美しさは野菜に宿る。パリの日本人シェフが描く「Narro」の芸術的一皿【フランス・パリ】

ローカリティ!

パリには数え切れないほどのレストランがある。

その中でも近年注目を集めているのが、フランス料理の伝統に日本人ならではの繊細な感性を融合させたレストランだ。

パリ5区に店を構える「Narro(ナロ)」もその一つである。

店内に足を踏み入れると、落ち着いた空間の中にオープンキッチンが広がり、料理人たちの所作が静かに目に入る。コースが始まると、この店が目指しているものが少しずつ見えてくる。

それは「野菜の美しさ」を最大限に引き出すことだった。

パリで挑戦する日本人シェフ

Narroを率いるのは日本人シェフの竹田和真(ちくだ・かずま)氏である。

竹田氏は長野県白馬村出身。長野県で料理を学んだ後、日本のひらまつグループや代官山メゾンポール・ボキューズで経験を積み、その後フランスへ渡った。そして2020年9月、ジュリアン・アラン氏らと共同経営でNarroをオープンした。

フランス料理というと肉料理やソースの印象が強いかもしれない。しかしNarroでまず驚かされるのは、野菜の存在感である。

季節ごとの食材が丁寧に選ばれ、それぞれの個性が最も美しく見える形で皿の上に配置されている。

野菜が主役になるコース

料理が運ばれてくるたびに感じたのは、一皿ごとの完成度の高さだった。

鮮やかな緑、赤、黄色。

色彩の組み合わせはまるで絵画のようでありながら、決して装飾過剰ではない。

皿の中心に置かれているのは高級食材ではなく、むしろ身近な野菜であることも少なくない。しかし、その火入れや組み合わせによって、食材本来の魅力が驚くほど引き出されている。

フランス料理の技法を使いながらも、どこか日本料理のような繊細さを感じるのは、日本人シェフならではの感性なのかもしれない。

「食べる」+「鑑賞する」時間

Narroの料理を前にしていると、美術館で作品を鑑賞しているような気持ちにもなる。

味と同じくらい盛り付けや色彩、器との調和が計算されている。

一皿が運ばれるたびに自然と写真を撮りたくなるのは、その美しさに理由があるからだ。

だが写真に収めるだけでは、この料理の魅力は伝わりきらない。

野菜の香りや食感、温度の変化は、実際に口に運んで初めて完成する。

料理が芸術と呼ばれる理由を、改めて考えさせられる時間だった。

農業大国フランスだからこその一皿

フランス料理というと、高級レストランや洗練された技法に目が向きがちである。しかし、その土台を支えているのは豊かな農業である。

実はフランスはヨーロッパ最大級の農業国として知られている。小麦やワイン用ブドウはもちろん、野菜や果物、乳製品の生産も盛んで、各地域にはその土地ならではの食文化が根付いている。

近年のフランス料理界では、生産者とのつながりや旬の食材を重視する流れが強まっている。シェフたちは単に食材を仕入れるのではなく、どの農家が育てたのか、どの季節に最もおいしくなるのかまで含めて料理を考える。

Narroの一皿から感じられる野菜への敬意も、こうしたフランスの食文化の延長線上にあるのだろう。

美しさは野菜に宿る

食事を終えて店を出た後も、いくつかの皿の色彩が記憶に残っていた。

高級食材の名前ではない。豪華な演出でもない。

思い出したのは、季節の野菜が見せてくれた美しさだった。

Narroの料理は、単においしいだけではない。

そこには一皿ごとに物語があり、美しさがあり、そして野菜への深い敬意があった。

まさに「美しさは野菜に宿る」。

そんな言葉が自然と浮かんでくるレストランであった。

※写真はすべて竹田和真氏からご提供いただきました

情報

■料理名・ご予約などは以下のサイトから
Restaurant Narro 公式サイト
https://www.instagram.com/narro_restaurant/  Instagram

情報提供元:ローカリティ!

阿部宣行ローカリティ!
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