住宅展示場の来場者が約3割減少、マイホーム探しはネット中心の時代へ
住宅展示場に行く前に、住宅会社を選ぶ時代へ
マイホームを建てようと思ったら、まず住宅展示場へ行く。そんな家づくりの進め方が変わりつつあります。以前はモデルハウスを見学しながら住宅会社を比較するのが一般的でしたが、今ではスマートフォンがあれば、間取りや価格、住宅性能まで簡単に調べられます。SNSには実際に家を建てた人の感想や失敗談が並び、動画を見れば室内の雰囲気もある程度つかめます。住宅展示場に行く前から、候補となる会社を絞り込めるようになったわけです。住宅生産振興財団と住宅展示場協議会の集計によると、2024年度の総合住宅展示場への来場者数は300万6,554組で、前年度より5.5%減少しました。2018年度には400万組を超えていたことから、6年間で約3割減った計算になります。
もっとも、来場者が減った理由をインターネットの普及だけで説明することはできません。展示場やモデルハウスの数が変化しているほか、住宅価格の上昇によって購入をためらう人もいるでしょう。ただ、住宅会社との出会い方が変わっていることは見逃せません。かつては展示場で営業担当者の説明を聞き、そこから比較検討が始まりました。今は自宅で情報を集め、気になる会社だけに問い合わせることもできます。住宅展示場が家づくりの入口だった時代から、ある程度調べたうえで実物を確かめに行く時代へ。来場者数の減少には、こうした住宅選びの変化も関係していると思われます。
住宅価格の上昇が変えたマイホーム選びの基準
住宅購入者が慎重になっている背景には、建築費用の上昇があります。建築資材や人件費が高くなり、以前と同じ予算では希望する住宅を建てにくくなっています。住宅生産振興財団などが実施した2025年度の来場者アンケートでは、平均建築予算が3,127万円となり、前年度の3,028万円から約100万円増えました。平均世帯年収も907万円に達しています。いずれも住宅展示場を訪れた人を対象とした数字ですが、家づくりにまとまった資金が必要なことが分かります。住宅ローンを35年間返済するとすれば、借入額が100万円増えるだけでも毎月の負担は変わります。住宅を選ぶ際に、デザインや設備だけでなく、建築費用や将来の維持費まで気にする人が増えるのも自然なことでしょう。
こうしたなか、住宅会社を比較する手段としてインターネットが役立っています。公式サイトで施工事例を調べ、SNSで住み心地を確認し、オンライン相談で予算について質問する。展示場を何カ所も回らなくても、各社の特徴を比べられます。ただし、ネット上の情報だけで判断するのは危険です。住宅会社によって価格に含まれる工事の範囲が異なり、建物本体の価格が安く見えても、外構工事や地盤改良、各種申請費用などを含めると予算を超える場合があります。SNSで紹介される住宅も、土地の条件や建築時期が違えば同じ金額で建てられるとは限りません。手軽に情報を集められるようになった一方で、何を比較すればよいのか、購入者自身が判断しなければならない場面も増えています。
オンラインで住宅契約はできる?便利さの裏に残る課題
住宅購入のオンライン化は、物件探しや相談だけにとどまりません。契約に関する手続きも、少しずつインターネットで進められるようになっています。2022年5月の宅地建物取引業法の改正によって、不動産取引では重要事項説明書や契約締結時書面などを、相手方の承諾を得て電子的に交付できるようになりました。重要事項説明もテレビ会議などで受けられるため、土地や建売住宅の購入では、店舗へ足を運ぶ回数を減らせますし、遠方の物件を探している人や、仕事や育児で忙しい人にとっては便利な仕組みです。
ただし、注文住宅の建築請負契約は不動産売買契約とは異なり、同じ制度がそのまま適用されるわけではありません。土地の確認や住宅ローンの手続き、建築内容の打ち合わせなどもあるため、すべてをオンラインだけで済ませられるとは限らないのが現状です。
実際、住宅や不動産の契約手続きが一気にオンラインへ移ったわけではありません。国土交通省の2024年度調査では、回答した宅地建物取引業者1,815件のうち、直近1年間にオンラインで重要事項説明を実施した企業は13%、書面の電子化を実施した企業は9%でした。制度が整っていても、利用はまだ一部にとどまっています。住宅は数千万円単位の買い物だけに、契約内容を十分に理解しないまま手続きを進めるわけにはいきません。オンライン相談では気軽に質問できる反面、図面や契約書の細かな内容を確認しにくいと感じる人もいるでしょう。画面越しでも費用や保証条件について丁寧な説明を受けられることが、安心して契約するための条件になります。オンライン化が進むかどうかは、手続きの便利さだけでなく、購入者の不安をどこまで解消できるかにも左右されそうです。
住宅展示場はなくならない?これから変わる役割
インターネットで住宅を比較できるようになっても、実際の建物を見なければ分からないことは少なくありません。天井の高さや部屋の広さ、床材の感触、窓から入る光の具合などは、写真や動画だけでは判断しにくい部分です。断熱性や気密性についても、数値を確認するだけでなく、室内の温度や快適さを体感したい人はいるはずです。
2025年度の住宅展示場来場者アンケートでは、展示場に満足した人が87.9%に達しました。住宅会社を信頼できる条件として「信頼できる営業担当がいる」を挙げた人も73.9%となっています。展示場を訪れた人に限った調査ではありますが、実物を見たり、担当者と直接話したりすることには、今も十分な価値があるといえます。
これからの住宅展示場は、住宅会社を知るための場所から、購入前の疑問を解消する場所へと役割が変わっていくかもしれません。インターネットで候補を絞り、オンライン相談で資金計画を確認したうえで、気になる住宅だけを見学する。そんな家づくりなら、展示場を何度も回る負担を減らしながら、実物を確認する安心感も得られます。住宅会社にとっても、豪華なモデルハウスを見せるだけではなく、現実的な予算でどんな家が建つのか、住み始めてからどの程度の費用がかかるのかを具体的に説明することが求められるでしょう。
住宅展示場離れは、住宅を実際に見たい人がいなくなったという話ではありません。家づくりの情報を集める場所が変わり、展示場へ行く目的も変化しているということです。オンラインで比較できることは自宅で済ませ、現地でしか分からないことには時間をかける。住宅価格が上昇する時代だからこそ、こうした無駄の少ない住宅選びが広がっていくのではないでしょうか。
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