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Z世代が氷河期世代から学ぶこと、会社に人生を預けない働き方とは

氷河期世代は「我慢すること」を選んだのか

就職氷河期世代とZ世代では、仕事や会社に対する距離感がかなり違って見えます。長く勤めることを前提に働いてきた氷河期世代に対し、Z世代は給与や働きやすさを確認し、自分に合わなければ転職することにも比較的抵抗がありません。その姿だけを比べれば、Z世代から氷河期世代は「会社に尽くしすぎた世代」と映り、反面教師のように受け取られることもあるでしょう。しかし、氷河期世代が好き好んで我慢を選んだと見るのは少し乱暴です。政府が就職氷河期として扱う時期は、おおむね1993年から2004年ごろ。バブル崩壊後に企業が採用を抑え、就職したくても希望する仕事に就けない若者が多く生まれた時代でした。

その影響は何十年も続いています。政府資料によると、2019年から2024年までに氷河期世代の正規雇用者は11万人、役員は20万人増加しました。一方、2024年時点でも不本意な非正規雇用者は35万人、無業者は44万人いるとされています。 当時は求人が少なく、正社員になれたとしても「辞めた後に次の会社へ入れるか分からない」という不安がありました。会社を辞めずに耐えることは、価値観というより生活を守るための現実的な選択だったケースも多かったと考えられます。

 

Z世代が避けたいのは努力より「会社への依存」

一方のZ世代は、仕事そのものを嫌っているわけではありません。ヒューマンホールディングスが2025年にZ世代1,000人を対象として行った調査では、「自分らしい働き方」として「ワークライフバランスを保ちながら働く」が18.1%で最多となり、「仕事とプライベートをきっちり分ける」が15.9%で続きました。「多少プライベートを犠牲にしても目標のために働く」は2.4%にとどまっています。仕事を人生の中心に置くより、自分の生活と無理なく両立させたいという感覚が強いことがうかがえます。

興味深いのは、Z世代が理想だけを追っているわけではない点です。日本財団が2025年に17~19歳の1,000人を対象として実施した調査では、入社する企業を選ぶ条件として「給与や待遇」が52.6%で最多でした。「福利厚生」が35.7%、「ワークライフバランス」が31.0%となっています。働くことに不安を感じている人も78.2%に達しており、若者が楽をしたいだけとは読み取れません。 むしろ、生活を犠牲にして会社へ尽くしたとしても、その会社が将来まで自分を守ってくれるとは限らないという感覚が背景にあると思われます。

 

なぜ氷河期世代が反面教師に見えるのか

Z世代から見て避けたいと感じやすいのは、長く働くこと自体ではなく、一つの会社に人生を預けすぎる働き方でしょう。昇給や昇進を期待して長時間働き、多少の不満があっても退職せず、会社への忠誠心を評価してもらう。こうした働き方が十分に報われなかったケースを氷河期世代は経験しています。ただし、「その姿を見たからZ世代が変わった」と直接結びつけることはできません。終身雇用への意識の変化、転職サービスの普及、SNSによる情報量の増加など、複数の要因が重なって現在の仕事観がつくられたと見るほうが自然でしょう。

そして、両世代の差を生んでいる大きな要素が、会社と働く人の力関係です。仕事が少なければ企業が応募者を選びやすくなり、働く側は多少条件が悪くても会社に残ろうとします。反対に、人手不足が強まれば企業も若い人材を確保する必要があり、働く側は給与、休日、勤務地などを比較しやすくなります。「我慢する氷河期世代」と「すぐ辞めるZ世代」という性格の違いに見えても、実際には「辞めた後に次の仕事があるか」という条件が行動を左右している面が大きいといえます。

 

Z世代もいつまでも「選ぶ側」とは限らない

とはいえ、Z世代が全員転職を望んでいるわけでもありません。日本財団の調査では、理想の働き方として「定年まで一つの会社で働き続けたい」と答えた人が26.1%、「より良い就業条件や職場環境を求めて何度か転職したい」が24.2%でした。 両者はほぼ同じ水準であり、若者が一斉に終身雇用を否定しているとはいえません。Z世代にも安定を求める人、転職したい人、まだ決めていない人がいます。氷河期世代の中にも転職や独立によってキャリアを切り開いた人がおり、生まれた年代だけで働き方を決めつけるのは実態から離れてしまいます。

Z世代の現在の働き方も、将来まで正解であり続ける保証はありません。景気後退によって求人が減れば、転職のしやすさは変わる可能性があります。AIの普及によって仕事そのものが変われば、会社を自由に選ぶ前に、自分のスキルを選ばれる状態に保つ必要も出てくるでしょう。氷河期世代がZ世代に伝えているのは、「我慢して働いてはいけない」という教訓だけではありません。働き方の正解は、景気や雇用環境によって簡単に変わるという現実でもあります。氷河期世代を過去の失敗例として眺めるより、会社に頼りすぎず、一方で転職のしやすさにも頼りすぎない。その距離感を考える材料として見るほうが、Z世代にとって価値があるのではないでしょうか。

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