• トップ
  • ビジネス・キャリア
  • 【ビジョナリー・カンパニー2解説①】「Good is the enemy of Great」── 飛躍の起点は『規律ある人材』にある

【ビジョナリー・カンパニー2解説①】「Good is the enemy of Great」── 飛躍の起点は『規律ある人材』にある

見出し画像
 
【ビジョナリー・カンパニー2解説①】「Good is the enemy of Great」── 飛躍の起点は『規律ある人材』にある

画像


「良好は偉大の敵」

ジム・コリンズ著『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』(原題:Good to Great、2001年)。前作『ビジョナリー・カンパニー』が「永続する偉大な企業の習慣」を扱ったのに対し、本書は「そもそも『良い』会社が『偉大な』会社にどう飛躍するのか」というジャンプの瞬間に焦点を当てます。
コリンズは冒頭でこう書きます。「Good is the enemy of Great(良好は偉大の敵)」。多くの会社が偉大に至れない最大の理由は、現状が『そこそこ良い』からだ── 強烈な問題提起です。
本書の調査対象は、15年以上にわたって株式運用成績が市場平均以下だった会社が、ある転換点を境に市場平均の3倍以上に跳ね上がった11社。アボット、サーキット・シティ、ファニーメイ、ジレット、キンバリー・クラーク、クローガー、ニューコア、フィリップ・モリス、ピットニー・ボウズ、ウォルグリーンズ、ウェルズ・ファーゴ。さらに「同業種で飛躍しなかった企業」を比較対象に置いて差を抽出するという、コリンズらしい手法を取っています。
本稿ではポッドキャスト「二番経営」#102をベースに、飛躍を支える概念のうち最も重要な「規律ある人材」── 第5水準リーダーシップと『バスの乗客』問題── を解説します。

概念①:第5水準のリーダーシップ
本書最大の発見の一つが、飛躍企業のトップは例外なく「第5水準」だったという事実です。
第5水準のリーダーには2つの矛盾する資質が同居しています。一つは「個人としての謙虚さ」。もう一つは「職業人としての強い意志」です。華やかなカリスマでも、派手なスター経営者でもない。会社を主語にして語り、成果を周囲に帰し、失敗の責任は自分が引き受ける── そういう静かなリーダー像です。
ただし「控えめ」と「弱い」は違います。第5水準のリーダーは、必要な決断からは決して逃げません。むしろ厳しい決断を冷徹に下せる人物です。
現代企業で典型的な事例は、AppleのティムCookでしょう。ジョブズという「第4水準的カリスマ」の下でNo.2を務め、オペレーション・サプライチェーンの卓越性で会社を支えた。CEO就任後は典型的な第5水準的振る舞い(謙虚・堅実・仕組みによる成果)でAppleを時価総額世界一に押し上げました。No.2時代に培った第5水準の資質が、トップになって花開いた好例です。
もう一人挙げるなら、Microsoftのサティア・ナデラ。ビル・ゲイツやスティーブ・バルマーという強烈なカリスマの下でNo.2的ポジションにいた彼が、共感と謙虚さを掲げて同社を再び世界一の時価総額に押し上げました。

画像

概念②:誰をバスに乗せるか
もう一つの衝撃的な発見が、これです。
通常の経営学は「ビジョン→戦略→人材」の順で考えます。しかし飛躍企業は逆でした。「適切な人材をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきかを決める」── 戦略より先に人を決めたのです。
コリンズはこう書きます。「企業の飛躍に際して、人材は最重要の資産ではない。適切な人材こそが、もっとも重要な資産なのだ」。微妙ですが決定的な違いです。
なぜ「人」が先か。理由は3つあります。第一に、環境変化に対応しやすい。目的地が変わっても適切な人材なら順応できる。第二に、動機付けや管理の問題が起きにくい。第三に、不適切な人がいると、正しい方向が分かっても実行できない。
「経営とは人事だ」── 本書はこのシンプルな真実を、データで裏付けたのです。

画像

おわりに:No.2にとっての含意
二つの概念を並べると、興味深いことに気づきます。第5水準のリーダーシップは、実はNo.2の理想的な在り方そのもの。「成功は周囲のおかげ、失敗は自分の責任」というマインドセットは、優れたNo.2が日常的に体現していることです。
また「バスの乗客管理」を最も直接的に担うのは、トップではなくNo.2であることが多い。採用、配置、時には退出の意思決定の実務は、現場との距離が近いNo.2の役割になります。
問いはシンプルです。あなた自身は第5水準を体現できているか。バスの乗客管理から逃げていないか。次回(#103連動)は「規律ある思考」── 厳しい現実の直視とハリネズミの概念に進みます。

本記事の内容はポッドキャスト番組「二番経営」でもテーマとして取り上げています。さらに詳しい内容はぜひポッドキャストでお聴きください。

 

 

ポッドキャスト「二番経営」のご案内

「二番経営 〜No.2の悲喜こもごも〜」は、なかなか表に出ない組織の「二番=No.2」をテーマに、トップのビジョンの実現の仕方や、この仕事の面白さ・大変さなど、「No.2の悲喜こもごも」を毎週水曜日に新エピソードを配信リスナーの皆さんにお届けしています。

Apple Podcast

Spotify

Youtube Music

番組の最新情報やご感想はこちら

  • Xアカウント(旧Twitter):
    https://x.com/KatsumiYasuhide

  • お便りサイトURL:
    https://docs.google.com/forms/d/e/
    1FAIpQLSfIAssluiJoSAgI6li4Vj1r8m
    ZcoSc3LgdVuNptDV4kkJ5Atg/viewform

ぜひフォローやコメントをお待ちしています。

著者:勝見 靖英(株式会社オーツー・パートナーズ取締役)

(株)オーツー・パートナーズ 取締役■Podcast「二番経営 〜組織を支えるNo.2の悲喜こもごも〜」パーソナリティ■コンサルタント歴20年以上、管掌業務:経営企画/会計/人事総務/組織開発/IT/マーケティング/広報等
カテゴリ
ビジネス・キャリア

関連記事

関連する質問