あんこが主役!老舗製餡所が作った110円の工場直売限定アイス「粒あんバー」に込めた思い【愛知県名古屋市】
強い日差しの下、名古屋市北区天道町にある舘林製餡の工場前で、買ったばかりの「粒あんバー」をパッケージから取り出してかぶりつく。
口いっぱいに広がるのは、ひんやりとした冷たさよりも、小豆の風味としっかりとした甘さ。棒アイスでありながら、その主役はあくまで「あんこ」だった。
この粒あんバーは、なぜ生まれたのか。2025年に家業を継いで、舘林製餡(たてばやしせいあん)4代目となった舘林都美(たてばやし・いくみ)さんに話を聞いた。
あんこは「縁の下の力持ち」だけじゃない。自分たちの手で主役に
舘林製餡は1949(昭和24)年の創業から77年にわたり、喫茶店や和菓子店などへあんこを卸し、地域の食文化を支えてきた。
今でも北海道産小豆や大手亡(おおてぼう・白いんげん豆)を手作業で選別し、白ざら糖、庄内川源泉の地下水を使い、それぞれの取引先に合わせて配合を調整する。
「あんこは舘林さんのじゃないと」。そんな声も多い老舗製餡所だ。
ただ、納めたあんこは、あんパンや小倉トースト、和菓子など、お得意先の商品の一部になる。
「いわば縁の下の力持ちですよね。もっとあんこ自体を主役にできないか。だったら自分たちで、商品を開発して届けようと思いました」
その思いを形にした商品の一つが、粒あんバーだ。
都美さん1人の発想ではなく、従業員みんなで意見を出し合いながら完成させたという。
「こしあんはないの?」から広がったラインナップ
「粒あんバー」が初めて登場したのは2025年の夏。
夏季限定、工場直売限定の商品ながら、予想を上回る反響があったという。
その中でも多かったのが、「こしあんはないの?」という声だった。
その声を受け、2026年は粒あん、いちご、抹茶、マンゴー、ほうじ茶、こしあんを発売。
試作を重ね、自信を持って届けられる味だけを商品化した。
「昨年は粒あんだけだったので、せっかくなら、あんこ屋ならではのバリエーションを出そうと思いました。あんこ屋の本気です」
その言葉には、製餡所として積み重ねてきた経験と自信がにじむ。
110円に込めた思い
粒あんバー各種の価格は税込み110円。
小豆の価格が高騰する中、この価格を維持することは簡単ではない。特に白いんげんは、仕入れ価格が倍近くに上がったという。
それでもこの価格に抑えたのには理由がある。
「あんこって、高齢者向けのイメージというか…….。なかなか若い世代は親しみを感じてもらいにくいですよね。去年、小学生の子たちが買いに来てくれたことがうれしくて。なんとかお小遣いで買えるくらいの値段にしたいと思いました」
包装をシンプルにし、工場直売に限定することでコストを抑え、110円という価格を実現している。
原材料価格が上がるなかでも、子どもたちが気軽に手に取れる価格を大切にした。
あんこのおいしさをそのまま味わう
パッケージから取り出すと、小豆の粒がそのまま見える。
表面は少しでこぼこしていて、形もどこかいびつ。しかし、その素朴さが、大量生産にはない親しみを感じさせる。
口にすると、やわらかな粒あんの甘みがゆっくりと広がる。乳製品は使っておらず、小豆の風味と舌触りをまっすぐに味わえる。
「あんこのアイス」ではなく、「冷たいあんこ」を丸かじりするような1本だった。
あんこをもっと身近な存在に
舘林製餡では工場直売のほか、地域イベントへの出店や工場横への「あんこ自販機」の設置など、あんこをもっと身近に感じてもらう取り組みにも力を入れている。
粒あんバーは工場の営業時間内でしか買えないが、自販機では少量サイズのあんこやようかんを365日24時間購入できる。
取材を終えて帰ろうとしたとき、近所の女性が自販機へむかって歩いてきた。
「パンに塗りたいんだわ」
「1人分にちょうどいい大きさだもんで」
そう言いながら、あんこを買って帰っていった。
日々の朝食やおやつのために、ふらりとあんこを買いに立ち寄る。
そんな何気ない光景からも、「もっと身近に、もっと気軽にあんこを楽しんでほしい」という舘林製餡の思いが、少しずつ広がっているのが伝わってきた。
アスリート経験を持つ4代目が描く未来
元々陸上選手として活躍していた都美さん、やり投げ選手として競技に打ち込みながら、2025年に家業を継ぐことを決めた。
製餡の仕事は想像以上の重労働だった。
30キロの小豆を運び、蒸気が立ち上る釜の前で作業し、ときにはやけどを負うこともある。
「もともと体を鍛えている自分でも、暑いし、きついと思うことはあります」
それでも現場に立ち続けるのは、「本当においしいあんこを作りたい」「父から受け継いだ舘林製餡を知ってほしい」という思いがあるからだ。
将来は自身の競技経験を生かし、アスリート向けの補食となるようかんの開発も視野に入れている。
「あんこはエネルギー補給にもピッタリなんです。いつか自分の代わりに、うちの商品が国際的なスポーツ大会の舞台に立ってくれたらうれしいですね」
工場前で味わった110円の粒あんバーは、「おいしい」「お手頃価格」なだけのアイスではなかった。
舘林製餡の”あんこ愛”がぎっしり詰まった1本だった。
そこには、長年地域の食文化を支えてきた製餡所が次世代へつなぐ、小さくても確かな歩みがあった。
※建物外観、各種あんこバー、機械の画像は、舘林製餡さま提供。その他の画像は、2026年7月31日筆者撮影
企業情報
会社名 有限会社 舘林製餡
所在地 愛知県名古屋市北区天道町2-23
電話番号 052-917-1733
営業時間 平日9時〜17時 土11時〜13時 ※配達等で工場が不在の場合があります。
定休日 日曜
インスタグラム
https://www.instagram.com/tatebayashi_anko/
販売予定期間 10月末まで ※なくなり次第終了
情報提供元:ローカリティ!
その魅力を共に愛する仲間を募れる住民参加型・双方向の新しいニュースメディアを目指しています。
- カテゴリ
- [地域情報] 旅行・レジャー