SNSで増え続ける「界隈」とは?細分化するオンラインコミュニティを読み解く

気づけば、自分にも「界隈」がある

「美容界隈」「投資界隈」「推し活界隈」「ゲーム界隈」など、SNSでは「○○界隈」という言葉を日常的に見かけるようになりました。ここでいう界隈は、昔からあるオンラインコミュニティと少し性格が違います。会員登録をしたり、グループへの参加を申請したりする必要はありません。同じ投稿を見ている、似たアカウントをフォローしている、同じ言葉やハッシュタグを使っている。それだけでも、いつの間にか特定の人たちと同じ情報空間を共有するようになります。誰がメンバーなのか明確ではなく、入るのも離れるのも自由。この境界の曖昧さが「界隈」の大きな特徴といえるでしょう。

背景には、SNSが生活に深く入り込んだことがあります。ICT総研の2024年度調査では、日本のSNS利用者は2024年末時点で8,452万人、国内インターネット利用者に占める割合は79.0%と推計されています。2026年末には8,550万人、80.1%まで伸びる見通しです。 ただし、SNS利用者が増えたから界隈が増えた、と単純には結びつけられません。より大きな変化は、同じサービスを使っている人同士でも、目にする情報が大きく異なるようになったことです。数千万人がひとつのSNSを利用していても、その内側では無数の小さな世界がつくられています。

 

同じSNSなのに、見えている世界はまるで違う

インターネットの利用が生活の一部になった現在、SNSは情報収集だけでなく、人とのつながりをつくる場所として定着しています。総務省の調査をもとにした「日本の統計2026」によると、2024年のSNS利用率は全体で79.0%でした。年代別では13~19歳が88.1%、20~29歳が92.6%、30~39歳も89.9%に達しています。若い世代では、SNSを使うこと自体が特別な行動ではなく、日常的なコミュニケーションの一部になっているといえます。

ただ、同じSNSを使っていても、全員が同じ情報を見ているとは限りません。現在のウェブサービスでは、閲覧履歴やフォロー、検索、反応した投稿などをもとに、ユーザーごとに表示されるコンテンツが変わります。料理が好きな人にはレシピや飲食店の投稿、ゲームが好きな人には実況や攻略情報、美容に関心がある人にはコスメやスキンケアの情報が集まりやすくなります。利用を続けるほど、自分の関心に合った情報環境ができあがっていく仕組みです。その結果、ひとつの巨大なSNSの中に無数の小さな「界隈」が存在する状態が生まれています。

 

居心地のよさが、その世界の常識になる

界隈が広がる理由は、アルゴリズムだけでは説明できません。そこには、自分の好きなものを理解してくれる人とつながりたいという人間側の気持ちもあります。現実の友人や職場の同僚とは話しにくい趣味でも、SNSなら同じ熱量を持つ相手が見つかります。推し活であれば作品や人物について細かな説明をしなくても会話が成立し、コスメ好きが集まる場所では商品名だけで使用感まで話が進むこともあるでしょう。こうした「説明しなくても分かってもらえる感覚」が、小さなコミュニティの居心地につながっていると思われます。

一方で、交流が続くと界隈独自の言葉や価値観も生まれます。投資界隈と美容界隈では当然話題が違いますが、同じテーマの中でも初心者向け、専門家寄り、節約志向、高価格帯志向など、細かなグループへ分かれていきます。ここまで細分化すると、自分の周囲で頻繁に語られている意見を「世間でも一般的な考え方」と捉えてしまうことがあります。似た価値観の投稿ばかりに触れると、異なる考え方が目に入りにくくなるためです。自分に合う居場所を見つけやすくなった反面、自分が見ている世界は社会全体の一部分にすぎないと意識する必要もあるでしょう。

 

「多くの人に届く」だけでは測れない時代へ

界隈の存在は、買い物やサービス選びにも表れています。以前は、テレビCMや大規模広告を通じて、多くの人に商品名を知ってもらうことが王道でした。SNSでは、必ずしも知名度の高い人が強い影響力を持つとは限りません。ある界隈で信頼されている人が商品を紹介し、それを見た人が試し、感想を投稿する。そんな小さな流れが重なって、商品が広がることもあります。フォロワーが何百万人いる人より、自分と似た悩みや趣味を持つ人の意見を信用する場面も少なくありません。

しかも、多くの人はひとつの界隈だけにいるわけではありません。仕事中はITやマーケティングの情報を追い、帰宅後はゲームや美容、休日は旅行やグルメの投稿を見ることもあります。そのときどきの興味に応じて、複数の小さな世界を行き来するのが今のSNSです。「界隈」という言葉がここまで自然に使われるようになったのは、趣味が細かく分かれたからだけではありません。
人それぞれに違う情報が届き、その中で独自の言葉や価値観、判断基準まで育つようになったことも大きいでしょう。これからのウェブサービスを見るときは、利用者の数だけではなく、その中でどんな小さなコミュニティが生まれているのかに目を向けると、ネット社会の変化がより見えやすくなるのではないでしょうか。

カテゴリ
インターネット・Webサービス

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