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北海道と九州にDMATの広域拠点が新設される今、個人が備えるべき「災害医療の知識」

災害医療の重要性が改めて高まっている理由

日本では地震や豪雨、台風、大雪などの自然災害が毎年のように発生しており、防災に対する意識は以前より高まりつつあります。その中で注目されているのが、災害発生直後に被災地へ向かい、救命活動や医療支援を行う「DMAT(災害派遣医療チーム)」の存在です。現在、北海道と九州にDMATの広域拠点を新たに整備する動きが進められており、日本の災害医療体制は次の段階へ移行しつつあるといえます。

背景には、南海トラフ巨大地震や首都直下地震への警戒だけでなく、豪雨災害や豪雪災害の激甚化があります。2024年の能登半島地震では、道路の寸断や通信障害によって支援が思うように届かない地域もあり、医療機関そのものが被災する状況も発生しました。こうした事例を見ると、医療体制の強化だけでなく、「支援が来るまでをどう過ごすか」という視点も重要になっているのではないでしょうか。

DMATの拠点整備は、広域災害時でも迅速に医療支援を届けるための対策として期待されていますが、どれだけ体制が整っても、大規模災害ではすべての地域へ同時に支援を行うことは簡単ではありません。だからこそ、個人単位で災害医療の知識を持ち、自分や家族を守る準備を進めておく必要があると考えられます。

 

災害発生後72時間をどう乗り切るか

災害医療では「発災から72時間」が重要だと言われています。この時間帯は救命率に大きく関わるため、医療や救助活動が集中する期間でもあります。しかし、被害が広範囲に及ぶ災害では、支援がすぐに到着するとは限りません。内閣府の南海トラフ巨大地震の被害想定では、最大で32万人以上の死者が想定されており、医療機関への負荷は極めて大きくなることが見込まれています。

そのため、各家庭で最低3日、できれば1週間程度の備蓄を行うことが推奨されています。特に重要なのが水の確保です。成人が1日に必要とされる飲料水は約3リットルとされており、4人家族なら3日間で36リットル程度が必要になります。食料は準備していても、水が不足する家庭は少なくないと考えられます。

また、常備薬や持病の薬も欠かせません。高血圧や糖尿病など、継続的な服薬が必要な人にとって、災害による医療停止は深刻な問題につながります。災害時には、かかりつけ病院へ行けなくなる可能性もあるため、普段から薬を少し多めに管理しておくことが安心材料になるのではないでしょうか。ここで見落とされがちなのが「お薬手帳」です。避難先で別の医療機関を受診する場合、服用中の薬が分からないと適切な処方が難しくなるケースがあります。紙だけでなく、スマートフォンで撮影して保存しておく方法も有効だと思われます。

避難生活では、ケガだけでなく体調悪化も増えやすくなります。睡眠不足やストレス、水分不足によって持病が悪化するケースもあり、熊本地震では災害関連死が大きな課題として残りました。防災というと非常食や防災グッズに目が向きやすいものの、「健康を維持する準備」も同じくらい重要だといえます。

 

北海道と九州にDMAT拠点が必要とされる背景

北海道と九州が注目されている背景には、日本特有の地理的リスクがあります。北海道では冬季災害への対応が大きな課題です。豪雪や吹雪による孤立地域発生の危険性があり、低体温症リスクも高まります。2022年の大雪では車両立ち往生が相次ぎ、救急搬送に影響が出ました。寒冷地では通常の災害対策だけでは不十分であり、防寒対策や燃料確保も命を守る要素になります。

一方、九州は豪雨災害や火山活動のリスクを抱えています。熊本地震では関連死が直接死を上回り、避難生活による健康悪化が深刻化しました。特に高齢者は長期避難によって体力低下や肺炎を引き起こしやすく、災害関連死対策が重要課題として残されています。DMAT広域拠点の新設は、こうした地域特性に対応するためのものと考えられます。空路、陸路、海路を組み合わせた広域搬送体制を強化し、被災地外への患者移送を迅速化する狙いがあるのでしょう。医療資源を一極集中させず、全国で分散配置することでリスク低減が期待されています。

ただし、行政と医療機関だけで災害対応を完結させることは難しい時代です。人口減少によって地方医療は慢性的な人手不足に直面しています。災害時には通常医療も維持しなければならず、現場負担は極めて大きくなると思われます。だからこそ、住民一人ひとりが「自分の健康を守る準備」を持つ必要性が高まっているのではないでしょうか。

 

災害医療を“特別な知識”にしないために

災害医療という言葉を聞くと、専門家だけの世界に感じる人も多いかもしれません。しかし本来は、日常生活と地続きの知識です。持病の薬を少し多めに備蓄する、家族で避難先を確認する、モバイルバッテリーを充電しておく、脱水症状の危険性を理解する。こうした行動も立派な災害医療対策といえます。

特に重要なのは「平時から健康状態を整えておくこと」です。高血圧や糖尿病は災害ストレスによって悪化しやすく、避難所生活では血栓症リスクも高まります。熊本地震後には車中泊によるエコノミークラス症候群が多数報告されました。適度な運動、水分補給、睡眠確保は防災対策でもあると考えられます。

今後、日本では首都直下地震や南海トラフ巨大地震への警戒が続くと見込まれています。災害医療体制の強化は進むでしょう。しかし、本当に重要なのは「助けが来るまでの時間」をどう生き抜くかです。北海道と九州のDMAT広域拠点新設は、日本の災害対策が次の段階へ進み始めた象徴ともいえるでしょう。その変化を行政任せにするのではなく、個人の知識と備えにつなげることが、これからの防災に求められているのかもしれません。

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