若年層のNISA前向き層4割超、金融教育が資産形成を後押しする理由
若い世代ほどNISAに前向きという結果
三井住友トラスト・資産のミライ研究所が2026年1月に行った調査で、興味深い結果が出ました。18歳から69歳まで1万人を超える人に聞いたところ、NISAをすでに使っている人と、これから使ってみたいと考えている人を合わせた割合が、18〜39歳では4割を超えていたそうです。実際に使っている人だけを見ると全体で22.3%にとどまるので、これから使いたいと思っている人まで含めると、その1.6倍近くまで市場が広がる余地があるといえます。20代に絞ると、実際の利用者に対して意欲を持つ人の数はおよそ2倍に達しており、若い世代の関心の高さがうかがえます。学生時代からお金の話に触れる機会が増えたことで、資産形成への抵抗感が薄れてきているのではないでしょうか。
一方で、60代になると様子はがらりと変わります。「使うつもりはない」と答えた人が47.3%にのぼり、若年層とは対照的な結果になりました。NISAという制度自体を知っている人は57.7%と半数を超えているのに、実際に使っている人は22.3%しかいません。特に60代は制度を知っている割合が60.3%と全年代で一番高いにもかかわらず、利用率は21.3%とふるわず、知っているのに使わない人の割合が最も大きい世代になっています。知ってもらうだけでは行動にはつながらず、もう一押し必要な段階にあるように見えます。制度の中身を説明するパンフレットを配るだけでなく、実際にどう始めればいいのかを見せる場が求められていると考えられます。
金融教育を受けた人ほど利用率が高い理由
調査結果を見ていくと、金融について学んだ経験がある人ほど、NISAを実際に使っている割合が高いことが分かります。特に大学や専門学校の在学中、あるいは社会人になってから学んだ層で、その差がはっきりと表れています。ただしここで注意したいのは、これは「教育を受けたから使うようになった」と単純に言い切れる話ではないという点です。大学生や社会人になる時期は、自分名義で証券口座を開けるようになるタイミングとも重なります。学んだ内容そのものより、口座を開ける環境が整ったことが後押ししている可能性も十分にあり、教育の効果と年齢のタイミングは切り分けて考える必要があるでしょう。数字だけを見て「教育すれば必ず利用が増える」と決めつけるのは早計だと思われます。
とはいえ、知識と行動の関係を裏づけるデータも存在します。自分の金融リテラシーを「かなり高い」と評価する人では55.2%、「高い」と評価する人では57.5%が、税制優遇制度を何かしら使っているという結果が出ています。会社の制度をきっかけに資産形成に触れた人ほど、自分から申し込むタイプの制度にも手を伸ばしやすくなる傾向も見られ、企業型DCだけに入っている人のうち約5割、20代に限れば7割近くがNISAも併用しているそうです。制度の入り口がひとつ増えるだけで、次の制度への心理的なハードルが下がっていく様子が読み取れます。ひとつの制度に触れた経験そのものが、次の一歩を軽くする効果を持っているのではないでしょうか。
将来を描く人ほど一歩を踏み出しやすい
もうひとつ、データからはっきり見えてくるのが、将来の家計プランを立てているかどうかの違いです。老後や教育費、住宅購入といった将来の出来事を具体的にイメージしている人ほど、NISAを含めた資産形成に積極的な姿勢を見せています。反対に、将来のプランを特に考えていない人では、6割以上が「NISAを使うつもりはない」と答えており、ここに大きな分かれ目があるように思えます。制度そのものへの理解よりも先に、自分の将来がどう変わっていくかを思い描けているかどうかが、行動を左右しているのかもしれません。
年収別のデータを見ても、同じような傾向が確認できます。年収1,000万円以上の層では60.2%が何らかの税制優遇制度を使っており、そのうち30.5%はNISAと企業型DCの両方を活用しています。収入が高いから当然という見方もできますが、それだけでは説明がつきません。将来設計への意識の高さが、結果的に制度活用の広さにもつながっていると考えられます。年収の水準にかかわらず、将来をどう思い描くかという姿勢そのものが、資産形成への距離を縮める鍵になっているように見えます。
これからNISAとどう向き合えばいいか
ここまでの結果を踏まえると、大切なのは「制度を知る」ことよりも「自分の将来をどう描くか」だとわかります。まだNISAを始めていない人は、いきなり銘柄選びから入るのではなく、5年後や10年後にどんな暮らしをしていたいかを紙に書き出してみることから始めてみると、案外スムーズに次の一歩が見えてくるはずです。すでに会社の制度でDCに加入している人であれば、NISA口座を追加で開設するだけで、資産形成の選択肢を大きく広げられます。制度をひとつ増やすたびに、将来の家計にとって使える手段が着実に厚みを増していくことが期待されます。
国は2027年末までにNISA口座数を3,400万口座にする目標を掲げていますが、2025年12月末時点では約2,825万口座にとどまっています。目標達成にはあと一段の広がりが必要ですが、若い世代の関心の高さを見る限り、その伸びしろは十分に残されていると見込まれます。制度を難しく捉えすぎず、まずは少額から試してみるという姿勢が、多くの人にとって現実的な出発点になるでしょう。年代に応じたきめ細やかな情報発信と、将来を具体的にイメージできる機会づくりが、この先の普及を左右する鍵になっていくと考えられます。
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