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お金がないからだけではない?iDeCo・NISAを始められない理由

制度を知っていても投資には結びつかない

NISAやiDeCoという言葉を耳にする機会は、以前よりかなり増えました。NISAは2024年の制度改正によって非課税保有期間が無期限となり、年間投資枠はつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円の合計360万円、生涯の非課税保有限度額は1,800万円となっています。将来に向けた資産形成を支える制度として存在感は高まっていますが、「制度を知っていること」と「実際に自分のお金を投じること」の間には、想像以上に大きな距離があると考えられます。

金融庁が2024年にまとめた資料では、投資を検討しながら踏み切らなかった人の55.5%が「資産運用に関する知識がない」、51.1%が「余裕資金がない」、33.4%が「購入・保有することに不安を感じる」と回答しました。元本保証のある預金のほうが安心という回答も22.8%あります。こうした数字を見ると、制度を知らないから利用しないという単純な話ではありません。「何を買えばよいのか分からない」「損をするかもしれない」「今の家計から投資資金を出して大丈夫だろうか」といった迷いが重なり、知識を得ても行動まで進めない人が少なくないといえます。

 
「余裕資金がない」の裏には思い込みもある

投資を始めない理由として挙がりやすいのが、家計への不安です。物価や生活費の負担が気になるなか、住宅費や教育費、保険料などを支払った後のお金を投資へ回すことに慎重になるのは自然でしょう。ただ、「余裕資金がない」という言葉の中には、本当に生活費だけで精いっぱいという人だけでなく、「投資をするなら毎月数万円は必要」と感じている人も含まれていると思われます。必要な金額を大きく見積もれば、それだけ最初の一歩も遠くなります。

現在は金融機関によって、投資信託を月100円程度から積み立てられるサービスもあります。月5,000円なら年間6万円、10年間では元本だけで60万円です。もちろん、少額でも必ず投資すべきという話ではありません。急な出費に備える現金や、数年以内に使う予定のお金まで投資へ回す必要はないでしょう。一方で、「月10万円を積み立てられないなら意味がない」「NISAの年間枠を使い切れないなら始めても仕方がない」と考えてしまうと、自分に合った金額で始める選択肢を見落としやすくなります。SNSで大きな投資額や資産額を目にする機会が増えたことで、他人と比べて「自分には余裕がない」と感じる人もいるのではないでしょうか。

 
NISAとiDeCoでは立ち止まる理由が違う

NISAとiDeCoは資産形成の制度としてまとめて紹介されることが多いものの、利用をためらう理由は同じではありません。NISAでは購入した金融商品を必要に応じて売却できるため、資金の自由度は比較的高いといえます。その反面、投資信託や株式などの中から自分で商品を選ぶ必要があり、「どれを選べばよいのか分からない」という迷いが生まれやすくなります。選択肢が多ければ安心できるとは限らず、比較する情報が増えるほど決断を先送りしてしまう人もいるでしょう。

iDeCoには別のハードルがあります。iDeCo公式サイトによると、2026年7月時点の現存加入者は約403.7万人まで増えていますが、老後資金を目的とした制度であるため、積み立てた資産は原則として60歳になるまで引き出せません。税制上のメリットがあっても、「数十年間使えないお金を作って大丈夫か」と感じる人にとっては大きな制約です。2026年12月には制度改正が予定され、一定の条件を満たす60歳以上70歳未満にも加入対象が広がり、拠出限度額も引き上げられます。利用しやすくなることが期待される一方、制度変更が続くことで「自分にはどの条件が当てはまるのか分かりにくい」と感じる人が出てくる可能性もあるでしょう。

 
始められない背景には「損をしたくない気持ち」がある

投資を始められない理由を、金融知識の不足だけで説明するのは十分ではありません。NISAについて理解し、長期・積立・分散という考え方を知っていても、実際に10万円を投資して9万円になれば不安を感じる人は多いでしょう。投資をしなければ、少なくとも値下がりを目にすることはありません。そのため、「始めなければ失敗もしない」という選択が心理的には安心に感じられます。金融庁の調査で33.4%が購入や保有への不安を挙げていることからも、知識だけでは解消しにくい壁があると考えられます。

投資を始めれば、金額を決め、商品を選び、値下がりしたときに売るか続けるかも自分で判断することになります。事前に正解が分からないため、「もう少し調べてから」と考えているうちに、数カ月、数年と先送りしてしまうケースもあるでしょう。
iDeCoやNISAを利用しない背景には、制度の難しさだけでなく、現在使えるお金を将来へ回し、不確実な結果を自分で引き受けることへの抵抗もあると思われます。
月3,000円や5,000円から試す、生活防衛資金を確保してから考える、NISAとiDeCoのどちらが目的に合うか整理するなど、選択肢は一つではありません。「いくら投資するか」より先に、「いつ使うお金なのか」「値下がりをどこまで受け入れられるのか」を考えることが、自分に合った資産形成を見つけるきっかけになるのではないでしょうか。

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