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業界への “恩”を事業に。食を支える人の価値を高める仕組み【東京都渋谷区】

ローカリティ!

「食」に関わる人の努力は、その価値にふさわしく報われているでしょうか。

株式会社シンクロ・フードの取締役会長・藤代真一さんは、常にその問いを深く見つめています。家業の野菜卸売業を手伝いながら育ち、外食産業の現場を間近で見てきた原体験。そして、新卒で入社した外資系コンサルティング会社で培ったITによる業務改革の視点。その二つを掛け合わせた、飲食業界に特化したプラットフォーム事業を築いてきました。

同社は、飲食店、サプライヤー、求職者、農家、不動産オーナーなどを「つなぐ仕組み」を構築しています。現在では、店舗物件情報の提供を起点に、求人や業者とのマッチング、農業分野への挑戦、不動産サブリース事業への展開へと広がっています。

その歩みの根底にあるのは、「食に関わる人を守りたい」という一貫した信念です。今回の取材では、原点にある恩と、構造を通じて産業を支えようとする覚悟をお聞きしました。

原体験と市場洞察が生んだ事業構想 

創業の背景を尋ねると、藤代さんは家業である野菜の卸売業を横浜で営む父のもと、レストランやホテルへ野菜を届ける姿を間近で見て育ったという話を教えてくれました。“食”を通じて家族の生活が成り立っていたことを実感していたからこそ、「外食産業には自然と恩を感じていた」という藤代さん。

新規に立ち上がった店舗へいかに早いタイミングで営業に行けるか。それが家業の成長を左右するという現場感覚は、若いころから体に染み込んでいました。やがて社会に出て外資系コンサルティング会社で働きITに携わる中で、“情報を構造化する”という視点を身につけます。

「情報は、集約され、整理され、仕組みに落とし込まれたときに価値を生む。新規で立ち上がる店舗の情報をITで集約できれば、サプライヤーにとっても価値になるのではないか」

この着想が、シンクロ・フードの原点です。2003年、飲食店に特化した店舗物件探しサイト「飲食店ドットコム」を立ち上げました。出店希望者を集め、周辺プレイヤーをつなぐ。自分を育ててくれた外食業界に“恩を果たしたい”という思いとITという手段が結びつき、形になった瞬間でした。

危機の中で再定義されたMVV

「飲食店ドットコム」はやがて飲食業界を支えるサービスへと広がっていきます。物件情報の提供を起点に、求人、店舗デザインなど、飲食店の開業や運営に関わる領域へと事業を拡張し、2016年には東京証券取引所マザーズに上場。翌2017年には東証一部へ市場変更を果たします。

しかし、その歩みを大きく揺るがす出来事が訪れます。

2020年のコロナ禍で赤字に転落してしまったのです。対外的な営業活動も制限される中、藤代さんはこの危機を、経営基盤や組織の軸を見直す契機と捉え、順調な成長を背景に先延ばしになっていたミッション・ビジョン・バリュー(MVV)をあえて再定義する決断をしました。その後、約2年をかけ再構築。 

Vision
多様な飲食体験から生まれるしあわせを、日本中に、そして世界へと広げる。
Mission
飲食業にチャレンジしている人が、その想いを実現できるプラットフォームをつくる。Value
新しい価値を創造し、シンプル、スピーディに提供する。

社員とともに考え言語化されたMVVは、「誰かが決めた言葉ではなく、自分たちが納得できるものにしたかった」という藤代さん。社内でもワークショップを繰り返し、理念を「自分事」として腹落ちさせるプロセスを重視しました。

「つなぐ仕組み」を各分野に広げる

現在、飲食業界は原価高騰や人手不足という深刻な課題に直面しています。

「コストは上がる一方だが、それを価格に転嫁できないケースも多い」と問題視する藤代さん率いるシンクロ・フードは、テクノロジーで付加価値を迅速に提供する、社内でのAI活用に注力しています。開発スピード向上や、営業業務の効率化、求人情報作成への応用など、生産性向上に取り組んでいます。

さらに、「食」の原点である農業分野にも参入しました。しかし、天候や労働条件といった外食とは異なる難しさにぶつかります。それでも同社は歩みを止めず、「食」を軸に不動産サブリース事業のM&A(合併と買収)やキッチンカーのプラットフォーム展開など、周辺領域へと事業を広げています。

文化を支える誠実さ

シンクロ・フードの文化について尋ねると、「誠実であることを何より大切にしている」と藤代さんは即座に答えました。

「外食業界は広いようで狭い世界。信頼を損なえば事業は続かない」と強調する藤代さんは、採用や評価制度にも「オーナーシップ」「やり遂げる」「公明正大」などの項目を組み込み、理念と行動を結びつけています。

自社に関わる人たちにも、理念を掲げるだけでなく、制度と文化に組み込まれて初めて機能することを「ミッションからつながる人材像を明確にする」ことで藤代さんは実践してきました。

食業界の地位を上げるという未来

藤代さんに目指す未来を尋ねました。

「食に関わる人が、必ずしも高収入ではない現状を変え、業界の地位を上げたい。そして、食に関わる人が幸せを感じられる世界をつくりたい」

テクノロジーを活用し、付加価値の高いサービスを提供し続ける。その先にあるのは、食に携わる人々が誇りを持てる社会です。

藤代さんが心に抱き続けた恩は、いまや事業の軸となり、取り組みの一つ一つに表れています。シンクロ・フードは、食を支える人の“価値”を高める構造改革を着々と進めています。

もっとも印象に残った言葉:
「食に関わる人が幸せを感じられる世界をつくりたい」

写真・画像はすべて株式会社シンクロ・フード提供

企業情報

会社名:株式会社シンクロ・フード
取材対象者:取締役会長 藤代真一さん
設立年月:2003年(「飲食店ドットコム」立ち上げ年)
ミッションビジョンバリュー:
Vision: 多様な飲食体験から生まれるしあわせを、日本中に、そして世界へと広げる。
Mission: 飲食業にチャレンジしている人が、その想いを実現できるプラットフォームをつくる。
Value: 新しい価値を創造し、シンプル、スピーディに提供する。

事業内容:
飲食店出店開業・運営支援、及び関連業者とのマッチング支援
飲食店の出店開業・運営支援サイト「飲食店ドットコム」の運営
飲食店の求人情報サイト「求人 飲食店ドットコム」の運営
店舗のデザイン会社を探せるマッチングサイト「店舗デザイン.COM」の運営
インテリア業界の求人転職サイト「求人@インテリアデザイン」の運営
居抜き店舗の買取査定サイト「飲食店ドットコム 居抜き売却」の運営
キッチンカーシェア・マッチングサイト「モビマル」の運営
SNSショート動画アルバイト求人サービス「グルメバイトちゃん」の運営
農林水産業の求人情報サイト「農業ジョブ」の運営

所在地:東京都渋谷区恵比寿南1-7-8 恵比寿サウスワン
URL:
https://www.synchro-food.co.jp/

情報提供元:ローカリティ!

天野崇子
ローカリティ!は、地元に住む人々が、自分が大好きな地元の人やモノや出来事を、自分で世界に発信し、
その魅力を共に愛する仲間を募れる住民参加型・双方向の新しいニュースメディアを目指しています。
カテゴリ
社会

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