40代・50代男性の不調は年齢のせい?見過ごされるLOH症候群

男性にも更年期がある、見過ごされてきた身体の不調

朝起きても疲れが抜けない、以前より仕事に集中できない、些細なことでイライラする。40代や50代の男性がこうした変化を感じても、「年齢のせい」「仕事のストレスだろう」と片付けてしまうことは少なくありません。しかし、その不調には男性ホルモンの低下が関係している場合もあります。女性の更年期障害は広く知られていますが、男性にも更年期に関連する健康問題が起こることは、まだ十分に理解されていません。体調の変化を感じながらも病気を疑わず、医療機関を受診する機会を逃している人がいる可能性も考えられます。

男性更年期に関連する疾患として知られるのが「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症)」です。男性ホルモンのテストステロンが不足し、疲労感や意欲の低下、筋力の衰え、性欲の減退など、心身にさまざまな症状が現れます。女性の場合は閉経を境にホルモンが大きく変化しますが、男性の変化は緩やかで個人差も大きく、症状が現れる時期も一定ではありません。テストステロンは筋肉や骨の維持、性機能などに関わるホルモンですが、数値が低いだけでLOH症候群と診断されるわけではなく、症状と検査結果を合わせた判断が必要です。こうした分かりにくさが、男性更年期を単なる加齢現象として見過ごしてしまう原因の一つになっています。

 

男性更年期を「名前だけ知っている」が60%、理解が進まない理由

男性更年期という言葉は広がりつつあるものの、具体的な症状や対処法まで理解している人は限られています。2026年に公表された国内3社の男性従業員1,811人を対象とする調査では、「名前だけを知っている」が60.0%、「全く知らない」が20.8%でした。同じ調査では、更年期症状を評価する質問票で中等度に該当した人が21.5%、重度が9.4%となり、合計31.0%に達しています。ただし、この数字は自覚症状を評価したもので、LOH症候群と診断された人の割合ではありません。調査対象も特定企業の従業員に限られるため、日本の男性全体にそのまま当てはめることはできませんが、身体の不調を抱える人が一定数いる一方、病気への理解が十分に進んでいない状況がうかがえます。

認知が広がらない背景には、男性特有の健康問題を話題にしにくい社会的な環境も関係していると考えられます。特に働き盛りの世代では、疲れや気力の低下を周囲に相談することに抵抗を感じる人もいるでしょう。性機能の変化については、家族や友人にも打ち明けにくいものです。
一般的な健康診断では男性ホルモンの検査を行わないため、本人が不調を感じても原因に気づく機会は限られています。医療機関を受診しようとしても、内科、泌尿器科、心療内科のどこに相談すればよいのか迷うこともあるでしょう。病気の名前を知っていても、自分の症状と結びつかなければ受診にはつながりません。男性更年期の認知不足は、単なる情報不足だけでは説明できない問題といえます。

 

働く男性の健康問題、職場で見逃される不調の影響

男性更年期の問題は、本人の体調だけでなく、仕事にも影響する可能性が指摘されています。2026年公表の男性従業員を対象とした調査では、中等度以上の更年期症状がある人について、健康問題による仕事のパフォーマンス低下が平均26.4%と推計されました。集中力の低下や疲労感を抱えながら働く状態は、出勤していても十分な能力を発揮できない「プレゼンティーイズム」と呼ばれます。ただし、この数値は本人の回答に基づく推計であり、LOH症候群が直接仕事の生産性を下げたと証明したものではありません。それでも、体調不良を抱えながら働く男性が一定数いることは、企業にとっても見過ごせない課題といえます。

職場では、こうした不調が本人の能力や意欲の問題として受け取られることも考えられます。以前より会議で発言しなくなった社員を「やる気がなくなった」と評価したり、ミスが増えた管理職を「年齢による衰え」と判断したりするケースです。もちろん、仕事のパフォーマンスが落ちる理由はさまざまで、更年期障害だけが原因とは限りません。
ただ、健康上の問題を考慮せずに評価すれば、本人が相談しづらくなる悪循環を生む可能性があります。企業ができることは、男性更年期の知識を広めるだけではなく、産業医への相談や勤務時間の調整など、不調を抱える従業員が働き続けられる環境を整えることです。健康問題を本人の自己管理だけに任せない姿勢が、職場全体の働きやすさにもつながっていくと考えられます。

 

男性更年期を正しく知る、身体の変化に気づいたときの対処法

男性更年期が疑われる場合、どのように対応すればよいのでしょうか。厚生労働省が2022年に実施した更年期症状・障害に関する意識調査では、医療機関で更年期障害と診断された経験がある男性は40代で1.5%、50代で1.7%でした。一方、更年期障害の可能性を考えたことがある男性は40代で8.2%、50代で14.3%に上っています。自分の身体に変化を感じていても、診断には至っていない人がいることを示す数字です。ただし、診断経験がない人すべてに治療が必要というわけではありません。疲労感や気分の落ち込みは、うつ病や睡眠時無呼吸症候群、甲状腺の病気などでも現れるため、症状が続く場合は内科や泌尿器科で相談することが適切です。

日本泌尿器科学会と日本メンズヘルス医学会が2022年に発行した「LOH症候群診療の手引き」では、症状と男性ホルモンの検査結果を組み合わせて診断する考え方が示されています。治療には生活習慣の見直しや原因となる病気への対応が含まれ、必要に応じて男性ホルモン補充療法が検討されます。ただし、ホルモン補充療法には副作用や適応上の制限があり、誰にでも適しているわけではありません。医師の判断と継続的な経過観察が欠かせない治療です。

男性更年期への理解を深めるうえでは、不調をすべてホルモンの問題に結びつけるのではなく、身体からのサインを見逃さないことが大切になります。年齢を理由に我慢せず、必要なときに相談できる環境が整えば、男性の健康問題は今よりも身近なものとして捉えられるようになるでしょう。

カテゴリ
健康・病気・怪我

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