働き方改革助成金、個人事業主でも対象になる?

多様な働き方が広がる現代において、「個人事業主」というスタイルを選ぶ人が増えています。時間や場所に縛られない自由な働き方は魅力的ですが、法人と比べて公的支援を受けにくいという課題もあります。そんな中で注目されているのが「働き方改革助成金」です。
この制度は、中小企業や事業者の労働環境改善や生産性向上を目的とした助成制度ですが、実は個人事業主でも一定の条件を満たせば対象になる可能性があります。

 

働き方改革助成金とは?制度の概要と背景

働き方改革助成金は、厚生労働省が推進する「働き方改革」を後押しするために設けられた制度です。企業や事業者が、職場環境の改善や生産性向上の取り組みを行う際の費用の一部が補助されます。2025年6月時点で代表的なコースには以下のようなものがあります。
(※この内容は年度ごとの予算編成や政策変更により、内容や支給金額、対象範囲が変更されることがあります。)

  • 労働時間短縮・年休促進支援コース:時間外労働の削減や有給取得促進に対して、最大240万円の助成が可能です。

  • テレワークコース:ICT導入や在宅勤務環境の整備を支援するもので、最大350万円の補助があります。

  • 職場意識改善コース:健康管理、メンタルヘルス対策、職場の人間関係改善などに活用でき、50万~100万円が支給されます。

これらの制度は基本的に中小企業が対象ですが、雇用体制が整っていれば、個人事業主でも対象になるケースもあります。

 

個人事業主も申請可能?その条件とは

一見、法人を対象とした制度に思えるこの助成金ですが、実は個人事業主でも条件を満たせば申請可能です。ただし、以下の3つの条件が重要となります。
(※これらの条件は、今後の法改正や制度見直しにより細かい条件が変更される可能性もあります。)

  1. 従業員を雇っていること
    助成金の多くは、従業員の労働環境改善を目的としています。そのため、フリーランスや一人事業主ではなく、1人以上の雇用契約を結んだ従業員がいることが必須条件となります。アルバイトやパートでも構いませんが、労働条件が明確である必要があります。

  2. 労働保険に加入していること
    雇用保険および労災保険に加入していることは、労働者を守る法的責任の一部です。これらに未加入のままでは助成対象にならないため、労務管理の整備は必須となります。

  3. 開業届の提出が済んでいること
    個人事業主として正式に認められるには、税務署への開業届提出が必須です。青色申告をしている場合は、帳簿の整備や財務管理面でも信用を得やすくなります。

 

実際に使える助成金と申請の注意点

助成金を受けるには、制度内容を正確に理解した上で、事前準備と計画的な取り組みが欠かせません。ここでは、特に個人事業主が気をつけるべきポイントを見ていきます。

  • 導入前の申請が必須:助成金の多くは、制度導入「前」に申請・計画書提出が必要です。たとえば、テレワーク機器を購入した後に申請しても支給対象外となる場合があります。

  • 取り組みの実施と実績報告:助成金の支給は「成果報告」ありきです。導入した制度や設備が実際に運用され、従業員の労働環境が改善されたことを証明する書類(領収書、出勤簿、改善前後の記録など)が求められます。

  • 書類不備・手続き漏れに注意:とくに個人事業主は書類作成や経理が一人で完結することが多く、負担が大きくなりがちです。労働局や商工会議所などの無料相談窓口を活用しながら進めることをおすすめします。

なお、補助金や融資制度と併用できるケースもあるため、他制度との重複申請についても事前に確認しておくと安心です。
また、これらの手続きの流れや必要書類の内容は、年度が変わると申請様式や評価基準が見直されることもあります。申請前には必ず最新版の要項をご確認ください。

 

未来志向の働き方と経営を支えるために

個人事業主にとって、働き方改革助成金は「自分には関係ない」と思われがちですが、実は従業員を雇っていたり、新しい働き方を導入したいと考えていたりする事業者にとっては、非常に有効な支援制度となり得ます。たとえば、リモートワークの導入や職場のICT化、時短制度の整備などによって、従業員の満足度が上がり、結果として事業の生産性向上や定着率改善にもつながります。

助成金の活用は、単なる資金補填にとどまらず、事業主自身の経営方針やマネープランを見直すきっかけにもなります。副収入の確保や税金・控除制度の最適化、将来的な法人化も視野に入れて、柔軟な働き方と経営体制を整えることが今後の成長につながるでしょう。
働き方が多様化する今だからこそ、制度を正しく理解し、使えるものは積極的に活用することが重要です。ぜひ一度、自身の働き方や事業の在り方を見つめ直し、「助成金」という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

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