていれば、実質的な時間当たりの収入は2,000円になります。副業を始める人は時間を上手に使っているというより、自分の生活に合う仕事を選べている場合もあるでしょう。反対に、休息を削らなければ時間を確保できない人にとって、副業を見送ることは無理のない判断といえます。
スキルがないからできない?経験を仕事に変えられる人の考え方
副業に興味があっても、「自分には売れるスキルがない」と感じる人は多いでしょう。動画編集やプログラミング、Webデザインなど、専門的な技術を必要とする仕事が目立つため、副業には特別な能力が必要だと思い込んでしまうこともあります。しかし、普段の仕事で身につけた経験が、別の場所では収入につながる可能性も十分に考えられます。営業職なら提案資料の作成、事務職ならデータ整理、接客業なら顧客対応の経験など、本人にとって当たり前の作業でも、それを必要とする人はいるはずです。副業を始める人は、自分の能力を高く評価しているというより、今できることを誰かの役に立てられないかと考えている場合もあるでしょう。
ただし、仕事の経験が豊富だからといって、すぐに副業で稼げるとは限りません。本業では会社の信用や取引先との関係が仕事を支えていますが、副業では自分で依頼主を探し、報酬や納期を決める必要があります。最初の案件が見つからず、思っていたほど収入にならないことも珍しくないでしょう。こうした不確実さを考えると、最初から高額な講座や機材に投資するより、今持っているスキルで小さな仕事を試すほうが負担を抑えられます。月5万円を目指して準備に時間をかける人と、まず数千円の仕事を経験する人では、行動を始めるまでの心理的な距離も変わります。スキルが十分に身につくのを待つだけでなく、実際の仕事を通じて自分に足りないものを知ることも、副業への現実的な入り口になると考えられます。
副業への最後の壁は、失敗への不安と生活を守りたい気持ち
時間を確保でき、仕事に生かせる経験もある。それでも副業を始められない人がいるのは、失敗したときの負担が気になるからかもしれません。収入が得られなかったら、取引先とトラブルになったら、本業に影響が出たら。こうした不安は、慎重な性格だけで生まれるものではなく、家計や家庭環境とも深く関係しています。厚生労働省が公表した2022年「就業構造基本調査」に基づく資料では、副業をしている人のうち、本業の年間所得が299万円以下の人は64.5%を占めています。一方、本業の年間所得が1,000万円以上の層でも、副業をしている人の割合は6.5%でした。副業の目的は生活費の補填だけではなく、収入源の分散や新しい経験を得ることなど、人によって異なります。同じ月3万円の副収入でも、生活費に充てたい人と将来のために貯蓄したい人では、その金額に求める意味も違ってくるでしょう。
副業を始めるか迷っているなら、まずは本業の就業規則を確認し、無理なく使える時間と、失っても生活に支障が出ない費用を考えてみるのがよさそうです。厚生労働省も副業・兼業に関するガイドラインを整備し、労働時間や健康管理への配慮を求めています。実際に始める場合は、報酬だけでなく、作業に使った時間や疲労、家族との時間への影響も確かめたいところです。反対に、今は仕事や育児で余裕がないなら、無理に副業を始める必要はありません。本業での昇給や転職、将来に向けたスキル習得に時間を使う選択も考えられます。副業をする人としない人を分けているのは、能力や努力の差だけではなく、挑戦に使える余力と、何を優先して暮らしたいかという価値観の違いでもあります。周囲の成功例に合わせるより、自分の生活を崩さずに続けられるかどうかを基準にすることが、納得できる働き方につながるのではないでしょうか。
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