会議を減らした企業と増やした企業、生産性の差はどこに生まれたのか

会議を減らす企業は増えても、本当に成果につながっているのか

会議を減らす会社が増えている一方で、それで本当に成果が出ているのかと聞かれると、はっきり答えられる人は少ないでしょう。会議の数を減らせばいいという話ではなく、会議という場を「物事を決める場所」として作り直せた会社だけが、結果として生産性を伸ばしているように見えます。

そもそも会議に使われている時間は、思った以上に多いものです。パーソル総合研究所が立教大学の中原淳教授と一緒に行った調査では、一般社員で週3時間を超え、係長クラスで6時間、部長クラスになると8.6時間という社内会議の時間が出ています。これを1年分にすると、一般社員で154時間、部長クラスでは434時間を超える計算です。部長クラスであれば、年間の労働時間のおよそ4分の1が会議に消えていることになりますし、社員が1万人を超えるような大企業だと、上司層の会議時間は630時間にまで膨らむというデータもあります。
この数字の大
きさ自体は事実ですが、ここで多くの人が「会議が長い会社ほど生産性が低い」と早合点してしまいます。本当の分かれ道は、もっと別の場所にあります。

 

会議が減ると何が変わるのか

会議を減らした会社の生産性が上がりやすいのは、時間が浮いたからではなく、誰が決めるのかがはっきりするからです。無駄な会議の典型として、開催する目的があいまいなことが挙げられますが、目的がぼやけてしまう会議には、たいてい「この場で誰が決めるのか」が事前に決まっていないという共通点があります。決める人が決まっていない会議では、参加者全員が一言ずつ感想を求められ、結局結論が出ないまま時間切れになりがちです。会議を減らすという行動は、こうした「誰も決めない場」をそもそも作らないようにすることで、決める責任を一人ひとりやチームに戻す効果があります。つまり会議を減らす本当の意味は、時間を節約することよりも、誰が責任を持つのかをはっきりさせることにあると言えます。

人の集中力にも限界があります。一般的に集中力が続くのは最大でも90分程度とされていて、大学の講義でも一番長いものが90分に設定されているのはそのためです。会議が長引くほど参加者の集中力は下がっていき、後半になるほど発言も決定の質も落ちていくと考えられます。会議を減らした会社の多くは、こうした時間の限界を踏まえて議題ごとに時間を区切り、限られた時間でも決定の質を落とさない工夫を重ねているようです。

 

会議が増えると現場で起きていること

逆に会議を増やした会社の生産性が伸びにくいのも、同じ理屈の裏返しです。ある会社の予定表をデータマイニングで分析した調査では、週1回の経営会議のために年間およそ7000時間が使われ、その会議の準備として連鎖的に行われる打ち合わせまで含めると、年間で30万時間、業務時間のおよそ15パーセントが会議に消費されているという結果が出ています。こうした連鎖が起きるのは、上の会議で決まったことを下の階層がそれぞれ自分なりに解釈し、確認し合うためにさらに会議を開く必要が出てくるからでしょう。
これは決める力が現場に渡されていない状態で、確認のための会議が雪だるま式に増えていく構造であり、会議を増やすほど一人ひとりの決める力がむしろ薄れていく悪循環に陥っているように見えます。

実際、あるアンケート調査では回答者の47パーセントが、会議は一般的に非生産的だと感じていると答えています。この数字は、裏を返せば「決める力のない場に時間を取られている」という不満の表れと読めるでしょう。テレワークの広がりも会議が増えた一因と言われていて、内閣府の調査によると2022年6月時点でのテレワーク実施率は全国で30.6パーセント、東京都23区では50.6パーセントにまで上っています。
出社の機会が減った分を会議で埋め合わせようとした会社が一定数あったことは想像に難くありません。ただこれは経営判断というより、環境の変化に合わせて会議が増えたケースに近いものでしょう。

 

会議の数より先に決めるべきこと

会議を減らした会社と増やした会社の差を作っているのは、会議の数や時間の長さではなく、組織のどこに決める力があるかという一点に尽きるようです。会議を減らしたいと考えている会社がまずやるべきは、会議の数をただ削ることではなく、それぞれの会議で「誰が何を決める場なのか」を最初に言葉にしておくことではないでしょうか。
日本の会社員が1週間に会議へ使う時間は平均6.4時間ともいわれていますが、この時間をどう使うかという判断こそが、会社の生産性を大きく左右する要因になっていると言えます。決める力を整理しないまま会議だけ減らしてしまうと、決めるべきことが宙に浮き、結局は個別の確認作業や連絡が増えるだけで、見かけの会議時間は減っても実際の負担は変わらないという落とし穴が待っているはずです。

会議を減らすにせよ増やすにせよ、まず誰がこの場で決めるのかを決めておくこと、それが生産性の差を生む本当の分かれ道になるでしょう。

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